見出し画像

超短編小説#6 「夢のような」

「おめでとうございます!」
そんな歓声がある男の響く。
「いやぁ、記録を更新するなんて偉業を果たすなんて!素晴らしいです!」
男は嬉しそうな笑みを浮かべ、トロフィーを抱えて見せた。
「僕も、こんな事になるなんて…。小さい頃からずっと100mを早く走るぞと思っていたけど、まさか5秒の記録を出せるなんてねぇ」
「いやぁ、本当に素晴らしい」
「母から聞くに、僕は3歳の頃から走るのが好きで、将来の夢は『超早く走ること』といつも言っていたとか。それほど前から夢見ていたことが今、叶ったんですね」
記者たちもどこか嬉しそうに微笑んだ。
「最後に、何か言いたいことはありませんでしょうか?」
「えー、さっきからずっとこのような事を話していた気がしますが、まさかこの日が訪れるなんて、夢にも思いませんでした!
まさか、夢だったりしてね。なーんて!はっはっはっ」

ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ…
カチッ!
アラームを止めた衝撃でスマホが棚から落ちた。スマホのホーム画面には、見慣れた憧れのマラソン選手の画像がある。
「夢か…」
男はスマホをポケットに入れると、一人ぼっちのリビングで朝食を食べ始める。

よろしければぜひサポートお願いします!活動やらなんやらの為だとか他のクリエイターさんのサポートに消費させていただきます