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事実婚にしたわけ

Photo by Joe Yates on Unsplash

よく考えたら私たち夫婦がなぜ事実婚にしたのかって、どこにもちゃんと書いたことないなぁと思い書いてみることにした。まだまだ少ない事実婚の実態を知ってもらえたらいいな。


苗字を変えたくないと伝えた

結婚の話を夫としはじめた時、かなり早い段階で研究の関係上わたしは苗字を変えたくないと伝えた。別に今の苗字はたくさんいる平凡な苗字だし特に思い入れはなかったけど、すでに今の苗字で査読論文や研究活動を進めていたのでその実績と照合が取れなくなるのがいやだなと感じたからだ。もしかしたら女性の既婚研究者の方に聞けば他にもいろいろな方法があったのかもしれないが、私としては「変えたくない」という感情だけで十分変えない理由になると思った。

はじめ夫はそんなことは全く頭になかったようで、動揺していたと思う。そして夫も苗字を変えたくないということだった。夫は企業勤めで社内では旧姓でも通せるし、社会的な不便さは私に比べればないと思うので、正直最初は夫に苗字を変えてもらいたいと思った。そうじゃないと、どちらかが苗字を変えないと、今の日本では法的な結婚は難しくなる。

だけど、よく考えたら私も苗字を変えることを夫に押し付けているんじゃないかと思い始めた。私が苗字を変えたくないというだけで変えない理由になるのなら、夫の苗字を変えたくないという気持ちも尊重するべきなのではないか。夫は苗字を変えたくないだけで、私に苗字を変えて欲しいとは一切言ってこなかった。よく考えたら「どちらかの苗字に統一しないといけない」を押し付けていたのは私の方だったのだと気づき、反省した。そんなわけで、わたしたちの話し合いの方向は「夫婦別姓をどんな風に叶えていくか」にシフトしていった。

家族とは何か

そのあとも夫とはたくさん話し合って、わたしたちの中での「家族」の定義について考えた。実際には、「定義を決めよう!」と言って話し合ったわけではなく、「家族とはどんなものだと思ってるか」をお互いにたくさん話した。そのなかで、一緒に助け合って生きる存在が家族であって、法的な関係を結んでいることが家族の絶対条件ではないよねということでオチがついた。この感覚は私的にすごく納得感がある。といのも、私は実家で溺愛している犬を2匹飼っているのだが、あの2匹はわたしの中で間違いなく家族だ。別にわんこたちとは法的には関係を結んでいないけれど、家族だと思えるし、わんこに精神的にとても助けられている。そんな風に、誰かによって決められた「家族」のかたちによってわたしたちが家族になるんじゃなくて、自分達なりの定義で二人が家族になることにした。

事実婚というかたち

法的に結ばれなくてもいいのだとしたら、入籍をしない事実婚でもいいよねとなった。しかも調べてみると、わたしたち夫婦にとって致命的と思えるほど事実婚は悪くなさそうだということもわかった(配偶者控除などが事実婚では使えないが、お互いそれぞれに収入があるためそこまで問題ではない。/遺産の相続権が事実婚のパートナーにはないが、とりあえず今はいいだろう。おいおい契約書を書こう。/こどもが生まれても父親を「認知」すれば大きくは問題なし。ただし親権はどちらかのみ。/扶養には事実婚でも入れる。など)。それで結局、住民票を一緒にして、続柄を同居人ではなく「妻(見届)」にすることで事実婚というかたちで結婚した。もちろん入籍はしていない。

実際生活して感じる事実婚のデメリット

正直私が感じているデメリットは今の所はほとんどない。しいていえば、夫の企業に私を扶養にしたいと申請しているのだが、その申請のための書類が多いこと。法的に結婚していないので本当に一緒に住んでいて、事実婚関係なのかを証明するために書類がたくさん必要だった。それ以外に、生活において困っていることは特に思いつかない。何なら夫と苗字が違うことを普段は忘れて生活している(厳密には苗字が違うということが意識にのぼらない)。たまにわたしが夫婦二人分の病院を予約したりする時に、夫と私の名前を言うと苗字が違うので、電話先の相手が不思議に思っていないかなぁと心配になるくらい。

周囲の理解

もしかすると、人によっては事実婚の最大のデメリットは親への説得が大変なことかもしれない。この点、私たちの場合はすごくスムーズにいったのも事実婚にできた理由にあるのかも。もちろん親には二人でどんな風にしようと思っていて、事実婚のデメリットなんかも説明した。両家ともわたしたちの考えを尊重してくれたし、家族として受け入れてくださったのは本当にありがたいと思っている。

実際ある一定数の人には事実婚と説明すると、不思議がられたり、ちゃんと理解してくれていないだろうなぁと感じる時もある。社会的な契約を結ぶ勇気がないとか、愛がないとか見られたりしてるかもしれない。友達にも「入籍しないと結婚したとは感じられなさそう」と直接言われたこともある。でも逆に、苗字変えなくてよかったり、自分達の中で納得できる結婚の形を考えて結婚できるなら事実婚っていいねって言ってくれる人もいた。結婚のハードルをすごく高く考えていたけれど、事実婚を知れて結婚のハードルが下がったので結婚したくなったと言ってくれた人もいて、これはけっこう嬉しかった。

まとめ「家族のこれから」

年内に結婚式を挙げるし、博士課程を卒業したら子どももほしいなぁと最近は考えたりしている。もし夫婦別姓での法的な結婚ができるようになれば、もしかしたら事実婚を終えて入籍し、法的な結婚をし直す時がくるかもしれない。(選択的夫婦別姓については今月2024年3月に3度目の提訴があるとニュースでやっていたので、今度こそ違憲判決が出るといいなと思っている。選択肢が増えたら嬉しいし、もらえる権利はもらいたいのも本音。)とにかく私たちの場合は、あくまで家族が先にあって、結婚という制度が先ではない。これからもその時その時の状況に合わせて家族がハッピーになるための国のシステムを使い倒せばいいくらいに思って生きていくつもりだ。

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