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超短編小説#7 「パクリだ」

女子数人が教室の角に集まり、雑誌をパラパラとめくる。
「咲菜ちゃん、雑誌に乗るなんてすごい!」
「まぁね、でもトーゼンかなぁ?」
咲菜は中学生にしてとある雑誌のモデルを務めている。有名な雑誌じゃないが、咲菜がモデルをしているおかげでクラスの中では有名な雑誌扱いだ。
「咲菜ちゃんは良いなぁ、可愛いし男子からもモテてるじゃん。それでいてモデルするなんて」
「当たり前だってーそんなことー」
「うわー、気取ってるー、きもーい」
少し遠くからそのような罵倒が、女子の集まりに聞こえた。どうやら咲菜の態度が気に入らないようだ。
「そんなこと言って、どうせ私のこと羨ましいーって思ってるんでしょ?まぁしょうがない事だからね、大丈夫だよ」
「どうしてあんなのでモテモテなの!?」
「ギャー、絶対咲菜には近寄らない!!」
1部からは嫌われている咲菜だが、それよりも人気さが勝っていた。それが、また咲菜を嫌っている者の嫌悪感を倍増させる。
「だって、あなた達も私の髪型真似してるじゃない!」
「違うよ、ただのロングヘアだって」
「なんで!?絶対真似したんだって!パクリ!パクリだ!!」
「ロングな髪型の人くらい沢山いるでしょ!?すぐパクリって言うのやめてよ、自意識過剰女!」
「全く、困るよねーああいうヒト」
「あ、あはは…ねー、ほんとぉ……あは…」
みんな、愛想笑いか苦笑いしか出来なかった。素直に笑っているのは咲菜だけだ。
「明日から、髪型変えてこよーっと」

翌日、咲菜は本当に髪型を変えてきた。肩より少し下まで下がっていた髪を結んで、ロングヘアからポニーテールにして登校した。
咲菜はいつもの面子と楽しそうに喋る。
「あははー、でさぁ…って、あれ?」
「ど、どうかした…?」
「なんで、同じ髪型なの?私、ちゃんと髪型変えてきたのに…晴子が私の事パクるなんて…信じられない!」
「嘘だって!私、昨日どころかずっとポニテだったよ!?咲菜ちゃん、大丈夫?!」
「嘘だ!!絶対、絶対嘘つき!!どうせ晴子も私みたいになりたくて髪型真似したんだ!やめて!今すぐやめろ!!」
「……咲菜って…ヒステリックだよね…」
ヒソヒソと咲菜を嫌いな女子達が呟く。だが、その呟きもいつしか聞こえなくなった。
「みんな私を妬んでる!!私の真似して私を殺して偽物が私になってみんなその子を私として扱ってモデルとして私は悲しむだけでその子は裕福で」
ぶつぶつとなにかを呟く咲菜の周りには、いつの間にか咲菜の親友もいなくなってしまっていた。
「みんな私の事妬んでる…殺そうって……言って…それで…」
授業が始まっても咲菜の独り言は終わらず、教師によって保健室へ連れられた。
「どうしたんですか?最近様子がおかしいらしいと聞きましたが…」
保健室の先生は、憎み妬みなんて持たずに優しく咲菜に声をかけた。しかし、咲菜は立ち上がると先生の頭を力強く掴む。
「みんな嫌いって言ったでしょ!!いやだ、嫌だぁ!!!やめてよ!!!」
咲菜は包帯を掴み取り、顔全体をぐるぐる巻きにすると椅子から蹴り落とした。
「反省して!先生も、ポニーテールにして、私のパクリだって!!最低!早くごめんなさいって言って!!」
咲菜は喋ることの出来るはずがない先生の両腕を握り、反省を求めて腹に強い蹴りを入れ続けた。


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