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11年目の6.14を越えて【真のエース潮崎豪】〜プロレスリングノア

プロレスファンにとって、日付はとても大事な言葉にもなります。1.4新日本ドーム大会、10.9新日本対Uインターなど日付自体に意味が込められるようなことも、しばしば発生します。

その意味でノアファンにとっては6.13という言葉は、おそらく永遠に忘れられない、忘れてはいけない日付だと言えるでしょう。そうです、団体創設者の三沢光晴が亡くなった日、それこそが2009年6月13日です。

本来ノアファンにとっては、その翌日6.14は歓喜の日になるはずでした。未来のエース潮崎のGHCヘビー級王座初戴冠の日です。潮崎はノア旗揚げ後に入団しました。恵まれた体格と端正なマスク。アマチュア格闘技経験こそありませんでしたが、ノアファンの誰もが潮崎のことを「未来のエース」という目で彼を見つめていたでしょう。

そうしたファンの期待をしっかり受け止めつつ、潮崎は順調にキャリアを重ねて行きました。絶対王者小橋の弟子としてキャリアをスタートし、その後は海外遠征にも出発。小橋の癌による欠場など団体として厳しい状態ではありましたが、潮崎はノアファンの希望でした。そして潮崎がGHCヘビー級王者になった時、みんなから歓喜の祝福があると確信していました。

しかし2009年6月14日、待望のGHCヘビー級王座を初戴冠した潮崎。もちろん祝福の声はありました。しかしその中には悲しみの涙も含まれていたかもしれません。前日三沢光晴を失ったファンは、この日もまだ深い悲しみの中にいました。待ちに待った未来のエースがノアの頂点に立ったという喜びに100%浸ることは、私含めて出来ませんでした。

思えば潮崎はこの日から「重たい荷物」を背負ってしまったのかもしれません。どれほど激しい試合をしても「三沢の後継者」もしくは「小橋の後継者」として彼を評価する人がいました。当時の年齢からすれば潮崎は「未来のエース」であり、試行錯誤しながらキャリアを重ねることが許されるはずでした。しかしあの日彼に背負わせてしまった荷物は彼を長い間苦しめていたかもしれません。口の悪いファンが潮崎の技だけを見て「小橋の劣化コピー」と罵ることもありました。

もちろんそうした声が原因ではありませんが、潮崎がノアを退団し、全日本プロレスに移籍したのも「重たい荷物」の影響があったかもしれません。全日本に移籍した潮崎は、諏訪魔というライバルに恵まれ、レスラーとして大きな成長を果たしました。しかし経営不振の全日本から、悪く言えば逃げるように退団し、再びノアのリングに戻ってきました。

潮崎が帰還した時のノアは鈴木軍に侵略された状態でした。そんなときに「かつてノアの希望だった」潮崎が戻ってきた。鈴木軍からノアを守ると宣言した。本来であれば拍手でノアファンに受け入れられるところでした。しかし少なくとも私は若干冷めた気持ちでいました。「苦しいときにノアからいなくなり、全日本が苦しくなったら今度はノアに出戻りか?」という感情が私にはありました。

実際ノアに帰還後の潮崎は精彩を欠いていた部分があったと思います。今ひとつ波に乗り切れない、観客を掴みきれないという感じですね。そしてそうした観客の空気を受け止めてしまったのか、潮崎自身も鈴木軍撤退後は積極的に最前線には出ませんでした。清宮凱旋帰国後は清宮にタッグパートナーとして、良く言えば清宮のカバー、悪く言えば一歩引いた印象を受けました。

このまま最前線からフェードアウトするのか?そう考えていた頃、潮崎はある選手とタッグを組みます。その名は中嶋勝彦。二人はAXIZを結成し、2019年のタッグ戦線の中心に立ちました。そして2019年末に中嶋とのシングルに勝利した潮崎は、ついに時の王者清宮への挑戦を表明します。

若手とはいえ既に数回のGHCヘビー級王座を防衛してきた清宮。堂々たる戦いで、2019年ノアの中心に立ってきました。2020年ノアの1.4。その清宮とのGHCヘビー戦で、潮崎は新しいコスチュームで臨みました。通常の黒から大きく変化し、白を使いつつも緑を込めた戦闘服。それはまさしく潮崎が三沢を背負っているかのようでした。

潮崎はかつて「三沢光晴」という重荷に翻弄されていました。そして私も含めてノアファンはそれが「未来のエース」には重すぎる荷物だと、誰も気が付きませんでした。枷を外そうともがき苦しんだ潮崎でしたが、この大一番で「己の意思で」三沢を背負いました。吹っ切れた潮崎は三沢を彷彿とさせる受けの凄みを見せつつも、自分らしさを表現しました。そしてその勢いで清宮を降し、GHCヘビー級王者に返り咲きました。

「三沢や小橋のコピーではない」、「オンリーワンの潮崎豪」として。全観客から笑顔で祝福され、ノアの頂点に立つ潮崎。それはみんなが待ち望んでいた「未来のエースが真のエースになる姿」でした。

潮崎はその後も藤田和之を相手に歴史に残る無観客試合を制し、防衛に成功しました。

その潮崎に挑戦を宣言したのは齋藤彰俊。三沢光晴最後の対戦相手だった齋藤は潮崎同様、いやそれ以上の重荷を背負ったレスラーです。彼らが戦うのは6.14。あの悲劇の翌日。奇しくも潮崎が本来歓喜で迎えられるはずたったあの試合があった日です。

https://www.noah.co.jp/news/1383/


現在の齋藤は最前線からは距離を置いていますが、先のグローバルタッグリーグでは潮崎から直接フォールを奪っています。何より6.14にノアのリングで潮崎と戦うという意味では、他の誰よりも重みを知っており、気迫と覚悟を持って潮崎に向かってくるでしょう。

その齋藤相手に潮崎はどんな試合をするのか?もちろんわくわくする展開も期待しますが、私は「みんなが涙無しの100%笑顔」で終わることができる試合を期待しています。潮崎と齋藤の試合だからこそ、きっとその期待に応えてくれると信じています。11年目の6.14をみんなの笑顔で迎えましょう!

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https://twitter.com/noah_ghc

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