【大阪】築地蟹島

出典：国立国会図書館デジタルコレクション『築地蟹島（浪花百景之内）』

船場せんば東北とうぼくの端はしにありて、淀川の下流かりう 大川と東堀ぼりに分わかるゝの鼻はなに築つきいだせしゆへ、築地じと云。又、蟹島かにじまとも云。

此 川添ぞひに 柏戸りやうりや 旅舎はたごや 軒のきをならべ、何いづれも三がいだてにて、ざしきの好み、ざうさく、ばんたんびれいをかざり、風流を尽つくし、且かつ、料理りようり向むき 頗すこぶるびにして、よの客舎はたごやに同じからず。故ゆへに、四方よものゆうりより歌妓うたひめ娼婦あすびめをつれて、こゝに 遊あすぶ の通客つうかく多く、或は、茶ぐちんきの入札、又は、音曲おんきよく の 集会しうくわい など常に絶たゆることなく、金城きんじやう の 旭あさひうらゝかに、三大橋けうを見わたし、実に市中しちうの絶景ぜつけいこゝに尽つくすといふべし。

※ 「柏戸はくこ」は、料理屋のこと。
※ 「三がいだてにて ざしきの好み ざうさく ばんたんびれいをかざり」は、三階建てにて座敷の好み造作万端美麗を飾り。
※ 「ゆうり」は、遊里。
※ 「茶ぐちんき」は、茶具珍器。

風流を尽し 且 料理向頗るびにして
よの客舎に同じからず

金城の旭うらゝかに三大橋を見わたし 実に
市中の絶景こゝに尽すといふべし

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