香織さんの大事なお話
現状、牛、豚……食用豚ですね豚じゃなくて……をレスキューしてるのは今の段階では私たちだけという形になっています。そしたらどっから話そうかなっていう感じはあるんですが、かいつまんで。
自分は16の時から畜産ヘルパーという形で農家さんをずーっと歩いてるという各農家さんのやり方を全部熟知したプロフェッショナルと言われる仕事をずーっとしていました。もちろんアルバイトなので学校に行きながらっていう形でやっていたんですけども、その頃っていうのはまだ狂った畜産ではなかったので、ただ単に私も動物がとにかく大好きで大きな動物に触れるっていうだけでそういう所に、農場に行くのが楽しみでヘルパーをしていました。
ただ年代的にどの辺っていうのは、ちょっとはっきりは言えないんですけども、バブルがちょうど来て崩壊したその辺の時期から工場畜産という形に変わっていきました。自分たちが畜産ヘルパーで歩いている所もだんだん大手が買い取っていくという形になっていってしまって、どんどん。
昔は庭先養豚じゃないですけども、豚肉の価格、牛肉の価格、鶏肉の価格というのが結構高くてそれなりに少ない出荷であっても食べていけた、農家さんたちが。ただそのバブル期あたりからものすごい金額、特に豚肉、鶏肉、これに関してとんでもない価格に落ちていくんですね。
今まで、1頭2頭たとえば月にそれくらいの頭数で食べていけた農家さんが結局は食べれなくなってくる。同じ場所に数頭しかいなかった場所に、30頭40頭という密飼いをしていって薄利多売になっていく。そこに瀟洒(しょうしゃ)な人たちがそういう状況を見て、酷い農家さん、かわいそうとか。
でもスーパーで特売にすっ飛んでいくお母さんたちは結局かわいそうかわいそうと言っている瀟洒たちです。お母さんたちですよね。そこって農家さんが、私はもうずーっと畜産ヘルパーを歩いて逆に農家さん側で仕事もしてきたので、農家さんを悪とは思っていないし、ただ消費者がもっと知らなきゃいけない事、食べているんであればちゃんと知らなきゃいけないものを、ちゃんと見ていかなければいけないし、見た上で選択しなければいけない、ちゃんと。どっちを選ぶのか、どうすればいいのかっていう選択をしなければいけないというのが今の時代になっていってて。
ですね、とにかく私、養豚が長かったんですけど豚の世界っていうのは一概には言えないんですけど、単純に言って半年から8か月、これぐらいに出荷になります。
ちょうどうちの子たち、ロックんパクちゃんという豚さんがいるんですよ、うちには。その子たちが生後2~3日ぐらいでとんでもない状況の養豚場からレスキューされて来ました。で、うちに来ました。
で、その子がちょうど出荷時期の6か月から8か月、これぐらいの時期で、それまでも凄い劣悪環境だったので、身体の状態も悪く皮膚も悪くて、ものすごい一転二転しながら生きてきたんですけども。
出荷時期の時に本当に歩けないという状況になってきて、なんで?って最初思ったんですけど、これ言うとね、出荷時期の豚、日本の去年のデータで75%の出荷豚の子たちが脚弱症と言って歩けない、歩きづらいという脚の病気、脚が壊死していくということもあるんですけども、そういう病気の子たちが75%だったんです。
誰も喜んで元気に歩いて、屠畜場に向かう子はいません。みんなスタンガンを当てられて歩けない子を無理やり引っ張っていくわけです。
で、ちょうどその時に、本当に絵に描いたように、うちのレスキューしたロックんパクちゃんも歩けなくなりました。
で、ここは普通ね、やっぱり淘汰っていう形で、豚の世界とても安い、豚肉自体が安いので、和牛、ミートカウと呼ばれる和牛さんたちと比べると単価自体がとても低いから、どんどん環境が悪くなっていくんですね。で、病気になってももちろん治療することもないし、殺す時に淘汰する。
豚さんオールインオールアウトっていう事で、100頭なら100頭を全部動かしていきます。ミルク時期が終わって通常なら40日お母さんのお腹にくっつけてミルクを飲ませるのに、今は最短で2週間です。2週間飲ませただけで、お母さんから離して、で、保育園みたいに100頭くらい集められて、あとは出荷まで3ステージ歩かされる。その中で発育が……病気じゃないし、元気なんだけど、サイズが合わない。サイズが合わないってどういうことかって言うと、最後の屠畜場へいくには90kgから110kg。ここに豚さんのサイズを合わせていきます。で、逆算して今この体重、この大きさだったらちょっと間に合わないよね、とか。まあそういうものがあって、そういう子は生きていけるんだけども、そのステージの段階で各ステージの、まあ卒業式じゃないですけども、変な言い方ですけどね、その時に淘汰という形が入ってきます。
