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【梅園魚品図正】(26) 鯒(めごち)/鯖(さば)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『梅園魚品図正 巻1


鯒 メゴチ

癸巳初秋晦日 真寫
海魚類

『節用集』 鯒 メゴチ 雌なる者
 ネヅツポウとも云

 テ   ヲ  古知  
 字 出所不詳
漢字  ダ 

※ 「不詳」は、つまびらかならず。
※ 「 ダ  」は、未だ知れず。


鯖 サバ

癸巳七月廿四日 真寫
海魚類

『順和名抄』曰 アヲサバ 䱾魚ヲホサバ

此魚、牙小也。故にサバと云。サは小なるを云也。能登、丹後の産を佳品とす。脯となして、遠きに□す。一双合せ□む。故に、サシサバと云。夏秋、漁人夜是を釣る。漁火千萬海上につらなれり。人目を驚す。

伊勢物語に、
 晴る夜の 星かさはべの 蛍かも
  我すむ里の 海人あまのたく火か
と、詠るが如し云々。

青花サバ魚  清俗 鯖の字を用るは非也。

※ 「脯」は、干物にすること。
※ 「遠きに□す」は、遠きに寄す。
※ 「一双合せ□む」は、一双合せ挟むと思われます。
※ 「伊勢物語に」は、伊勢物語の八七段「蘆屋の里」にこの歌が登場します。「晴るる夜の星か河べの蛍かもわが住むかたの海人のたく火か」


『元壽』曰
鯖、漢名不知。四時常にあり。春より秋の末迄盛なり。能登、周防、讃岐、伊豫の國よりけんずる。就中、周防を名産とす。彼國佐婆郡あり。もと其地をよしとす。故に名づく。今、二たかしら刺合さしあわせ、しを [魚+邑] するを刺鯖さしさばと云。今七月十五日中元の節物にして、相互に是を説儀いわいかわす。『延喜式』に鯖のひしほあり。今、長門、周防より出す。長州にて鯖の切漬と云。鯖の骨、わたき、頭を去り、片身其まゝ塩に収めたる者にて、其塩かへりてどろみとなれり。肉は至て淡くしまれり。其味他のしをからに似ず絶品也。此れい [釆+大] 外になし。

※ 「四時」は、春夏秋冬の総称。
※「就中」は、なかんづく。
※ 「刺鯖さしさば」は、背割りした塩さば二尾(二枚)を、一枚の頭をもう一枚の頭の部分にさしこんで、二枚一単位で売られていたそうです。
※ 「しをから」は、塩辛しおから



筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。

また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ

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