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レモンタルト

家の近くの有名なケーキ屋さんで少しお高目なレモンタルトを買った。最近、くよくよしてしまうことが多く、自分を労わるために買った。

そのお店はクロワッサンが有名らしく、何種類ものクロワッサンの他、おいしそうなケーキがたくさん並んでいた。お目当てだったレモンタルトはすぐに見つかった。

家に帰って、少し高めのインスタントコーヒーを淹れ、レモンタルトをお皿に移す。ケーキの周りについている透明のフィルムやアルミホイル、プラスチックの器が嫌いなので、お皿に移す際はすぐに外す。いつも通りケーキから外そうとした。だがこれがなかなか外れない。うっかり誤ってレモンクリームに指が突っ込んでしまった。カメラで撮るときは、そっと後ろへ隠した。

早速一口食べてみる。

おいしい。まずレモンクリームが美しい。つるりとした見た目と舌触り。口に入れた途端重くて舌全体を埋め尽くしたクリームを舌で楽しんだ後、口の中をさっぱりと爽やかにして消えていく。何とも上品。下のタルト生地がアーモンドプードルはなく、タルト生地の固さと美味しさだけなのもいい。思わずニンマリしてしまう美味しさだ。

またレモン独特の酸味と甘さが、暑い夏休み、蝉が鳴っていて、畑の中を麦わら帽子と白のタンクトップを着て、歩きながらガリガリくんを食べている景色を想像させるのだ。そんな経験をしたことないのに。おいしくて高級なケーキなのに、どこか昔懐かしい思いをさせてくれる。ケーキを食べてそんなふうに思ったのは初めてだった。
見栄えだけを追求する風習に疑問を感じていただけに、本当においしいものは舌触と見栄えだけでなく、心も充実させてくれるんだと教えてくれた。ちょっと元気がない時に、現実を忘れさせてくれるおいしいケーキを、カロリーと値段を気にせずに買う。おすすめです。おわり。

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