見出し画像

鮴(ごり)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [4]

ごり 字書に見ることなし、しばらぞくしたがふ
一名 鯼 イシフシ

山城やましろ 加茂川かもがわの名産なり。『大和やまと本草ほんざう』に二種あり。一種は、腹の下に丸きひれあり。その ひれ へいなる所ありて 石にけり。是、真物しんぶつとす。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [4]

あぶら多し。あつもの  として味よし。形は、杜夫魚とふぎよに似て、小さく背に黒白くろしろもんあり。一名、石伏いしぶしと云々。是、貝原かいばらうぢ粗説そせつなり。もつとも一物いちぶつなりとはいへども、かたち小異せうゐあり。尚、しもに見るべし。

※ 「貝原かいばらうぢ」は、貝原益軒のこと。『大和本草』の編纂者。

加茂川 鮴捕
筵二枚を継ぎて浅瀬に伏せ小石を多く置き
一方の両方の耳を二人して持あげるれば
川下より長さ三尺余りの撞木を以て川の底をすりて

魚捕ぎよほは、むしろ二枚をぎて、浅瀬に  せ小石を多く置き、一方いつぽうの両方の耳を二人して持あげるれば、又、一人川下かわしもより長さ三尺余りの撞木しゆもくを以て 川の底をすりて、追登おひのぼうを 追はれて、筵の上の小石に付きかくるを、其侭そのまま 石ともにあげるなり。

是を 鮴押ごりおし と云。

追登る魚追はれて筵の上の小石に付き隠るを
其侭石ともにあげ採るなり


又、加賀かが 浅野川あさのかはの物も名産とす。是を採るに、加茂川の法に同じくフツタイ、いたおしき とそのことにするのみ。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [4]

フツタイは割りたる竹にて おほひなるみのののごとき物を、加茂川のむしろのかわりに用ひ、板おしきはたて五尺、横三尺ばかりの厚き板を竹にてはさみ、下に足がかりの穴あり。是に足を入れて、上の竹の余りを手にもち石間いしまをすりて、追来おひきたる事、前にいふごとし。

加賀浅野川の物も名産とす
是を採るに加茂川の法に同じ


又、里人さとびとなどの納涼に乗じて、河辺かわべ逍遙せうようし、このうをとるに、人ゝ 香餌かうゑを手の中に握り、水にきくし、「ゴリ」とよべば、うをれて掌中しやうちうに入るなり。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [4]

又、かごにてすくひとることもるなり。是をしも、未熟の者にては、得やすからず。清流きよきながれ  浅水あさきみづ といへども、見えがたき魚なり。

和名抄わめうせう』に「ゴリ」をいださず。● を「いしぶし」として、せい  石間せきかん伏沈ふししづむ

※ 「和名抄わめうせう」は、『和名類聚抄』のこと。平安時代中期に編纂された辞書。

いしぶしとして性石間に伏沈

■は、チゝカブリ。鯸に似て黒点あり。[ ■は魚+庸-广 ]

䱩魚かうぎよ カラカコ
鯸に似て、こうける物なり、とちうせり。あんずるに、文字もんじに於ては、適当ともいゝがたし。和訓わくんに於ては「いしふし」。石にして、いまコリ石伏いしふしといふにあたれり。

ゴリは、鳴く声の「ゴリゴリ」といふによりて、後世の名なるべし。

チゝカフリは、チゝは土にて、土をかぶり、●とのなるべし。されば、杜父魚とふぎよにちかし。人のこへを聞けば、砂中さちううかしらをさして、いかりのごとくす。一名「砂堀すなほりはぜ」とも云。[ ■は魚+砂 ]

カラカコは、ほうこうつけたるの名なり。こう古名こめい「カコ」とも云へり。カラの未詳つまびらかならず

あるひは云、聲有魚こへあるうをは、必ず 眼を開閤かい●うす。これ ●● 一竒いつきなりとす。されども、其実そのじつをしらず。

又、是等これら みなところ の方言に「かじか」とも云へり。尚、辨説べんせつあり

下の「かじか」の条に見るべし




筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