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マサ北宮&稲村愛輝VS鈴木秀樹&ティモシーサッチャー〜同じ目線で戦うことの意味

トップ画像は@shun064さんの作品です。

あなたは自分よりキャリアの浅い人物に対して「本気で」「相手と同じ目線で」接することはできますか?良い意味でも悪い意味でも「キャリアの差によって目線が変わる」。これは往々にしてあることです。しかし「キャリアが浅い相手だからこっちがケアしなければ」。そうした視点を上長が持ち続けていたら?恐らくキャリアの浅い人間は自分の力を伸ばしきれないでしょう。人は程度の差はあれ「責任を負う状況を数多くこなすこと」で成長します。

プロレスリング・ノアにとって稲村愛輝という存在は清宮海斗とは違った意味でノアの未来です。彼は大型のパワーファイターかつ瞬間的なスピードも持ち合わせる「誰が見てもプロレスラーだとわかる空気」を身に纏う選手です。しかしそうした素質がある一方でブレイクに至るきっかけが掴めないという状況はあります。

若い選手にどこまで責任を負わせるか?これに意見に対する明確な答えはだせません。しかし「責任を負わせる」とまで至らなくとも。相手と同じ目線で本気でぶつかる。相手を若手扱いせず一人前の選手として接する。それはできることであり、キャリアの長い選手がしなければならないことなのかもしれません。

鈴木秀樹が今のノアで行っているのはこれらの行動です。稲村や岡田欣也に対して「彼らは強いです」「だからこっちもしっかり勝利を狙って闘います」と語り。7.16日本武道館でのGHCタッグ王座決定戦でも。過去の因縁や自分の成長について語ろうとする稲村を遮り。「そんなことはどうでもいい」「結果を出すか否かそれだけだ」「これは発表会でじゃない」。調印式で鈴木はプロとしてのシンプルな思想を稲村に対して突きつけました。言い換えればキャリアで劣る稲村に対して上から目線ではなく対等な立場で戦うという意思表明だったかもしれません。

迎えた7.16の日本武道館決戦。マサ北宮と稲村はTHE TOUGHとしてタッグを組んでいた経験を活かしたパワーファイトを選択するかと思いきや。鈴木とティモシーサッチャーのグラウンド勝負の領域に踏み込みます。この領域では鈴木サッチャー組に一日の長はありますが、マサ北宮稲村組はガッチリと彼らに食い下がります。その上で組み付く相手をパワーで持ち上げるといった形で流れを変えようとする稲村。相手に負けないグラウンドテクニックを見せるマサ北宮。彼らの色を試合の中でしっかりと示しました。鈴木のツームストンパイルドライバーとドラゴンスープレックスを受けながらも稲村は必殺のダブルアームスープレックスを耐え。無双を狙い鈴木を担ぎ上げます。場外ではマサ北宮がサッチャーをガッチリホールド。稲村勝利への舞台は整ったかに見えました。しかし稲村のホールドを振り払った鈴木が一瞬のスキを突いて稲村をスリーパーホールドに捉えます。ギブアップの一言こそ発しませんでしたが、稲村は無念のレフェリーストップ。勝者の鈴木サッチャー組が新王者として戴冠しました。

試合後に稲村に何か言葉をかける鈴木。それに怒り鈴木に食って掛かる稲村。穏やかな気性の稲村がここまで悔しさを顕にするのは珍しいシーンでした。そしてそこまで鈴木が稲村を煽ること。それは決して上から目線で接しているからではない。相手が下の立場であれば勝利して当然という振る舞いになりますが、鈴木からはそうした匂いは一切させませんでした。

稲村や岡田の壁としての役目はノア内の選手であってほしい。私はそんな風に思っていました。しかし団体内の選手であれば、彼らが新弟子の頃の姿も見ており、良くも悪くもキャリアの差が頭によぎってしまうでしょう。しかし鈴木や藤田和之であれば。稲村岡田の新弟子時代は知りません。一人の選手として純粋に、そして対等に捉えることができる。そんな考え方もできるのかもしれません。外から来た選手だからこそ担える役割。そうしたものはきっとあるはずです。

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