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【創作小説】クエスチョン・アーク|Ep.9 Piano

あれからしばらく空いてしまいました。
今日は少しだけ、前置きが長くなりますことをご了承いただきたいと存じます。

ピアノさんのお城を前にしてからというもの、何度も何度も白昼夢に潜ろうと試みたのですが、理由もわからないまま踏み込めないという状態が続いていました。
私自身の体調のせいなのか、それとも何か他の原因なのか・・・自分の中に理由を探そうとしましたが、一向に見つからず、それならばいっそきっかけをつかめるまで、いつまででも放っておこうと考えたのです。
それは私にとっては大きな賭けでした。一方では天に任せたような態度を取りつつも、私の心のもう一方は、もう白昼夢には潜れないのかもしれないのではないかと不安に駆られていました。それはこの物語の永遠の未完成を意味するので、私はそのことをとても恐れていました。

すると面白いことに、ある日眠りにつく前、ふと「絵に描いた餅」という言葉がやってきたのです。口の中で呟いてみると、なぜかそれはとても大切なヒントのような気がしました。翌日その意味を調べてみると、「美しいだけで何の役にも立たないことの例え」だというのです。
画餅は実益のない役立たずの象徴である、と。
そういえばそのような意味だったか、と改めて知識を塗りなおしながら、私はなぜピアノさんとの遭遇の前にこのようなモヤモヤとした停滞の時間を過ごしたのか、その理由をはっきりと悟ったのです。

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5,530字

現実と虚構の狭間で見るイメージを紡ぐ、哲学系幻想小説。

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