【絵本野山草】(8) 石蘭/なごらん/風蘭/石斛/釣鐘かづら/黄蕙
石蘭
葉は、しらん、はくらんなどのごとくにて、根本 土の上に二三寸高く岩のごとくなるかぶ有。年々に数出て後は、岩石のごとし。その間々に花七八寸に出る。花のかたちは大蘭に似て、色うらん也。岩石蘭といふ。六七月はなさく。蘭も同時なり。
※ 「しらん」は、紫蘭。
※ 「はくらん」は、白蘭。びゃくらん。
なごらん
葉は、ほそ長くあつく、葉のさき丸し。葉の色は、緑青にして、青漆をぬるがごとく、花うす白、少し青み有て、色あさ黄なり。四五寸程に出て、段ゝに開、花形は蘭花に似て、五出む中に一出有て、濃紫色のかのこ有。愛らしき花也。七八月咲也。
※ 「なごらん」は、名護蘭。
※ 「青漆」は、藍草から取り出した藍蝋などを加えた漆、または、黒漆に黄漆を混ぜた緑色を呈する漆のこと。
風蘭 おさ蘭
花、五六月より八月有。葉、柳葉にして、ほそくあつし。つや有。ちいさし。花のいろ白く、小りん、蘭花のごとし。又、なごらんあり、かやらんあり。なごらんは、葉 大葉にして、花の色、黄らんの小きがごとし。葉の間にさく。根あがりてから、ことの外 見事也。かやらんは、葉對生ず。しげ/\出で ● のかたちのごとし。故に、おさらんといふ。又、天人● ともいふ。●らんといふあり。草の莖のごとく小えだわかれ、ふし/\に極こまかなる花さく。かはりたるものなり。
※ 「小りん」は、小輪。
※ 「なごらん」は、名護蘭。
※ 「かや蘭」は、榧蘭。
石斛
又、木に生るを木斛と云。花、五六月。さゝ葉に似て、あつく小葉にして、莖にひげ有。二ふしづゝくゝり有。花形、風らんと同じく白し。又、うすべに有。棕梠皮にてつゝみ、つりものにてもてあそぶ。正二月花有。
石斛 生 六安山谷水傍石上 。今 荊州 廣州郡及温合州 亦 有 之。以 廣南者 為 佳。多 在 山谷中 。五月 生 苗、莖 似 竹節 。節間 出 碎葉 。七月 開 花。十月 結 實。其根細長黄色也。七八月 採 莖、 以 桑灰湯 沃 之、 色 如 金。陰乾用。
つりがねかづら
花のかたち、ほうちやくのごとく、花の色白くうるみあり。はなびらに紫のごまふあり。はなびら五つにして、うつぶきさく。葉、風車のかたちに似れども、葉かた/\に付て、両方にむかはず。又、しの立も似たり。山中の谷に有。三四月より八月迄有。
※ 「ほうちやく」は、宝鐸。堂塔の軒の四隅などに飾りとしてつるす大形の風鈴のこと。
黄蕙
葉、しらんに似て、ひろくやはらかなり。はなのかたち、らんのごとし。色●● うこんなり。葉にしろきほし入るもあり。黄のほし入もあり。これをほしけいとも、ほしがんぜきとも、こけいともいふ。根のもとにたまり、がんぜきのごとし。四月にはなさく。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