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鷹(たか)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [2]

甲斐かひ山中やまなか日向ひむか丹後たんご伊豫いよ とうるもの みな 小鷹こたかにして、大鷹おほたかは、奥州おうしう黒川くろかわかみ黒川くろかは大澤おほさは冨澤とみさわ油田あぶらた年遣とつかい大爪おほつめ矢俣やまた とうにてとるなり。しのぶこほりにてとるものすべて しのぶたかとはいへり。白鷹おほたかは、朝鮮てうせんよりきたりて、つるがんものこれなり。

たかふ事は、朝鮮てうせんもととして、鷹鶻方ようこつはういふ しよあり。ゆへに、本朝ほんてう 仁徳にんとく天皇てんわう御宇ぎよう依網よさみ屯倉みやけ阿珥古あひこたかけんせしに、そのさへしりたまはざりけるを、百濟はくさい皇子こうし 酒君さけのきみ、是は朝鮮てうせんにて 倶知くちいふとりなりとて、韋緍ふくさ小鈴こすゞつけ得馴ならしえて、百舌野もずの遊猟ゆうれうおゝく、雉子きじゆへに、時人ときひとその養鷹たかかひせしところなづけて、鷹甘邑たかいのやういふて、いま住吉郡すみよしこほり 鷹合村たかあいむらこれなり。されば、我国わがくにやしなはじめこと朝鮮てうせんはうつたへたりと見へたり。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [2]

捕養とりかものは、すべて 巣中すちうて、やしなれしむ。そのなか伊豫国いよのくに小山田おやまだにはあみしてれり。このやま土佐とさ阿波あはごくまたがりたる大山たいさんなり。されば、たか高山かうさんがけてわたりきたるものなれば、かならず  この やまり、凡七八月の間、いろつきかゝるおりわたるのとす。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [2]

あみは、はりきりあみといひて、ひろさ一寸 或 二寸、すがいとにても、にてもつくる。たて二四尺、よこけん ばかりなるをりて、そのした提灯てうちんあみとて長三尺ばかり、周經わたり一尺斗のもめんいとあみひよどり を入れ、くひひ付、又、その かたはらにてつくりたるへびなりのよくたるを、たけつゝに入れて、いとをながくつけて、夜中やちうよりかけおき早天さうてんたか木末こずえいで求食あさるかけ、しかきのうちよりへびの糸をひきて、ひよどり のかたをがけうごかせば、おそれて騤立さわたつを見て、たか これとらんととびおりあみにかゝる。

両方りやうはうつけたるたけうるしをぬりて、はしやうにしかけしものにて、たか ふるれば、おのづから  しゞまり よりて、たかまとはるるをとらふなり。この あみはるるに窮所きうしよありて、是、又、庸易よういのわざにはあらずといへり。その 猟師りやうしみな 惣髪そうはつにして、男女なんによわかちがたし。ふゆあさかさねちやくせり。

※ 「すがいと」は、精錬する前の生糸一本をりをかけずに、そのまま用いる糸のこと。菅糸。
※ 「」は、イラクサ科の植物カラムシ(からむし)の繊維を紡いで作る糸のこと。

こゝたかおゝくははいたか、又はハシタカともいひて、兒鷂このりめんなり。逸物いちもつは、かもさぎをとり、白鷹おほたかにて 小也。その色ゝいろ/\あり

かくのちやま足緒あしをやま大緒お●をさすなり。いづれも、もつつくる。もつともあしにあたるところは、揉皮もみかわもちひ、もとをりたけくだ、又は、鹿しかつのにてつくる。小鷹こたかは、かみにて尾羽おはをはり、樊籠ふせごれて、さとひさぐ。

他国たこく、又、奥州おうしう大鷹おほたかは、巣鷹すたかいひて、よりとらふあり。そのはう未詳つまびらかならず

は、餌板えいたいれ差入さしいれかふ

大鷹おほたかは、尾袋おふくろ羽袋はふくろやはらかなるぬのにて、尾羽おはすじ一処ひとゝころぬいつける。その 寸法すんぱう尾羽おはの大小にしたがふ。

※ 「もとをり」は、 鷹狩りで、鷹の足につけるひもの金具のこと。
※ 「ひさぐ」は、売ること。


以捕時異名とるときによりてなをことにす

赤毛 一名 網掛あかけ 初種はつくさ 黄鷹わかたか
これなつあきとりたるを云也。

巣鷹すたか
にあるをとりたるなり。

巣廻すまはり
五六月、たちたるをとりたるなり。

野曝のされ
山曝やまされ木曝こざれとも云。十月、十一月にとりたるなり。

里落さとおちたか
十二月にものなり。

新玉あらたまたか
正月にとりたる也。

佐保さほひめかへり
乙女おとめ鷹、小山こやまかへりとも云。二三月にとりたる也。

かへり
山野さんやにてをかへたるをいふかたかへりとは、一かへたるを云。二度かへたるを、もろかへりと云。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [2]