小さい子、淘汰4回かな。まず生まれた直後、今、非常に狂っていて、お母さんを肥大化させることに品種改良をしています。で、豚自体の単価が安いから大きくせざるを得ない。要は、同じ餌を半年間あげて、どれだけの枝肉を取れるかっていう勝負になってきます、養豚家の人たちって。その時に豚のサイズを大きくするっていう事は、長くしていきます。ロングボディにしていく。
豚がとっても安い。スーパー行けば分かると思うんですが、豚肉は安いんですけども、唯一、このリブと言われるバラ肉が少し高いんです。だから少しでも高いバラ肉を取る為に、そのロング、バラの所、あばらの所を長く品種改良されています。
そうやってどんどん長くしていって、強い人工授精で遺伝子を入れていくので、お母さんのおっぱい14個ぐらいが基本なんですけども凄いと20何匹あかちゃん生まれてきます。育つわけがない、おっぱいが無いから。結局その段階で先ずおっぱいが無いから小さい子。生まれた直後で身体のサイズが先ず小さい。あとはもしくは奇形である子はコンクリートに叩き潰していきます。その場で、すぐに。
で、次にミルクの終わる時期、ここに保育園ですね、お母さんのミルクから卒業する時にサイズが小さい、もしくは奇形であるっていう子も、その時にコンクリートで叩いていきます。
で、自分が養豚場に勤めていた時に、堆肥所って言って、豚さんのうんちとおしっこ、うんちが殆どですけど、それを土に変えるうんちを集める場所っていうのが必ずあって、そこの隣には必ず何も置いていないコンクリートの、3つの壁がある部屋が必ずどの養豚場にもある筈です。で、そこは淘汰する場所です。
小さい子。その場で小さい子を、淘汰できないサイズの子は、堆肥所の隣のコンクリートまで連れて行って、片手で持てないサイズであれば、ハンマーでやります。そうやってみんな、サイズにそぐわないっていうかな、合ってない子っていうのは潰されていきます。
1つの話として、『いただきます』『大事に食べてね。1頭の命を』って思ったかもしれないけども、私が高校とかで食育でよくお話で回っていた時に話していたのは、『1頭ではないです』『どれだけその間に淘汰されていくか、みんな知らないだけであって1頭の命ではない』
で、それは1頭を大事にできないんです農家さんが。安すぎて。通常たぶん私が勤めていた頃だと、半年、まあ出荷時期で最大利益で8千円にも満たないと言われてました。餌代出して本当に数千円です、残るのは。そうやって食べていってるんです、農家さんって。
だから頭数に餓えていくしかないんです彼等は。どんどんどんどん1頭じゃ食べれないから、お給料が出ないしスタッフも雇えない。
そういう、あまりにも安すぎる……消費者が高い(豚肉という言い方はしたくないですけども)ポークと呼ばれているものを欲しがるので、そうせざるを得ない状況になっていて、結局そうやって豚の世界……豚の世界って変ですけどもね、そういう世界があって。そういう子たちが。
畜産の世界って悪いとか善いとかっていう問題ではないんです。私そこを言いたいわけじゃないし。ただ、閉ざされているんです。見えないようになってるし、逆にみんなも見たくないから閉じてるんです。
長くなっちゃうんですけど、ひとつだけ、せっかくなので私、あんまりこういう所で喋る機会がないので。
すごーく私、膝から本当に崩れ落ちてスーパーで泣いたことがあって。もう養豚っていうか、この世界無理だと思ったことがあって。名前を付けちゃいけないって言われてるのに、私こういう性格なので全ての何百頭という子に名前を付けて、ノートをファイリングして、性格から傷一つから全て書いてる。そういう人間だったんですね。
で、一番かわいがってる、ポーキーという子が……。ポーキーという子がいて……。で、その子が、まあ、出荷になりました。で、出荷になって、自分たち大手にいたので、自分のブランド、大手でブランドの豚肉を持っていて、大手のスーパーと契約していたので、どこのスーパーで、しかもうちの養豚場のブランドっていうのがわかるので、どのパックなのかがわかるんですね。
まあ行かなきゃいいんですけど、自分のポーキー、一番大事にしていた息子のポーキーが出荷された後にすぐ行って、夕方行った先で、ポークコーナーですね、ポークじゃないんですけど。本当はピッグなのに、ピッグコーナーでは誰も買わないからポークコーナーになってます。牛もそう、カウだけどビーフコーナーになってますね。
そのポークコーナーで夕方、うちのブランドの子たちがパックになってる所で、ポーキーの屠畜の日を数えれば、いつスーパーに並ぶのかもわかるので、その時に、特売という形で……セール30%OFFとかっていうシールを貼られたんです。(沈黙)
