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「分かりやすい」、トラップ

 あなたの価値は、なんですか。
 少し立ち止まって、答えを用意して読んでみてください。

 もちろん、用意しなくてもいいですよ。
 鼻でもほじりながら読んでください。
 あっ、人になすりつけるのはなしです。やめてください。
 ちょっと!やめてって言って…もう、ちょっと!

 …マジでやめて。

 先日、智春さんと同じ事象について互いの考察を述べ合おう、みたいな話になりまして。
 お互いテーマ考えときましょう、と言って寝て起きたら、朝にはこんなお手紙 note が出来上がっていた。

 ひー怖い。早すぎて怖い。
 しかも、

坂るいすさんとは? 
私の分析によると、『真剣になるのが怖い系カメラ搭載型コアラ心理士さん』である。紹介に情報を詰め込みすぎた。カメラ搭載型とは私の造語で、「どんなときも自分の行動を俯瞰しているカメラアイが頭上についていて、作動している人」のこと、コアラはアイコン、心理士さんとは国家資格のあの心理士さん、です。 

と、私の他己紹介まである。割と最近知り合ったはずなのに、めちゃくちゃ分析されてる。多分、気になったらガーッ!と行くタイプですねこりゃ。

 えっと、「真剣になるのが怖い」という風に見えているのは、おそらく私の美学のせいだと思われます。
 小学生のころ読んだ本に出てきた「大魔法使い」がかっこよくて大好きで、彼の描写に「考えたり力を発揮したりしている時ほど、彼の表情はうつろで、ボーッとしているのだった」みたいなのがあるのを発見し、「うーわ、めっちゃかっこいい」と思った私は、それからの授業中、出来るだけ呆けた顔で真剣に考える練習をしたのだった。
 だから、今だにそういう場面になるとバカみたいな顔をするという癖が抜けない。そう、ちょうど、アイコンのコアラみたいな顔。

 ほら、真面目な場面でついオナラしたくなる人っているじゃないですか。私はそういうタイプなんです。真面目に真面目なことをするんじゃなくて、オナラをしながら真面目なことをしたいのです。ちなみにオナラは真面目な顔でします。

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 あと、(臨床)心理士さんは、実は国家資格じゃないんです。最近出来た(公認)心理師さんが、国家資格なのです。発音は一緒なのに漢字を変えて区別するという、苦肉の策っぷりが露骨に表れた表記となってます。
 っていうか私がなんの資格を持ってるか、いちおう明記はしてないつもりだったんですが、智春さんいったいどこから拾ってきたんだろう…教えて…後で教えて…。

 ご紹介いただいたので私からも智春さんの他己紹介を、と考えたんですが。何かちょっとガチめの分析になりそうなので止めました。
 一言で言うと、「ブリトニー・スピアーズとP!NKを激しく行ったり来たりしてる人」という、誰もピンとこなさそうだけど世代だけバレる例えだけ記しておきます。

で。本題です。 

智春さんが私に投げてくださった質問はこちら。

”友達の恋人をねらう女の子についてどう思いますか。もしよかったら「他人の恋人をどうしても奪わずにはいられない」という行動の下には、一般的にどんな思いが潜んでいるのか、心理学的な側面から分析していただけませんか” 

とのこと。
 便宜上「サクラちゃん」と智春さんが名付けたその子は、いわゆる、サークルクラッシャーみたいな子なんでしょうか。私の身の回りには、典型的なタイプの子はいなかったので、「いわゆる」のイメージで書かせていただきます。

 あと、ここでも前置きさせてもらいます。

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 この気持ちを忘れずに読んでください。
 これは心理オタクの戯言です。

1.承認欲求の満たし方

 簡単に言うと、承認欲求の満たし方がそういうパターンなんだろう。
 承認欲求は、大なり小なり誰でも持っている。その大なり小なりの振れ幅が本当に人によって大きいのだが、サクラちゃんのは結構大きそう。

 その欲求をどう満たすかという課題に対して、「アイドルになってみんなに愛される」というソリューションを見出す人もいれば、「めちゃくちゃ稼いで金で満たす」というソリューションを見出す人もいると思う。

 サクラちゃんが見出したのは、「他人の恋人を奪う」というソリューション。ただ単に恋人を作るだけではなく、「選ばれた」「承認された」感が強いのが、略奪恋愛。なぜなら、分かりやすく比較対象がいるから。

