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030 人は旅になにを求めるのか②

私立大学の観光学部が、千葉県鴨川市から撤退します。

撤退あとは、どうなるんだろうか。

そこに、地域活性化に貢献する、こんな学校ができたらいいのにという妄想です。

引き続き、地域活性化を学ぶためのテーマを考えていきます。


前回、そもそも論として、人はなぜ旅をするのかを考えてみました。

その上で、地域活性化に向けたビジネスとして旅を考えてみます。


ツーリズム1.0

その昔は、団体旅行が主流でした。

観光バスに乗って、観光ガイドの先導に従い数十人が一斉に移動して、観光名所を巡る。

夜はホテルの宴会場で、みんなが同じものを食事する。

次の朝、再び観光バスに乗って次の目的地へと移動していく。

ビジネスとして考えると、まず旅行の手配をするツアー会社にお金が落ちる。

そこから観光バスを運営する会社に、一部のお金が落ちる。

そして現地のホテルに、一部のお金が落ちる。

観光バスが立ち寄る現地のお店で、参加者の財布からいくばくかのお金が落ちる。

現地のホテルやお店にいくばくかのお金は落ちるものの、全体のお金をコントロールしているのはツアー会社になっています。

地域の経済への貢献という面では限定的ではありますが、それでも旅の大衆化には大きな貢献をしてきました。

ツーリズム1.0により、受け入れる地域の観光業やサービス業にも、旅行者自身にも、旅行のノウハウがたまっていくことで、次のステージへと繋がっていったのです。

ツーリズム2.0

人それぞれ、異なるニーズを持ちます。

同じ京都でも、訪れたいと考える寺は、人それぞれだったりします。

また泊まりたいホテルや旅館も、予算とにらめっこしつつも、自分のテイストにあったところを選びたいと考えます。

そのうち、JRは「そうだ 京都、行こう」といったキャンペーンを行い、一人ひとりの心に旅行欲を掻き立てます。

今度は個人として、これまで訪れたこともないような場所を選んで、京都を巡るようになります。

団体旅行では満足できず、個人旅行でいろいろな場所を、自分のニーズに合わせて計画し、旅をするようになったのです。

それまではツアー会社とのコネクションで、地域のビジネスも決まってしまいました。

しかし個人旅行が増えてくると、地域のホテルや旅館、それにお店も、それぞれに企業努力をして個人旅行客を集めることができれば、ビジネスとしても繁盛するように変化してきたのです。

農業にも似ています。農協に出荷して、どの農家のものか分からないまま、消費者に届けられていた時代。農家が直接、消費者に届けられるようになって、それぞれの農家の努力で消費者に選ばれる時代。旅行も、その地域が選ばれる、ホテルや旅館が選ばれる、そしてお店も選ばれる。そんな時代になっていったのです。

ツーリズム3.0

個人旅行が進むと、個人の多様なニーズに応える旅行が増えていきました。

前回触れたように、人が旅に求めるものには、3つの要素があると思っています。

Fun
広い意味で、楽しさがあるから、旅に出ます。だから、旅の準備をしている時から、心はうきうきしてしまいます。ずっと見たいと思っていた名所を巡ることができるので楽しい。好きな人と一緒にのんびりとすることができるので楽しい。本場の料理を食べられるので楽しい。(日本人にとっては、東京で食べるほうが美味しい可能性もありますが)アウトドアでキャンプをしながら、自然に触れられるので楽しい。旅をすることで、楽しい気分が味わえるから、また休みの日には旅に出たくなるわけです。
Love
趣味を極めるため、その地に行かなくてはならないから旅にでます。お気に入りの役者が出たドラマのロケ地を訪れたい。スキーをやるからには、滑ってみたい急斜面があるから行ってみたい。乗り鉄、撮り鉄、呑み鉄の違いはあれど、乗りたい(撮りたい)鉄道が走っていることに行きたい。愛する対象を追求するために、旅に出るのです。
Inspired
満点の星空を眺めていたい。雄大な景色の前で、ちっぽけな自分のことを忘れたい。その地の日常に浸ることで、これまでとは違った感覚を味わいたい。普段の日常とは異なる世界を旅することで、自分の中に新たな思考の流れを生み出すのも、旅の力なのです。


そうしたニーズに応えるために、観光地を巡るような周遊型から、体験型・交流型の旅行へと変化してきています。

どのようなものがあるか、見ていきます。

エコツーリズム

エコツーリズムとは、観光旅行者が、自然観光資源について知識を有する者から案内又は助言を受け、当該自然観光資源の保護に配慮しつつ当該自然観光資源と触れ合い、これに関する知識及び理解を深める活動であり、自然観光資源の適切な利用を促進し、新たな観光需要を掘り起こすとともに、持続可能な観光のあり方として重要なものである。
出典:観光立国推進基本計画 平成24年3月

グリーンツーリズム

グリーン・ツーリズムとは、農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動であり、農作業体験や農産物加工体験、農林漁家民泊、さらには食育などがこれに当たる。
出典:観光立国推進基本計画 平成24年3月

ヘルスツーリズム

ヘルスツーリズムとは、自然豊かな地域を訪れ、そこにある自然、温泉や身体に優しい料理を味わい、心身ともに癒され、健康を回復・増進・保持する新しい観光形態であり、医療に近いものからレジャーに近いものまで様々なものが含まれる。長期滞在型観光にもつながるツーリズムであり、地域や民間とも連携して取組を進める。
出典:観光立国推進基本計画 平成24年3月

スポーツツーリズム

スポーツツーリズムとは、スポーツを「観る」「する」ための旅行に加え、スポーツを「支える」人々との交流や、旅行者が旅先で多様なスポーツを体験できる環境の整備も含むものであり、国内旅行需要の喚起やゴルフ、スキー等スポーツへの指向性の高い外国人旅行者の訪日促進に寄与するものである。
出典:観光立国推進基本計画 平成24年3月

フードツーリズム

その地域ならではの食・食文化を、その地域で楽しむことを目的としたツーリズムのことです。土地を訪れ、現地の人々と交流し、その土地ならではの食をいただく。旬の時期にしか出会えない「食材」、その土地だからこそ味わえる「食材の鮮度」、食体験の場として地域の景観や自然をも体感しながら脱日常を経験することができます。
出典:観光庁 https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kankochi/theme_betsu.html

コンテンツツーリズム

コンテンツツーリズムとは、地域に「コンテンツを通じて醸成された地域固有のイメージ」としての「物語性」「テーマ性」を付加し、その物語性を観光資源として活用することである。
出典:コンテンツツーリズム学会 https://contentstourism.com/about/purpose/

アドベンチャーツーリズム

アドベンチャーツーリズム(以下、AT)とは「アクティビティ、自然、文化体験の3要素のうち、2つ以上で構成される旅行」をいいます
出典:日本アドベンチャーツーリズム協会 https://atjapan.org/adventure-tourism


人々のFun、Love、Inspiredという3つの要素を満たしつつ、いっぽうで地球環境の持続可能性という側面も満たす。

サステイナブルツーリズムということが、こうした旅行に共通する考え方でもあります。


個人の、それも国内外の個人の多様なニーズに、どのように応えていくか。

地域の知恵と工夫が試される時代なんだと感じます。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。