親近感を高めることと希少性を高めるバランスの難しさ
コロナウイルスの影響で春のビッグマッチが中止となったプロレスリング・ノア。そんななかファンの文体ロスを埋めるために公式チャンネルで色々面白い取り組みをしています。
ちょうど出張中で暇を持て余した関係で思わず見入ってしまいました。プロレスラーが普段どんなトレーニングをしているかは伝聞でしか見聞きしたことないので、とても新鮮な印象。しかし今回の動画を新鮮に感じたのは多分それだけではありません。かんたんに言えばプロレスラーの凄さを自分に置き換えて体感できたからです。
今回中嶋は一人でトレーニングをしている動画をあげていました(厳密には岡田も登場していましたが、今回の岡田選手はあくまでもトレーニングパートナー的な立ち位置だったので)。面白かったのが縄跳びとアニマル(動物走り)です。縄跳びは単純に5分間話しながら飛び続けるという割と地味な動画。アニマルは動物の動きを形態模写しての素早い動き。どちらも単純な動画です。具体的に言いうと、前者は「会話しながら息を切らさず縄跳びをする」。後者は「手足を連動しながら素早い動きで動く」というものです。
ただ実際にこれらを素人がやると無茶苦茶しんどいとわかります。縄跳びしながら普通に会話したら息も絶え絶えですし、アニマル(これはぜひ実際に見てください)は手足を連動させて素早く動くという中々難しいものです。
おそらくこれをプロレスラー同士でやってもあまり凄さが伝わらなかったと思います。今回は素人がやったらかなり厳しいであろうトレーニングをプロレスラーが一人でやったからより凄さが際立ったと思います。トレーニングパートナーが最初から一緒にやっていたら、お互いが普通にこなせてしまうので凄さの比較が伝わりずらいです。あえて中嶋選手が一人でやっていたからこそ「これ自分でやったら全然できない=プロレスラーすごい」というイメージが伝わったと思います。
プロレス以外でプロレスラーの凄さを伝える且つファンに親近感を与えるということはとても大事です。プロレスもエンターテイメントである以上、コンテンツの価値を高める必要がありますし、その方法が単純に試合だけだとどうしても手詰まりになります。様々なチャンネルでプロレスラーの魅力を伝えることはファンの拡大にも繋がります。ちなみに機会があれば私はこんな動画が見たいです。
しかしここまで書いておいてなんですが、極度に親近感を高めすぎてもよくはありません。どこでも、どんなチャンネルでもプロレスラーに接触できて、パーソナリティが伝わると、極端な話「試合見なくても良いじゃん」「別にこのチャンネルじゃなくても他のチャンネルで見ればいいや」となってしまいます。
わかり易い例で長州力のツイッターを挙げたいです。長州力といえば現役時代はとにかくピリピリした空気を出す、取材も特定のメディアが中心、思っていることを中々ファンにアピールしないといった印象が強かったです。しかし引退後に開設したツイッターでは今までの印象がガラリと変わりました。ツイッターでは長州力の個人的な意見などをどんどん発信し、プロレスファン以外からも注目を浴びています。長州力が現役時代からざっくばらんに自分のことを発信していたらここまでツイッターが話題になることはなかったでしょう。現役時代とのギャップが極度だったからこそここまで話題になったと思います。
つまりあまりにもプロレスラーの内面を発信しすぎても希少性が薄れてしまい、必ずしも良い結果につながらないと私は考えます。ファンに親近感を与えつつも、ある程度の一線は越えずにバランスをとる。これは中々難しいところです。メディアが限られていた時代であればそこまで意識する必要はなかったでしょう。簡単に世間に発信できる現代だからこそ、このバランスが非常に大事であり、難しい問題をはらんでいると言えるでしょう。プロレス団体に限らずこのあたりのさじ加減は中の人を大いに悩ませているのではないでしょうか?
プロレスリング・ノアの最新情報はこちら
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?