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N-1 VICTORY2022【DAY3】拳王VS田中将斗〜己の現在地〜

※トップ画像はWRESTLE UNIVERSEのキャプチャです。

プロレスリング・ノアのN-1 VICTORYも3日目。この日の私的注目カードは拳王VS田中将斗です。拳王が初めてグローバルリーグ(現N-1)を制しGHCヘビー級王座に到達した2017年。この年拳王は田中を標的にしていました。ZERO1の火祭りに参戦するなどして田中を追いかけ。彼を超えることでノアの頂点に結びつけました。拳王にとっては乗り越えた壁。田中にとっては過去敗れたままになっている相手。そうした相手と戦うことで両者の現在地を推し量るカードである。それが私の印象でした。

試合は序盤こそ静かなグラウンド勝負となりますが、すぐに激しい打撃戦が始まります。拳王がキックを放てば田中もエルボーで迎え撃つ。その中でも田中はスタンドでのエルボーだけでなく、スピアータックルやロープの反動を利用したエルボー等リングを立体的に使用して拳王を攻めます。そして結果的にこの試合の鍵を握ったシーンでも田中のクレバーさが光ります。そのシーンとは?エプロンの攻防の後にリングインしようとした拳王。拳王の左脚がロープを跨いだその刹那。田中はキックで間を取りドラゴンスクリューを敢行します。ロープに挟まれて受身の撮れない状況で左脚をねじ切られた拳王。さらに田中はその左脚にエルボーで追撃します。

両者リングイン後も田中は拳王の左脚を攻め続けました。拳王もキックで反撃しますがそのたびに田中に攻撃された左足を気にする仕草を見せます。普段であれば打撃で一気呵成を見せる拳王も、その姿をなかなか見せることができません。拳王のすきを突いた田中の戦略性が拳王にペースを握らせません。

しかし拳王も現GHCヘビー級王者。田中に裏拳からのジャーマンスープレックスを喰らえばドラゴンスープレックス→蹴暴で反撃。さらにコーナーに登ってのPFS(パーフェクトフットスタンプ)につなげます。これは田中が反転しミートには至らず。ここから田中がダイヤモンドダスト→トップロープに上がっての雪崩式ブレンバスターで反撃。リング上でブレンバスターを狙う田中に拳王がファルコンアローでお返し。それを田中がスライディングDで。さらに拳王が田中の側頭部へキック。目まぐるしく攻守が入れ替わる攻防が続きます。

試合の結末に至る流れもまさにハイスピード。試合終盤に拳王ハイキックで田中からダウンを奪い再度PFSを敢行。背面の田中に両足を突き刺し。仰向けになった田中に止めの一撃を狙う拳王。これを反転してかわす田中。着地した拳王の右足をとりダウンを奪うと背後からスライディングD。そして垂直落下式ブレンバスターで拳王をマットに突き刺します。ここまでは耐えた拳王でしたが止めに繰り出した田中の正調スライディングDには耐えきれず。田中が拳王からフォール勝ちを収めました。

過去は挑む者と挑まれる者だった両者。しかし今回はお互いがフラッグシップタイトルホルダー同士であり、対等な形での戦いでした。相手の攻撃を受け切りつつも要所ではかわす。そして相手の一瞬のすきを突く戦略性。田中が見せた老獪さは対等な立場だからこそ出た姿。必死に勝利を目指す姿だと私は感じました。拳王と田中の第二章が始まった試合。それがこの日の戦いだったのかもしれません。



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