で、スーパーでお客さんいっぱいいる中で、空耳ですよね聞こえてきて、ポーキー。……ポーキーくんの声で、
『お母さんぼくポークじゃなくてポーキーだよねえ?』
っていう声が聞こえて……。(沈黙)
普通のスーパーなんですけど、本当にお客さんいるのに膝から崩れ落ちて、ポークコーナーの前でギャン泣きしました。で、そのままもう無理だなと、凄い踏ん張って養豚………なんで養豚場こんなに豚が好きで勤めてるのって、すごい皆に聞かれて、でも自分しか守る人いなくて、自分だけしか怪我も診てやれないし、誰かに蹴られた痕も自分だけしかケアをしないから、だから絶対に踏ん張って本当に泣きながら泣きながらずっと勤めてて。
でももう、もう無理だなと、もう守る側に入ろうと。そこから、どんなにお金がかかってもやってやろうと思いまして、サンクチュアリという形で、農家さんとの繋がりもずっと持ってるのでそこから助け上げていこうかなっていう感じでスタートしてきたっていう経緯があって。
で、その流れでひとつ。
日本のサンクチュアリって、さっき言ったんですけどなぜ増えないのか。なぜできないのか。
さっき、ひとつ最初に言ったのは寄付文化がない。凄くこれは大きな事です本当に。私たちも支援100%普通の団体っていうのは勿論こういう保護団体っていうのは支援100%でやってる所が、わんちゃんねこちゃんも含めて殆どだと思うんですけど。
私たちは主人か私かどちらかがサラリーマンで働く。自営ではなく必ずお金が入るというサラリーを貰うっていうのを決めていて、それをまるまる運営費に充ててます。1円も残さず全てつぎ込んでます。残った一人が全部朝から晩までずっと世話をしています。
で、なぜボランティアもどんどん呼べばいいじゃないって言われるんですけど、支援にしてもボランティアにしても一時です。
ボランティアさんも365日の内に、じゃあボランティアさんが何日来るのか。ボランティアさんが来てない時が300日以上、簡単に言うと。私だからそこに、ずーっとルーティングワークでずっとうまく埋め込みながら全ての事を朝5時から夜22時ぐらいまでやってるんですけども、なのでそこはもう自分たちのリミットを超えない。ボランティアさんが居なければ回らないっていうやり方は危険すぎて、やっちゃいけない事だと思っていて。
やっぱり自分たちができる範囲でやっていかないと。翌月に牧草買えない、どうすんの支援入らないじゃない。今すごい牧草高騰していて、倍額になってるんですね。今本当に厳しくなっていて。仕事増やしたり、夜間バイト行ったり本当に全てやってあらゆる手段、考えられることは全部やって、今お金作ってます。
支援も支援だけに偏ってしまうと、これはギャンブルになってしまうので。翌月買えないかもしれないっていう事になるので。私たちの考えですよ、これは。違う所がダメって言ってるわけじゃなくて。
私たちはこのスタンスで主人と2人でどちらかが働く。どちらかが世話をする。これはもう基本スタイルとしては貫いていこうと。
今まだ元気なので身体が。何年出来るかわからないですけども。今のこの態勢でやってそこに時折スーパー助っ人じゃないですけども、皆すごい助けて下さるので今は回っている、なんとか。ていう感じになっています。
で、日本のサンクチュアリ増えない理由がもうひとつ。
二つ目が、保険制度の違いがあって。
海外組の人たちが、なんでもっと増やさないのって言うんだけど、増えないんですねなかなか。増やすことができない。
保険制度が変な話で、すごく確立されていて、日本て。
たとえば奇形が生まれたとしても、その子を焼却処分で焼却証明書を持っていくと保険金が下ります。海外だったらそんなのが無いので、『こんなの生まれたから使えないからサンクチュアリ貰ってください、お願いします』って流されるんですけど。サンクチュアリにやるんだったら保険金をもらって新しい子を買った方が農家さんにとっては勿論いいですよね。だから私たちってそう簡単に助けることも逆にできないんですね。
で、私がやってることは、今までの仕事の関係もあるので、ボランティアでちょっと良くない劣悪な環境のいろんな所の情報もあるので、わざわざそこに行ってボランティアという形で、いろんなものをいろんな手術とかも私できるので。そういう形でボランティアで入ってって、信用してもらいながら仲良くなりながら、この子助けたいんだけどお金は払えないけど、私にケアさせてもらえないだろうか。ていうような感じで引っ張ってきてるっていうのは、昔からそういうやり方で、何年も何年もかけながら。
