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はじめての「ユニコ」読了、感想。

はじめての
手塚治虫「ユニコ」を読了しました。
今の感想のあれこれを綴っておこうと
思います。

※感想にはネタバレを含みます。

********************


1日で読めちゃうかと思ったのに
意外に時間がかかったのは、
結局最初から最後までユニコは
ビーナスの命をうけた
西風ゼフィルスによって
時間の流れのはてへと運ばれ続け、
いつでもどこにいっても
ユニコは寂しいままで、
読んでてつらくなってしまったからです。

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ずっとこの調子です。もうやめてあげて…(泣)

そのたびにユニコがもう本当に
かわいそうな顔するし、
それだけに優しくしてくれたり
助けてくれる人(動物)が出てくるたびに
ウェーンてなってました(泣)
ネコチャンのチャオのとことか号泣だわ!


西風の精ゼフィルスも、
ちょっと待ってくれたり、
ないしょで家族に会わせてくれたりと
やさしいのに、
そこはそれで
定期的にやってきてきっちり運んでいくしな…

ビーナスの命令を
断ってはくれないのね…

まさかこんな重めな話だとは
思わなかった…

飛ばされた場所も、
いつもなにげに
根深くて深い問題が横たわっているしな。

ユニコがとにかくかわいくて
ルンルンしてる話だと
勝手に思いこんでいたもので、
まずそこのショックが大きかったです。

よく考えたら、
そんな漫画をこの巨匠が描くはずが
なかった…。

ゆうてこの絵から⬇️
そんなん想像できるか!(笑)

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ユニコーンは、
愛を原動力にする生き物なので、
愛をもらえないと力が出ない。

冒頭から

愛こそ永遠にくり返される歌
愛こそ生けるもののすべてが
歌いつづける歌
(中略)
深い愛 清らかな愛
そして空のように豊かな愛
あなたをつつむすべての愛が
永遠のメロディーをかなでますように…

という、
こんなすてきな言葉ではじまるので

最初は、
“普遍的な愛”…
時代も人種も性別も年齢も越えた
大きな、おおもとの愛…
そのものが
生き物の形になったのが
ユニコーンであるのかなと思っていて、
ユニコもそういう子なのかなと
思っていました。

けれど、
最初に出会った
アメリカ原住民の少年・ティピと、
白人の少女・メアリが恋におちたとき、

「ハダの色が違う者同士で恋をしても
不幸になるだけだから
これ以上はやめたほうがいいよ」

みたいなことをユニコが言い出したので、
面食らいました。

“愛”そのものの生き物だったら、
こんないち時代の価値観や常識で
ものを見たり考えたりしないはずだと
思ったからです。
むしろ応援するもんだと思っていました。
愛をくれた人を幸せにしたい生き物で、
ティピの幸せはそこにこそあるんだし。

でも頭から
「このままいくときみは不幸になる」
と言いきったもんで驚きました。

加えて、
ティピのユニコへの愛より
メアリへの愛のほうが日増しに大きく
なっていく(ようにユニコからは見える)
ことへの
不安を感じてもいるようであり、
嫉妬とまでは言わないまでも
それに近い行動をとったところを見て、
けっこう俗っぽい生き物なんだな、
ユニコーン…と思いました。

でも寂しいですしね、ユニコ。
やっとここで生きていける、
生きていこうと思ったところへ迎えがきて、
またいっさいがふりだしにもどって
自分の名前しか覚えてない状態で
見知らぬ世界に放り出されるのだから。

どんなりっぱな考えや精神を
もっている生き物だとしたって、
寂しいものは寂しいと心は感じるし、
やっと手に入れられたと思えたものに
必死にしがみつこうともするでしょう。

それはビーナスも同じで、
ことのおおもとは、
人間たちからの自分への愛が
地上でいちばんの美少女プシケへと
移ってしまったと思い込み、
それが寂しかったあまりのこと。
(ユニコにはとんだとばっちりですが…)

神様や崇高な生き物のような、
人間からしたら
人格も器量も完璧に見える者であっても、
同じように心を持っている以上、
やはり人間と同じに
ときには間違った考えや
行動を取ることもある。

とくにギリシャ神話の神様って、
人間くさいんですよね。

ほんとに、こんなやつらに
全能の力を持たせて大丈夫かって
いうくらい(笑)

このお話だけでそうやって誇張されて
描かれているわけではなく、
ギリシャ神話オリジナルの時点で
神々は俗っぽいを越えてなかなかに、
多分にクズいところがあるので(笑)、
あ、正しく描かれているんだな、
と思いました。


掲載されていたのが、
サンリオが出していた少女マンガ誌
だったということは
小さい女の子むけだったわけで、
いちばん夢みがちで潔癖な層にむけて
なかなかにこういう毒や闇を含んだものを
描いていたっていうのがさすがというか、
すごいなあと思います。

いくらユニコのかわいさに
目が行きがちであろうとも、
なんとなくなにかの棘が心に刺さり、
大きくなって読み返したとき、
その正体や意味がわかって
「あぁ、こういうことだったんだ…」
となったりしたのかな、
リアルタイムで読んでいた少女たちは。

それは楽しい体験ですねえ!
本の醍醐味ですね!

小さいときにであっておけると
そういうのが
よりたくさんあっていいですよね!


「ユニコ」でこの調子だったということは、
ユニコ同様に思っていたこの他の手塚作品も、
まずかわいいだけじゃない可能性が
高いってわけですね。
「リボンの騎士」とかも?
興味がわいてきました。

読んでみて良かったです。
イメージを裏切ってくれておもしろかった。

読む機会を与えてくれた、
かわしんに感謝です。


勝手なイメージでわかった気になっていたり、
食わず嫌いしてるものってたくさんあるなあ
と、反省。


などといろいろ思っても、

なんだかんだやっぱり…

ユニコかわいいよね!(一周まわってここ(笑))

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私のユニコベストかわいいショット(笑)


ユニコ / 手塚治虫
講談社・手塚治虫文庫全集

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