【絵本野山草】(13) 春蘭/春龍膽(はるりんどう)/佛子草/九曜草
春蘭
山蘭、■蘭、國香 [■は凵+米]
花一本に一りん有。花 香こと蕙蘭にかはらず。色少し黄也。又、葉もけいらんと同じ。又、花のさやかつく有。さやの色、白、うす紅、黄青し。じく、うす青、紫色有。左傳、國香 鄭文公妾 有。燕姞といふに蘭を与ふと夢蘭に国香有。人眼をしてこれに媚と也。三月花。
※ 「國香」は、国中で最もすぐれた香り。ここでは、蘭の花のこと。
※ 「左傳」は、春秋時代の歴史書『春秋』の注釈書『春秋左氏伝』の略。左伝。
※ 「鄭文公」は、鄭の第十代君主、文公。
※ 「燕姞」は、文公の妻。
※ 「蘭」は、文公と燕姞のあいだに生まれた子ども、のちの穆公(第十一代君主)。
春龍膽
又、はるぎきやうともいふ。
はなのかたち、八重ききやうににて、花のうら、白、あさぎ、うす紅のほし有。葉、りんだうよりみじかく丸し。さきとがり、はなのしのだち、りんだうにかはらず。三月はなさく。
※ 「りんだう」は、竜胆。
佛子草
三月はなさく。はな六ようにして、うてななし。はなのいろ、そこ濃紅にして、下より黒みあり。又、うちうら、うすべににして、さきよりしろみあり。葉、まんだら花に似て大く、はなのしのだち、をだまき草に似たり。
九曜艸
狗舌草。三月はな咲。はなのかたち、菊のごとく、いろ本黄、しのだちまはりさく。葉は、苦葵葉のはに似てちいさし。下に付。単瓣有。千瓣あり。ひとへを沢もつこうともいふ。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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