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032 地元から海外に打って出る方法

私立大学の観光学部が、千葉県鴨川市から撤退します。

撤退あとは、どうなるんだろうか。

そこに、地域活性化に貢献する、こんな学校ができたらいいのにという妄想です。

引き続き、地域活性化を学ぶためのテーマを考えていきます。

ソトからの収入を得よう

まずは地域からのお金の流出を抑えること。

地域内の経済循環を増やすために、まずもって大事なことです。

次に考えることは、地域外から地域内へお金を流入させることです。

古来、変わらない戦略は、地域内の生産品を地域外へと販売して、収入を得ていく考え方です。

分かりやすい例であれば、地域の名産品を全国の消費者に販売していくことです。

ここからは、企業の戦略と似てきます。

つまり、「競合」が存在する中での市場の取り合いと市場の拡大です。

まず他の地域が「競合」として存在します。

千葉のキャベツと群馬のキャベツ、愛知のキャベツは、東京という大市場をターゲットにしのぎを削ります。

しかしキャベツそのもので差別化を図ることは難しいのも事実です。

そうすると、千葉や群馬のキャベツが品薄になる時期に、愛知のキャベツを出荷するといったように、時期をずらすことで直接競合しないようにするといった知恵も出てきます。

世界の視点で見れば、南半球の国で端境期になる時期に、日本からの生産品を輸出するといったことも考えられます。

いかに地域外の消費者に購入してもらうかの、知恵の勝負になってきます。

ここでは、地域の生産品を地域外へ販売していくための3つのポイントに触れておきます。

1.日本の都市部へ

まずは日本全国、特に消費者人口の多い都市部をターゲットに、地域の強みをぶつけていく戦略を練っていくことになります。

たとえば、地元のスーパーへ行って果物売り場を覗くと、冬から春にかけて真っ赤ないちごが棚を席巻しています。

しかしよく見てみると、銘柄がかなり絞り込まれていることに気付きます。

栃木県の「とちおとめ」、福岡県の「あまおう」と「さちのか」、佐賀県の「さがほのか」あたりが並んでいます。

関東のスーパーであれば、そこに静岡県の「紅ほっぺ」などが加わってくる感じでしょうか。

2018年度のいちごの収穫量は
①栃木県: 24,900トン(全国シェア15.4%)
②福岡県: 16,300トン(10.1%)
③熊本県: 11,200トン(6.9%)
④静岡県: 10,800トン(6.7%)
⑤長崎県: 10,200トン(6.3%)
⑥愛知県: 9,670トン(6.0%)
⑦茨城県: 9,150トン(5.7%)
⑧佐賀県: 7,910トン(4.9%)
となっていて、栃木県と福岡県の強さが際立っています。

佐賀県の「さがほのか」は有名なのに、佐賀県の収穫量は全国8位というところに疑問が出てきます。

実は熊本県の主力品種は、この「さがほのか」なのです。

スーパーで見かける「さがほのか」も、産地をよく見てみると熊本県ということもあるということです。

いちごは、全国区のブランディングが成功した例の一つですが、その地域の産出品を他地域でも知られたブランドに育て上げて、販売していくか。それが地域の強みを育てていくことの一つの方策となります。

またキャベツの例のように、都市部の市場で品薄になる時期を狙って出荷していくといった方策も考えられます。

競争相手と差別化する。

競争相手の間隙を狙う。

そして自分たちの地域の産品を選んでもらう。

知恵比べです。


2.協力して海外へ

まずは日本全国、特に消費者人口の多い都市部をターゲットに、地域の強みをぶつけていく戦略を練っていくことになります。

次は、ターゲットを海外へと向けることになります。

たとえばいちごを例に取ると、日本から輸出されるいちごは、2012年には100トンにも満たなかったものが、2017年には889トンにまで、ほぼ10倍に伸びています。

金額にして18億円のレベルです。

輸出先の主力は香港で、全体の8割強を占めています。

続いて台湾で1割強となっており、その他はシンガポールやタイとなっています。

いっぽう海外でもいちごは生産されています。

世界での生産量を見ると、
①中国: 377万トン(世界シェア41%)
②アメリカ: 143万トン(16%)
③メキシコ: 47万トン(5.2%)
④トルコ: 42万トン(4.5%)
・・・
⑨韓国: 19万トン(2.1%)
⑩日本: 16万トン(1.7%)
と並んでいます。

アジア各国をターゲットにすれば、当然のことながら中国や韓国からの輸出品との競争となります。

こうした競争相手とのボリュームゾーンの価格帯での勝負は、なかなか厳しいでしょう。

消費者に対して、ハイエンド層や上位ミドル層を狙ったブランディングで攻めていくといった戦略が重要となります。

3.100億円のビジネスへ

現在は18億円の輸出金額であるいちごを、100億円の輸出金額にまで成長させようとすれば、約5倍の成長が必要です。

つまり4,500トンの輸出量となり、日本全国の収穫量の3%程度を輸出することになります。

それだけの市場を海外でどのように開拓するのか、それぞれの国の嗜好とマッチさせられるのか、そうした戦略を立てて実行していくことが求められます。

取り組みの参考になる報告書が、九州経済産業局から2018年に出されています。
https://www.kyushu.meti.go.jp/report/180531/180531_report.pdf

その報告書の中で、「農産物輸出のステージ」という図があります。

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国策や補助金での成長から、徐々に民間ベースでの成長へとシフトしていきます。

この中で、戦略的に取り組むべきことが4点取り上げられています。
①『現地への過剰な供給がなされないように、輸出取引先を限定し、高い価値のまま、確かな数量を輸出する』ことで、ブランドを維持・向上させていく。
②『輸出向け品種の開発に加え、国内出荷の延長線上にある輸出ビジネスから脱却し、現地小売店の望む輸出パッケージの開発などを進めていく』ことで、海外の消費者に受け入れられる製品として育てる。
③『多様なチャネルを活用することで、多くのマーケットにリーチする可能性を検討する』ことで、より大きな市場を開拓する。
④『農産物輸出を支える産業の育成』することで、国内の生産者から海外の消費者までのサプライチェーン全体での優位性を構築する。

こうした取り組みは、一人の生産者だけで、一つの市町村だけで、対応できるレベルではありません。

より大きな地域全体での取り組みとして、産業を育てていくことが必要となるのです。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます。