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芳醇な食パン

芳醇:よいにおいがしてうるおいのあること。酒の香りが高く、味がよいこと。また、そのさま。

"芳醇な食パン"。土曜の仕事終わり、お腹が空いて頭がぼーとしている中、駅近のパン屋に寄った。その日は食パンをくりぬいてカレーのルーを入れ、その上にチーズをかけトーストで焼く。この魅惑的な料理を夕飯にしようと決めていた。もう頭の中はカレーと食パンでいっぱいだった。

食パンコーナーに着いた。ホテルブレッドと、普通の食パンの間に”芳醇食パン”はあった。まず名前に惹かれた。芳醇って何だ?
品名紹介のところに、「もっちりとして、朝食にぴったり!」と書いてあった。もっちり!なんと素敵な響きでしょう。値段は1/2斤で340円。約160円のパスコの超熟5枚切りしか買ったことがない私にとって、リッチだが芳醇な食パンには勝てん!ええい!
買った。

帰宅し、さっそく調理に取り掛かる。おいしいレトルトカレーに豚肉と玉ねぎ、アボガドを追加しルーを作る。そして、遂に芳醇な食パンを開ける時が来た。

ふおぉああ…!

もう、香りがたまらないの。言葉にうまく言い表せないのが悔しい…!

とりあえず今日食べる分だけ切ってみる。誘惑に勝てず、ちょこっとちぎって食べてみる。…なんて柔らかいんだろう。なんて優しいんだろう。その時は芳醇の意味がよくわからなかったけど、芳醇ってきっとこういうことなんだな、って実感した。食パンの余韻に浸りながら、残りをレシピ通りに作った。

おいしかったのは言うまでもない。このご時世あるあるの緊張感に包まれ仕事終わりで干からびていた心が、文字通り潤い救われた。食欲そそるカレーと、疲労撃退を込めて買った豚肉、野菜不足を気にして入れた野菜たちと芳醇な食パン。どうもありがとう。
おいしい食事は世界を救う、と実感した夜だった。おわり。




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