鷹懐たかをなつける

たるまゝなるを、うちおろしといふ。これ人肌ひとはだを以て、はしまはじみなどをらひ、はし つめり、足緒あしををさして、夜据よすへをするなり。夜据よすへとは、うちおろしのやゝ人になれたるを視候うかゞひよるとやひらき、ともしびもちひず、手にすへ山野さんや徘徊はいくわひし、へるについて、ともしびかすか [■は凵+米] にせ、またをかさねて 次第しだいにちかくす。これは、もし はじめにひかりおどろかせては、つひくせとなりて、のちに水にれたる焚火たきびかはかすことなりがたきゆへ也。そのほか 數多あまたがいあり。

※ 「足緒あしを」は、鷹狩りに使う鷹の足につけるひものこと。足革あしかわ
※ 「夜据よすへ」は、 夜に鷹狩の鷹を手にすえて連れ出すこと。夜据よずえ
※ 「とや」は、鳥の寝る所、寝座ねぐらのこと。ねぐら


さて、夜据よすへ つもりて、たか くるとぎ、ふるひ、せゝりなどしてやわらぎたるをて、朝据あさすへをすなり。これは、未明みめいより次第しだいあさかさねて、のちには、白昼はくちうにもいだせり。そのときにくよくなり、野鳥のとりて、かくるこゝろさつしかねて、たくわ小鳥ことりせて、手廻てまはりにて、是をらせり。

たゞし、その 小鳥こちりはしをきり、あるひは くゝる也。是は、たかついばみ、たてさせさるがためなり。もしこへたてなどして、たかおどろけば、ついくせとなるをいとへばなり。これを、腰丸觜こしまるはしをまろばす とは云へり。

この とりよくとりたるときは、暖血ぬくち(肉のこと也)をすこひて、おほくははず。おほへば、にくふとりてあしし。なを生育せいいくこゝろつけて、こへやせる、又は、羽振はふり顔貌がんばうなどの善悪ぜんあくあるいは、大鷹おほたかひとみちいさくなるを にくのよきとし、小鷹こたかは これにはんし、またうちいろをも かんが調とゝのはせて(これにくをこしらへるといふ也)、飛流とびながし活鳥いけとりふ(飛流とびながしとは、とりひ、いでたかとびはせて、たか羽合はあわせするなり。をぬふは、たか一筋ひとすじとばさんがため也)。これ手際てぎはよくれば、それより 山野さんやいでとりふなり。

巣鷹すたかは、よりりて、かごのうちに艾葉もぐさうさぎかわきて、小鳥ことりこまかにりてあたへ、すこしもみづまじへず。

初生しよせいを のり綿毛わたげ共云。又、村毛むらけ、つばな生育せいいく次第しだいあり。

もつ成長せいちやうとして、一生ひとふ二生ふたふするといふなり。三生みふおよべば、籠中こちうほこをさすなり。はじめより かご蚊帳かやをたれて、さすいとふ。又、兄鷹せうをいひ、弟鷹たいといひて、これをわかつには軽重けいぢうをもつてす。かろきをせうとし、おもきをたいとす。又、尾羽おはそろひかたまりたるのちは、足緒あしををさして、五日ばかりほこにつなぎ、しづかにすへて、三日ばかり浅湯ぬるゆあびするなり。もしあびざれば ふりかけてかさぬ。しゞまりたるのばし、なを前法せんぱうのごとく 活鳥いけとりをまろはしてのちにはつねのごとし。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本山海名産圖會 5巻 [2]

鷹品大概たかのしなたいがい

角鷹おほたか
蒼鷹、黄鷹ともいふ。

波廝妙はしたへ
たいとも、●●とも、しりがたきを云。

はやぶさ
なり、形小也。


なり、なりおほいなり。かふに 用之これをもちゆ

はいたか
也。

兄鷹このり
はしたか也。

はしたか
𪄄とも書て、品多し。黒-、木葉-、通-、熊-、北山-、いづれも同品なり。府をもつて別かつ。

萑■つみ [■は鳥+戒]
■ [■は凋+鳥] ともかきて、しな多し。黒し。本葉-、通-、熊-、北山-、いづれも同品なり。府をもつて別かつ。

萑𪀚ゑつさい
つみより小なり。

鵊鳩さしば
あか治鳥さしば 青- 底- 下- 裳濃すそご

わし
全躰ぜんたい くろし。としを経て、しろ種ゝしゆ/\へんず。哥に、くろく、眼は青し。はし青く、あしあるをわしとしるべし。

くまたか
全躰ぜんたい くろし。、年を様ゞさま/\に変ず。哥に、はしくろく、青ばし青く、足青く、脛に毛あるをくまたかとしれ。そのほか品類ひんるいおゝし。

任鳥かふり
まくそつかみ、くそつかみ。

惰鳥よたか種類しゆるいなり。


大和本草云、鷹鶻方ようこうはうあんずるに、たかるい 三種さんしゆあり。はやぶさたかわしなり。いま あんずるに、白鷹おほたかはいたか角鷹くまたかは、たかなり。

はやぶさ鵊鳩さしはは、こつなり。

わしとび とうは、わしなり。鷹鶻ようこつの二るいは、おしへとりとらしむ。わしたぐひは、しへて、とりとらしめず。又、諸島しよとう おほいなり。たゞたかめん おほいなり。このこと中華ちうくわしよにもみえたり。なをつまびらか なることは、原本げんぼんによりてみるべし。こゝりやくす。

※ 「大和本草」は、江戸時代中期に貝原益軒によって編纂された本草書。



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