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【創作小説】クエスチョン・アーク|Ep.7 Tenderness

自由なピアノは気持ちのいいものです。奏でる人も、聞く人も、制約を受けずに気ままにしていられるから。

ふと思ったのです。私はどうしてこのような白昼夢をこんなところに書き残しているのか・・・それはひとつには自分のためなのです。
これは単なる白昼夢というよりは、忘れてはいけないことを詰め込んだメッセージのような形をしていますので、このように書いて残しておくことで、後々私自身を救う手助けにもなるのではないか、と思っているのです。

そもそも、多くの人々はただすれ違い、生きている間、お互いの方を向いてすらいません。私がこのような白昼夢を世に放ったところで、ほとんどの人々の目には留まらないでしょう。
しかし、こちらを向いていない人に届ける必要はありません。
大切なのは、どこに向かえばいいかわからない人、行き交う人々の波間で惑い苦しむ人の耳に届くこと。
そのためにこの物語は存在し、ひっそりと耳を傾けられることを待っているのです。

余分な声が私の行く手を遮ろうとするとき、そんな単純な原則に立ち返ります。
そして、私は私の自由のために表現をするのです。

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3,663字

現実と虚構の狭間で見るイメージを紡ぐ、哲学系幻想小説。

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