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M-13 あんたの持ち時間は終わっちまったんだね

でもさあ 私の胸ん中じゃ あんたの命の炎はまだ燃えてるよ

 大切な友人の一人を失ったことを人伝に知ったウメちゃん。
年齢が年齢ですからそんな事もありましょうが やっかいなこの流行り病の中自由に友達にも会えず葬儀にも顔を出せないのはつらい事でございますね。さすがのウメちゃんも意気消沈しておりました。
 友人が亡くなったからと言ってその人が 頭の中からも住所録の中からも完全に消えてなくなったわけではございませんが 寂しさは募りますね 会いたい気持ちでいっぱいになったようでございます。
 そこでウメちゃんは古いアルバムを持ち出してきまして その中から いかにもその友人らしいと思える一番キラキラしていた頃の写真を何枚か取り出しました。ついでに忘れたくない人達(存命中)の友人達のこれまた一番生き生きしていた頃の写真も取り出しました。一緒に自分も写っているそれらにメモをつけましてね 小さなアルバムを作ったんでございます。それをいつでも手の届く所に見開き状態で置きました。
 そして亡くなった友達の写真に向かってウメちゃんは話しかけたんでございますよ。
あんたの持ち時間は終わっちまったんだね。でもさあ 私の胸ん中じゃ あんたの命の炎はまだ燃えてるよ。誰に消せるもんかね こんなに大切な物。楽しかった思い出って言うのはさあ ペラペラな平面的な残像なんかじゃないね。何ていうか 一緒に過ごした時間の分だけ厚みがあってさ・・・感じるんだよ 聞こえるし 見えるんだよ あの頃の風とか光とか香りとかさあ。
 その中でも一番は やっぱりあんたの笑顔と笑い声だわ。もうしばらく 一緒にいてな!』

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