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読書感想文『じっと手を見る』 窪美澄著

あらすじ

富士山を望む町で暮らす介護士の日奈と海斗はかつての恋人同士。

ある時から、ショッピングモールだけが息抜きの日奈のもとに、東京の男性デザイナーが定期的に通い始める。

町の外へ思いが募る日奈。一方、海斗は職場の後輩と関係を深めながら、両親の生活を支えるため町に縛りつけられる。

自分の弱さ、人生の苦しさ、すべてが愛おしくなる傑作小説。

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あらすじは、本当に大まかなあらすじです。

この小説は、登場人物

日奈、海斗、

東京の男性デザイナー宮澤

海斗の職場の後輩畑中

それぞれの目線から描かれています。

そして、日奈と海斗、畑中の職業、介護士の仕事もけっこうなボリュームで描かれています。

ここに描かれてる介護士の仕事がリアルなのか?

はたまた、大げさに描かれているのか?

経験のない私にはわかりませんが、どっちであったとしても

介護士という職業は尊いものだと思いました。


さて、本編に関する感想ですが、

一番の印象は

つかみで失敗したな。

って思います。

どういうことかというと、

つかみって関西弁ですかね?いわゆる出だし。

物語の一番最初の部分です。

どれだけ素晴らしい作品であっても、特に小説という分野においては

この出だしのところでいかにその作品に興味をもっていくか。

物語の世界に入っていけるかが、私は肝心だと思ってて、

たとえば、有名な『人間失格』や『こころ』なんかも

有名で素晴らしい、誰もが知ってる作品。。と言いつつ

名前だけ聞いたことがある。(つまり読破してない。)

って人の方が多いんじゃないでしょうか?

今回の作品も、それに近い印象です。

全体としては、そこまで悪くはなかったと思います。

いちおう、全編306ページ読破したし、途中から面白くなって、ページをめくるのも早くなったと思う。

けど、第3章までは、けっこう苦痛でした。

日奈と海斗の黒い部分が描かれてて、、

まぁ、ぶっちゃけ日奈に関しては最初から最後まで

女の嫌いな女だなって思うし、私は絶対好きになれない。

まぁ、ここに登場する人物全員(サブキャラも含めて)、基本的には、あまり共感できないけど、けど

そういった、人の弱い部分や、執着心、支配欲、愛着、性欲、

なんていうんだろ?ダークな部分?

そういうのを4人の視点から描がいてるので、より深く細かくリアルに感じた部分は良かったかなと思う。

だからこそ、ラストシーンは私てきに

それやっちゃダメだって!

って思ったな(苦笑)

まぁ、海斗らしいといえば海斗らしいんだけど、

それやっちゃ、今までのなんだったの?

一周まわっただけじゃん。って。。

私は否定派ですね。

解説の朝井リョウさんは賛成派みたいですけど^^;


好きなのに、セフレの関係。

別に結婚したいわけじゃないけど、常に男がいないとダメな女性。

ちょい女性不信な男性。

は、この小説を読んでみるといいかも。

最後に私が印象に残った、東京の男性デザイナー宮澤の章に書かれてる文章を掲載します。

彼女がいなくなったことに対して僕のなかに生まれるものは、怒りとか、悲しみとか、そんな単色の感情ではない。けれど、たくさんの人ははっきりとした鮮やかな色や強い言葉で、世界を読み解こうとする。

それが恐怖だった。


この文章には、とても共感した。

人は白か黒か?

善か悪か?

決め付けたがる。

恋人かそうでないか?

好きなの?嫌いなの?

なぜ、あいまいではダメなのか?

はっきりしてよ。と言う。

で、どんな小さなことや、ささいなこと。

もっと言えば、自分にとっては全く関係ないことでも、自分にとってそれが悪だと思えば、顔も知らない相手に向かってでも徹底的に攻撃する。

宮澤の言うように、それはある意味恐怖ではないだろうか?

冒頭にも書いたように、出だしがね。ちと入りにくいかもしれないけど、でも、ちょっと人生について、生きることについて、迷ってたり、悩んでる人がいれば、第3章まで頑張って読んでみてください^^;





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