凄いまどろっこしいやり方ではあるかもしれないんですけど、今はそういうやり方しか無いんですね。後は真っ当に競りで買う。そういうやり方しか無くって。
日本の畜産を守る為という感じで国としては、ちゃんとした保険制度確立してるんですけど、私たちにとっては非常にそれが難しいところがあって動物たちにとってもそこがネックになって焼却処分されてしまうっていう感じになります。
で、自分たち沖縄なんですけども、岡山に移住してから4年になります。たくさんの人たちがサンクチュアリやりたいんですけどって、お話聞かせて下さいっていらっしゃる方とても多いんですけども。
私たち一番に考えてるのはまず家畜の世界って、すごい臭い汚いっていうイメージがすごーくあるので、まずそこから変えなきゃいけないっていう大前提として自分たちはあって。
私たちの所に来られた方だったらわかると思うんですけども、むちゃくちゃ綺麗にしてます私たち。すっごく掃除に時間を掛け、もちろん世話もしっかりやって。
臭いを絶対出さない。臭いを出さないっていうことは糞尿をすごく気を付けてます。臭いを出さない糞尿っていうのはどういう事かっていうと、食べ物に気を付けてます。
すごく考え抜いてそれぞれ牛豚いろんな鶏とかいっぱいいますけど、それぞれに与えて水分量の少ないしっかりしたウンチを出して、あとそれを堆肥化させるっていう。土に戻すっていう作業をしっかりやってます。臭いを出す前にしっかり土にどんどん先に超スピードで土に返すっていうやり方をして臭いを出さないようにしてます。
皆がだから堆肥所の山なんだよって説明して初めて『え、そこにあるんですか?』て言うぐらい臭いが出てない筈です。すぐに蒸発するし、それは食べ物にすごい気を付けていて一番お金もかけてる所だし、そうしないと地域の人たちともうまくやっていけない。
で、自分たち終活という形で本当は沖縄では借りてる土地でやっていて4年目ぐらいでだんだんすごい綺麗にするのでいにするので、4年目ぐらいで大体ああもう売れそうだから出てってもらおうかなっていう感じで言われるのが続いたので、もうこの子たち大きい子たちを守るためには自分たちも土地を買わなきゃいけないっていって主人と働いて岡山の地を購入しました。
ただ買ってはいるんだけども、やっぱり自分たちは、この山に後から入ってきた新参者なので、地域の人たち、おじいちゃんおばあちゃんたちに対しては、私たちの土地だから何やってもいいでしょっていうスタンスは絶対取ってないです。いつでも、居させてもらってありがとうございますという姿勢でやっていて。
えーと、普通の養豚場とかそういう、まあ養鶏場もあるかな。反対運動を起こして出て行かせたいときに私、若い時に結構盛んにやってたので。そういう時に結局そこを攻撃するんじゃなくって、地域住民を巻き込んで署名運動起こしたりして、地域住民からの圧力で出て行かせるっていうことを、ずっとしていました。だから逆に考えて、サンクチュアリも同じ事なんですね。
あと大手の人たちもこの小さい場所が欲しい。結構これ、いっぱいあるはずの話なんですけども。ここの場所が欲しいっていう時に直接言っても売ってくれないから、地域住民を巻き込んでそこの養豚場を潰して、結局は大手が買い入れるというやり方をするんですね。なのでサンクチュアリも一緒なんですね。
私たちが新しく入って良かれと思わない人がいる場合もしかして。そこに私たちをまた良かれと思わない畜産関係の人が何か声を掛けて、あのサンクチュアリ良くないよ、出て行かせようよっていう話になった場合に私たちって、やっぱり出ざるを得ない状況にいく場合があるので。
そこは私たちは逆に、本当に地域の人たちと密着して、私たちも何でもおじいちゃんおばあちゃんの話も聞いて世話もして、動物にかける時間と同じくらい地域の人たちに還元してるので、逆に何か反対のネガティブな事が起きた時に、そういう問題が起きた時に地域の人たちが逆に『香織ちゃんたちが頑張ってるんだから僕たちが守ってあげようよ』っていう関係性が一番必要なことであって。
若いサンクチュアリやりたいんですっていう人たちに、まずは地域の人たちをまとめていかなきゃいけないよ。繋がらなきゃいけないよって言っても、なかなかそこが皆わからない。なんで自分の土地なのに?ていう感じなんですけども、本当は大きい動物を飼うってそこが一番大事なことで。鳴くし、勿論うんちもするし。巨大な動物たちが近くにどんどん来ちゃうので。良かれと思わない状況ができてしまったら大変な事なので、そこだけはずっとずっと気を付けてるところではあるんですね。
そうやって気を付けながら今、4年目。むちゃくちゃ仲良くしながら助け合い助けてもらいながら、やらせてもらっています。