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読書感想文『雨心中』 唯川恵著

あらすじ

共に八王子の養護施設で育ち、社会に出てからも同じ家に暮らす周也と芳子。どんな仕事に就いてもすぐに辞めてしまう言い訳ばかりの周也を、芳子はただただ優しく受け入れる。たとえ彼がどんな"罪"を犯そうとも。恋とも家族愛とも似て非なるその関係は、裏社会の人々も巻き込んで思いもよらない方向に突き進み、、、。

恋愛小説の騎手が、業を背負った男女の繋がりを描く傑作長編。

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あらすじにも書いてるように、私はこの小説が恋愛小説だとは思いません。

小説の構成としては

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↑奥田英朗さんの『ララピポ』を思い出しました。

章によって主人公が変わったりしますが、物語の核の周也と芳子が必ず結びついてきます。

この小説を読んでの感想ですが、

人というか、人生というのは、どうしてこんなにも『理不尽』なものなんだろうって思いました。

世の中には、何もしなくても、生まれた時から死ぬまで、なんの苦労もせずに一生を終える人もいれば、

権力も金も地位も贅沢な服、宝石、時計、家、かばん、、そんなもの一切いらない。

ただ穏やかに過ごしたいだけなのに、そんなささやかな幸せがどうしても叶わない人がいる。

何もしていない。ただ真面目に正直に誠実に生きてるだけなのに、不幸が向こうからやってくる人がいる。

これは、そんな物語です。

だから、一言で感想をいうなら、

ただただ『切ない』。

最初から最後まで、切なさだけが残った。私はね。


そして、世の中には裏社会が存在し、そこで生きてる人を私は否定することができません。

みんな、『訳あり』なんです。

私も、あなたもきっとそうでしょう。

裏社会が悪だと言ったところで、それを無くすことはできない。

ましてや、裏社会というのは、私たちが普段生活してる日常のあらゆる隙間に入り込んでいるのです。

この小説を読んで、私は、そんな日常と非日常の『リアル』に触れた感触がけっこう強く感じました。


なぜ人は幸せになれないのでしょう?

こんなに、幸せになりたいと願ってるのに。

また、やっと幸せを手に入れても、どうして自らそれを手放してしまうんだろうか?

あなたは、今、幸せですか?

それが知りたい人はこの本をおすすめします。

全365ページとちょっと分厚いですが、ほぼ一気読みしました。

最後に印象に残った文章を載せておきます。

信じる、は、信じたいと同義語だ。奴らは信じているのではなく、信じたいのだ。その愚直さは、まさに愚かさでもある。


あなたはどうですか?

相手に対して。

それでも信じているんですか?

信じたいじゃなくて?

たしかに、同義語だけど、同時に愚かだなぁと私も思った。

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