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脳のパフォーマンスを最大まで引き出す  神・時間術

 1日は24時間です。これは皆が平等に与えられた唯一のものなのかもしれません。たしかに、その国々によっては国家体制や紛争などによって皆平等に与えられるはずの時間が無理矢理に奪われてしまう、といったこともあると思います。しかし、少なくともこの文章を読んでくださっている方々、そしてこの文章を書いている私は少なくともこの平等な時間というものを日々享受しています。さらに言うならば、この平等に与えられた時間の使い方の如何で、私たちの人生は左右されるといっても過言ではありません。精神科医、作家であり、数多くの本を世に送り出している樺沢紫苑さんの本書は著者の経験と豊富なエビデンスを用いて、時間術を通して根拠に基づいた効率の良い時間の使い方だけでなく、人生の送り方について教えてくれる一冊です。本書のエッセンスは「4つの原則」から成り立ちます。


①「脳のゴールデンタイム」を活用する

 人間の脳は起床後、2〜3時間はフレッシュでパフォーマンスが一番高い時間帯です(その他、休憩直後、就業間際の時間帯も集中力が高い時間帯)。このとりわけ集中力の高い時間帯に集中力の必要な仕事を行うことが肝要です。ちょうど、その時間帯は家にいたり、通勤中である場合には読書など自己投資の時間に充てることも有効です。またゴールデンタイム時の集中力を最大限に発揮するために必要なこととして本書で紹介していることとして、

・「雑念」を排除する:
具体的には、物の整理(探さない環境を作る)、すべきことをToDoリストに書く(ツァイガルニク効果、優先順位をつける~朝には集中仕事をもってくる、次に何にしようかなは強烈な雑念となる)、セロトニンを活性化する(雑念が振り払えず、何度も思い返す場合は前頭葉やセロトニンの機能が低下している可能性→セロトニンは覚醒・気分・意欲に関係する脳内物質、これらは日光を浴びる・リズム運動・咀嚼で改善できる)、個室で作業をする、スマートフォンを遠ざけること。

朝のゴールデンタイムを有効に活用するための前準備:
具体的には、朝シャワー(副交感神経から交感神経にスイッチ)、光を浴びる(カーテンを開けて寝るのも良い、朝の散歩も良い、セロトニンの合成や活性化につながる)、咀嚼(セロトニンの活性につながる)すること。また、朝のテレビは逆効果(人間の脳はその9割を視覚情報の処理に使うといわれている→せっかくフレッシュで整理された脳を朝のテレビの情報の嵐にさらすことでせっかくのゴールデンタイムを台無しに)であることを挙げています。


②集中力を「リセット」して時間を生み出す

 集中力を高めることは困難(集中を自在にコントロールするのはプロスポーツ選手でも難しい)ですが、集中力を回復させることは可能です。具体的には、

疲れる前に休息やリフレッシュの時間を挟む(緩急をつける):
集中力の限界時間には諸説ありますが、かなり深い集中が持続できる時間は15分程度と言われています。作業内容によって休憩の入れ方を変えるなど、自分に最適な集中時間を掴むことが大切です。

集中力を高める特効薬は「睡眠」:7時間程度の質の良い睡眠が必要で、睡眠を削ると作業機能・認知機能・覚醒維持機能は日を追うごとに悪化、生活習慣病のリスクが高まり、死亡リスクも高まります。
午後や夜の運動:有酸素運動をすることで、BDNF(脳由来神経栄養因子)という、脳を育てる物質が分泌され、意欲や集中力を高めるドーパミンという脳内物質も分泌されます。結果的に集中力、記憶力、思考力、作業遂行能力など脳の機能がUPする、また成長ホルモンも分泌され疲労回復(集中力のリセット・リフレッシュ)につながります。

昼休みにいつもと違うものを食べたり、違う場所で食べたりすることはアセチルコリンが活性化します(「創造性やひらめき」に関係する脳内物質)。
30分以内の仮眠(目を瞑る:視覚情報を遮断しリラックス)は眠気による作業効率の改善や疲労回復、認知症・糖尿病・心臓病予防にも効果的です。


③アメリカ式の仕事効率を手に入れる

アメリカ人は定時には仕事を終えて帰ります(家族や友人などとの時間を大切にしているから)。
そのために、締め切りをあらかじめ決めて、集中力を高め、メリハリを大事にします(ノルアドレナリンを利用)。


④「自己投資」や「楽しむため」に時間を使う

・宵越しのストレスは持たない(土日の概念を持たず、24時間の中で仕事や遊びなど緩急をつける〜自由時間に仕事はしない)

自己投資はメインスキルを優先する

娯楽は能動的に(集中力を高め、人を成長させる)

ボーッとすることもとても重要(弛緩した時間

以上が「神・時間術」のエッセンスとなります。その他にも多彩な実践法が紹介されています。

 私が、本書を読んで感じたこと、最も大切だと感じたところは、「緩急をつけること」「何より今を大切に生きる」ことです。私もそうですが、生きていると、どうしても先の不安や過去の失敗を思い返してしまい、「今」という瞬間にフォーカスができないことも多いかと思います。しかし、過去も未来も「今」の連続が紡いできたもの、また紡いでいくものであり、「今」というただ唯一存在する時間に向き合っていくことが大切なのだと思います。つまり、今を楽しめない、幸せに思えなければ、過去も未来もずっと楽しくないし、不幸せなのです。この「神・時間術」は「今」を幸せに生きるための重要性とそのエッセンスがたくさん詰まった素晴らしい本です。



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