 比較対象は、ないよりは、あった方が分かりやすい。一人でテストを受けて点数だけ見ても、偏差値がないと「今自分がどこにいるか」が分かりにくい。そういう意味で、サクラちゃんは偏差値を追い続けているのだと思う。


2.自尊心を傷つけるスパイラル

 承認欲求が強すぎる人は、「自分は価値がないんじゃないか」という疑いを常に持っている。その「疑い」が、「不安」となって大きく膨らみ自身を苛む。そこからの「不安」との向き合い方は人それぞれ、色んなパターンが考えられる。「疑い」を晴らさないパターンだって、きっとある。

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 サクラちゃんは、「女として人に勝つことで疑いを晴らす」という選択をした。しかし、勝ちが多めの勝負をランダムに繰り返していくとどうなるか。
 一向に満たされず、むしろ穴が大きくなる心を置き去りにして、脳の方で無意識の内に報酬経路が出来上がってしまう。成功体験によって脳がそれを「快」だと覚えてしまい、何度も繰り返さずにはいられない状態になる。いわゆる「依存」状態に陥ってしまう。

 サクラちゃんは、きっとどこかで気づいているはずだ。
 落とした男の数や、貢がれた金額。具体的なだけで本質的ではないそれらが、「自分は価値がないんじゃないか」という、自分の中の疑いをいっこうに晴らしてはくれないということに。
 なのに、またそれらを求めて、一時的にでも自分を落ち着かせようとしてしまう。そうして、自尊心を傷つけるスパイラルに嵌ってしまう。

 サクラちゃんに振り回された男たちが、「色んな男にちょっかいかけてるのはどうかと思うけど、サクラちゃんは本当は良い子でちょっと不器用なだけ」と言っているのは、彼女のその空虚な寂しさに気づくからだろう。


3.「分かりやすい」ものに証明をさせない

 では、サクラちゃんがそんな状況に陥ってしまったのは何故なのか。分岐点は一体どこだったのか。

 先に「比較対象はないよりもあった方が分かりやすい」と述べたが、その「分かりやすさ」のトラップを回避できるか、分かりにくさに身を置けるか、というのが一つの大きなポイントだと私は思う。
 数字やお金、地位に名声、勝ち負け。そういった「分かりやすいもの」に、「自分の価値」の証明をさせること。それは悪魔の証明だ。

 「分かりやすいもの」ばかりを見ていたら、「ひと」と目が合わない。もしそれで目が合う人がいたら、もしかするとその人は「ひと」ではないかも知れない。

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 「分かりにくいもの」は、じれったい。時間と忍耐が要る。
 「分からない」ものの中にいるのは不安でストレスなので、早く「分かろう」としてしまう。
 だけど、あなたの価値を、分かりやすいものに証明させてはいけない。
 そんなものにあなたの価値は語れない。
 サクラちゃん、あなたも。



 ということで回答は以上です。
 最初に思い浮かべた「自分の価値」は、分かりやすいものと分かりにくいもの、どちらでしたか。

 ちなみに、「努力」は分かりやすいかという話をすると、「努力の結果」は分かりやすいけど、「努力のプロセス」は分かりにくい、という分類でいいと思います。
 だから当然、「努力の結果」を褒められて育ったら「分かりやすいもの」が自分の価値だと信じるだろうし、「努力のプロセス」を褒められて育ったら「分かりにくいもの」が自分の価値だと信じるようになるんじゃないかな。

 「分かりにくいもの」を褒めるのは難しい。
 でも、だからといって「分かりやすい」ものに飛びつきたくはないし、少なくとも、「存在」という「分かりにくい中では褒めやすい」ものを褒め続けることは、絶対に忘れたくない、と、いち母として強く思う私なのでした。


 今日、私の恥骨のなかでも最も恥骨っぽい部分に、娘の頭蓋スイングがクリーンヒットして、1分くらい悶えたし、ヒビ入ったんちゃうかとすら思う程だったけど、そんなことは根に持ってない。
 ぜんぜん、根に持ってない。

 ただ頭蓋スイングが怖い。ただそれだけ。


いつもありがとうのかたも、はじめましてのかたも、お読みいただきありがとうございます。 数多の情報の中で、大切な時間を割いて読んでくださったこと、とてもとても嬉しいです。 あなたの今日が良い日でありますように!!