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宮原健斗〜50年目の全日本プロレスのバトンを受けた者〜前編

2022年の全日本プロレスはどんな一年だったのか?年末恒例の最強タッグの王者が決まる前にそれを語ることは一見おかしいことかもしれない。最強タッグといえば全日本の看板シリーズであり。もちろんその王者に権威はある。それはプロレスファンの多くが理解していることだ。

しかしプロレス界においてそうした「既存の権威を超越する存在」はしばしば生まれる。いわゆる過去のレジェンドと言われる選手がそうだろう。

彼らはいずれも「ベルト持っていること」や「リーグ戦に勝利したこと」によって価値を得ているわけではない。むしろそうした権威は彼らの存在の後に存在する。彼ら自身の存在感が既存の権威を上回っているのだ。

現在の全日本プロレスにおいてそうした存在はいるのか?そしてそれは誰なのか?ファンや関係者や選手。それこそ満場一致で一人の選手の名前が挙がるだろう。宮原健斗という名前が。

2022年の宮原健斗は「ベルトが彼を追いかける」という状態だった。2022年1月。当時の三冠王者だったジェイク・リーが負傷によりベルト返上。諏訪魔、本田龍輝、芦野祥太郎、宮原健斗の4名で王座決定トーナメントが開催された。20年の王座以降はタッグ戦線に軸足を置いていた宮原。おそらくこのときもジェイクの負傷がなければチャンスは生まれなかっただろう。スクランブルとはいえ戴冠の機会がきた。このトーナメントを制した宮原。まさにベルトが宮原を追いかけてきた状態である。

三冠王者として2022年のスタートを切った宮原はアブドーラ小林・石川修司・青柳優馬・T-Hawkの挑戦を退けた。アブドーラ小林との異次元対決。石川との最高VS最強。史上最年少CC王者青柳の勢い。外敵T-Hawk。それぞれの戦いにテーマがあり、いずれも高水準の試合。宮原は19年〜20年で言われた「宮原の三冠戦に外れなし」。それを更にスケールアップさせた防衛戦を積み上げた。

そして6月の大田区総合体育館大会。ここで前年10月にフルタイムドローの相手だったジェイクとの完全決着戦が行われた。煽りVの言葉を借りれば「己を信じ続けた者宮原」と「己を問い続けた者ジェイク」の死闘。両者の対戦の歴史に一つの決着がついた。勝者はジェイク。スーパースターである宮原とは異なり。迷い苦悩する。一般人が共感しやすいジェイクが勝利する。それは時代の変化を意味したようにも思われた。宮原の時代は一旦ここで終わるのか?宮原単独エースからジェイクとの二頭体制になるのか?私もこの時はそう思った。いやいや。結論から言えば宮原の時代は終わらなかった。

続く

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