見出し画像

【京都歳時記】十二月遊ひ 四月

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 上

卯月に成ぬれば、垣ねに咲る  うの花は  又なまめかし。花橘の匂ひをとめて、郭公の雲井に  名のるこころして  乃田をさの名に  いにしへ人の恋しきは、げにさら也。

岸の山吹き  よけにさきて、井手の水に影うつるは、こがね花さく  夕かとおもほゆるも、心ゆかし。

八日は、灌佛くわんぶつ のおこなひ  あり。推古天皇の御時より  はじまれり。ほとけの  むまれ●ふ日なれば、生湯うぶゆをひきたてまつる  若葉の木ずゑ  すずしげにしげり行も  あはれなり。

おぼつかなき  藤の花さきみだれて、さかふる●の  藤なみも、たかき空にや匂ふらん。都ちかき所には、大谷とかや名をえたる  花ふさながき  白藤もありといえど、なをも  心ゆくは  野田の藤こと更。

藤は  酒えんをこのむことのなれば、酒の匂ひには、花ふさもながく、木もさかふるとなん  聞えし。


 ほととぎす しのびの里になくなれば
    まだ卯の花の さつきまつころ


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『十二月遊ひ 2巻 上



卯の花
Photo by mominaina



筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