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手ごね寿司の向こう側にはずっとそこにニコニコ、ソワソワ笑っている義父がいる。

戻した後のイメージの目算を誤り、作り過ぎてしまった大量の切り干し大根煮を目の前に途方に暮れる、、、そんな事が、女の人生には、一度や二度はあるものです。

はて、どうするか。

冷凍庫には大量のふるさと納税の返礼品で頂いたカツオのたたき。

今日明日でケリをつけなければならない三つ葉。

そうだ、手ごね寿司!
なんか、かんぴょう煮って切干大根煮と大差ない気が?

…つう事で、卵を焼いて、三つ葉を茹でて、カツオを醤油と味醂とワサビでつけて、酢飯にごまとあえて作ってみました。

思ったより切干大根の存在感はあまり無かったようで、切干大根がどうも苦手な長女が感じなくて美味しいよ!とのこと。
よかったのか、わるかったのか…?
…出しゃばるくらいなら、ま、いっか。
名脇役と評しておきましょう。

三つ葉の茹でたのが、彩りと風味で中々良い仕事をしてくれるんです。


カツオと切り干し大根の手ごね寿司
わかめと湯葉のお吸い物と共に。
旦那と娘は汁物を最後まで飲みません。
具だけ食べる。
高血圧家系の鉄則らしい。



味にうるさかった亡くなった義父が私が作った料理で唯一、「これうまいよ」と言ってくれたのが、このミツバを散らした手ごね寿司でした。(ちゃんと干瓢と椎茸を煮た正規版!)
長女の初雛のお祝いの日、ニコニコ、ソワソワ、嬉しそうに寿司桶からお茶碗によそってくれた姿が懐かしくてふと🥲

とにかく厳しい人で亭主関白を絵に描いたような義父と会うと、わたしはいつも緊張していた。
適当で気ままな我が実家とは正反対の緊張感漂う環境に、行くのも億劫な時期もあった。
けれど、子供らが小さい頃には、毎年毎年、夏には一週間、正月には2日間、ささやかな嫁の勤めを果たしに行った。

亡くなってからしばらく経って、ふと義父とのあの当時のぎこちないやりとりが懐かしくて可笑しくて、もっともっと味わっておけばよかったと後悔した。

義父は、「私が美味しいものを食べてる時が1番幸せです」と言った言葉を覚えていたのか、何かにつけて美味しいものをそれはそれはたくさん食べさせてくれた。

3万円のキャビア、私以外誰も食べない大量の甘エビ、穴子と蛤が入ったうどんすき、ひつまぶし、すきやき、鱧の湯引きなどなど…

不器用だけど、嫁の私にもやさしかった義父。

私の作る手ごね寿司の向こう側には、ずっとそこにニコニコ、ソワソワ笑っている義父がいる。

by金曜日の転寝

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