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M・R・ジェイムズ怪談全集

日本では時期はずれな気もしますが、

英国で “ 怪談 ” といえば、
クリスマスの頃に
家族や親しい友人たちで
暖炉のまわりに集まってするもの
なんだとか。

この
「M・R・ジェイムズ怪談全集」も、

もともとは著者が
キングズ・カレッジや
イートン校の学長であった頃、
内輪でクリスマスに
友人や学生たちに読み聞かせる
ためのものだったそうです。

そういえば、
ほぼ同時代の怪奇小説
ヘンリー・ジェイムズの
「ねじの回転」もたしか、
クリスマスに暖炉のそばで
語られる怪談という始まりだったし、
ディケンズの
「クリスマス・キャロル」なんて
もろクリスマスの幽霊話です。


なんだか
和気あいあいの
団欒てかんじで、
怖いというより楽しそう。


でも読んでいると、

不思議なもので
宗教も文化も小道具も違うのに、
恐怖の本質的なところは、
日本と英国は
とても近いものを
持っているように感じます。

その静けさ
ひそやかさも
湿度も
芯からぞっとするかんじも、
よく知っている
慣れ親しんだ肌触りがある。

ただ、
宗教・文化・時代の違いゆえに
想像だけでは補えない部分もあり、
とくに宗教的な小道具や教会の構造で
???なことが多く、
そのへんの知識が補完できると
よりおもしろいのだろうなと思います。


それでも、
怪談という要素に加えて
古文書・歴史的遺物・史跡・
暗号・宝探し・魔女・黒魔術・
庭園式迷路・ドールハウス…などなどの
わくわく心をくすぐるトッピングも
ちりばめられていて、
ひとつぶで2度も3度もおいしいのが
この「M・R・ジェイムズ怪談全集」
なのです♪

機会があったら
もうちょっとくわしく
ご紹介できたらと思いますが、
今回はざっとご紹介しながら、
とくに好きなお話を
簡単にあげてみますね。


「M・R・ジェイムズ怪談全集 1 」

古書・古物・好古趣味が満載!
動く絵、魔女、夜だけ現れる謎の部屋、
聖堂騎士団の遺構、宝探しの暗号…
わくわく怖たのしい!

「アルベリックの貼雑帳」コレスキ!
「銅版画」コレスキ!ワクワクコワイ!
「秦皮の木」コレスキ!窓開けて寝れない!
「十三号室」コレスキ!フシギコワイ!
「笛吹かば現れん」コレスキ!白い布トラウマコワイ!
「薔薇園」コレスキ!庭コワイ!
「ハンフリーズ氏とその遺産」コレスキ!庭迷路イイ!


マグナス伯爵
怖い★★★★★

森のなかの霊廟に安置された、
神を冒涜する装飾が全面に施され、
いくつも錠のかかった異様な柩。
その最後の錠が、
冷たい大理石の床に落ちる音が、
森閑とした森に重く厳かに響く…
それが本当にこの耳に聞こえるようで、
怖いけれど大好きな話です。


人を呪わば
怖い(ハラハラ)★★★★★

これは文句なしに面白い!
密やかな呪いのなすりあいは、
絵的にはたいへん地味であるのに(笑)
意外やこれが
アクションシーンに負けない
エンターテイメントなのです!
高まる緊張感がすごい!
主人公と同じ立場だったら
いっそ発狂したいくらいの状況です。
何度読んでもハラハラします。

以上を含む15篇。


「M・R・ジェイムズ怪談全集 2 」

“ 1 ” よりも短めのお話がたくさん入ってます。
ちょこちょこと読みたいときにいい。
黒魔術・悪魔的なものの話が多め。

「ホイットミンスター寺院の僧房」サウルコワイ!
「寺院史夜話」コレスキ!懐かしコワイ!
「失踪綺譚」コレスキ!人形劇コワイ!
「猟奇への戒め」コレスキ!宝探しワクワクコワイ!
「隣の境界標」コレスキ!耳元で絶叫コワイ!
「丘からの眺め」コレスキ!不思議双眼鏡コワタノシイ!


呪われた人形の家
怖い★★★

過去の惨劇を夜毎繰り返すドールハウス。
“ 1 ”に収録の「銅版画」の亜種。
ジェイムズさん、この設定がお気にの模様。


怖い★★★★★

タイトルは鼠だけど、鼠にあらず。
この怪談集のなかにおいては、
いちばん誰にも起こり得そうな話。
それだけに短いながらもリアルに怖い。
うおおおこっち来るなああ(泣)


むせび泣く泉
怖い(後味悪い)★★★★★

イートン校ボーイズのお話。
やや説教くさいながらも、軽快に
ほのぼの展開していくかと思いきや…
うそこわいぃ…
しかも超バッドエンドっていう…

以上を含む21篇。


“ …読者が夕暮れのさびしい道を
一人歩いているとき、
あるいは真夜中に
消えかかった暖炉の前に
座しているようなときなどに、
私の作品のいずれかを思い出し、
心慰めてもらえれば、
本書をあらわした目的は
達せられるのである ”(序文より)


寒い冬の長い夜は、
暖かいお部屋で
英国の怪談を楽しんでみては
いかが?

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こんなイメージかな?
暖炉がないので手持ちのキャンドルで
がんばってみました💦💦


「M・R・ジェイムズ怪談全集 1・2 」
M・R・ジェイムズ / 紀田順一郎 訳
創元推理文庫


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