見出し画像

大人と子供の世界線

「私も大人として生まれたかったな。」

子供のころ、大人と子供は別の人種だと思っていた。子供が大人になるのではなく、大人は大人として生まれ、子供は子供として生まれてきて別の人種になれないものだと思っていた。猫と犬が別の種別であるように、子供と大人も別のものだと思っていた。私は子供だったのにどうして大人から生まれてきたのだろう。ずっと謎だった。猫から犬が生まれてくることはない。絶対にない。でも、大人から子供は生まれてくる。全く意味が分からなかった。どうしてだろう。そうずっと思っていた。その謎がついに解ける時が来た。私はもうすぐで20歳になる。法律的には「大人」になる。ついに種別の壁を超える時が来たのだ。大人になったら何が変わるのか今からワクワクしている。もしかしたら19歳と11か月31日で消えてしまうのではないか。可能性はゼロではない。関わりを持っている人すべての人の記憶から消え去ってしまうかもしれない。そして今までもそうやって社会は回ってきたのかもしれない。19歳で消えてなくなり、なかったことにされる。大人は20歳から爆誕する。適当にその辺に転がってる過去の記憶をくっつけて。この世界はそんな世界なのかもしれない。そんな世界だったらよかったのにな。過去も未来も制限がある。惜しくも嬉しくも必ず19歳で終わる人生ならば、もう少し時間に価値を見出せたのではないだろうか。そんな世界があるかどうかの人体実験がもうすぐ行われる。実験台は私だ。きっともうすぐ私は消える。そう願ってあと少しだけ、生きてみることにする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?