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上司とプライベートまで仲良くなる必要ある?

「…そういうことから、うちのグループでは、やっぱり上司と仲良くなっておくと良いんじゃないかな、となりました。例えば共通の趣味とかあれば、一緒にそれをやったり雑談で話したりできて仲良くなるのにいいと思います」
「発表ありがとう。誰か質問とかコメントはありますか?」
「はい。確かに、上司と仲良くなっておけたらいいなと思いました。ただ、そのためにプライベートの時間まで上司と過ごすのは、そこまでしなきゃいけないのかなと思ってしまいました」

上の会話は「権限のないうちからやりたいことをやれるようになるには?」というテーマで学生にディスカッションしてもらっていた時に出て来たものです。

「上司と仲良くなっておいた方がいいんじゃないか」「でもプライベートの話とか上司とあまりしたくないし、ましてや時間外まで職場の人たちと一緒にいたくない」という話は社会人の中でもよく出ます。しかし、プライベート抜きで上司と仲良くなることは可能なのでしょうか?

仕事内容や職場の性格にもよりますが、僕の結論としては、可能だと考えています。そのやり方は…大学外も含めた自分自身の仕事の経験や、社会人の知り合いの話を総合すると…仕事をしっかりやることです。

「え、仕事をしっかりやっているだけで仲良くなれるの?」と聞き返されてしまうかもしれませんね。「いくら仕事はきっちりしていてもそれ以外の付き合いが悪いと、ドライな人だと思われて仲良くはなれないんじゃ…」と。

でも、なれます。家が遠くて飲み会に全く付き合えなくとも、保育園のお迎えにダッシュしなきゃならないから雑談している時間が全くなくとも。

なお、プライベートの話をしたり、飲み会や趣味に楽しくつきあったりする効果を否定するわけではありません。それはそれで仲良くなる良い方法ですし、それを楽しめるなら何よりです。でも、それができない人でも仕事をしっかりやれば上司と仲良くなれます。

「どうやらその『仕事をしっかりやる』という時の『しっかり』がポイントみたいだな」と思われた方、ビンゴです。例えばこんな感じです。

あなたが作成していた会議資料の印刷を上司から頼まれました。PowerPointのスライドです。そこそこのページ数なので、4ページか6ページを1枚に印刷した方がコスト的に良さそうだと考えました。でも参加者はわりと年配者が多いので字があまり小さいときつそう。ざっとスライドを見渡すと6ページで1枚では字が小さくなりすぎそうで、4ページが良いようだと最初は思いました。しかしそこで上司が「資料があるとそちらばかり見ていて人の話を聞いていないのもいるんだよなあ。」と言っていたのを思い出しました。そうすると細かいことは読みにくいからあきらめてスクリーンの方を見てくれるように6ページで1枚の方が良いのかもしれない、と思い始めました。そこは上司に確認してみることにします。

僕だったらこういう部下とは、たとえ雑談とか飲み会はできていなくとも、仲良くなりたい、また仲良くなれると感じます。機械的にコピーするのでも、自分では考えずにどうしたらいいか上司に聞くのでもなく、どうしたらベストか考えてくれているからです。とりわけ大きいのは、上司が言っていたことを思い出して、当初の案から考えが変わってきている部分です。独りよがりや一般論ではなく、上司の気になっていることは何なのか、それに対してどうすると良いのかを考えてくれていることを感じるからです。

「この人は自分のことを考えてくれている」「自分の味方だ」「自分のことを分かってくれている」と思う時、人は相手と仲良くなれる、仲良くなりたい、と思いますよね。仕事の中だけでも、それは上のようにして可能ではないでしょうか。

もう一つ、「この人は自分のことを分かってくれている」「自分の味方だ」と典型的に思われる仕事の仕方として「言われるより先に動いている」ことが上げられるでしょう。ある程度仕事をしていると「次はこういうことが必要になる」と分かってきますよね。その中でもとりわけ遅れがちなものや先を急ぎたいものについて、上司が言い出す前に動いていたり「動きましょうか」と言ってくれたりする人は、上司にとってありがたいもの。好感を感じないはずありません。

管理職になるといろいろな仕事を抱えて忙し過ぎる状態になりがちです。夕方になってその日が期限だった仕事に気付くこともあります。そこで部下に急遽残業を頼み、ひんしゅくを買う上司も珍しくありません。それが逆に「そろそろこれの時期ですよね」と前もって言ってくれる部下がいたら、その人をとても信頼するでしょう。そして、その部下がプライベートと仕事は分けている人であっても、やりたいと思うことをやらせてあげたいと思うのではないでしょうか。それは、趣味の話や飲み会では一緒に盛り上がれるけれども、仕事ではそこまで頼りにならない部下以上ではないでしょうか。

(文責:早稲田大学グローバルエデュケーションセンター 高橋俊之)

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