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私がおじさんになっても


あのときキスしておけば5話と6話の感想です。

男女の入れ替わりものや、
ライトなBL作品の二番煎じように感じながらも
見始めた「あのキス」。
回を追うごとに面白くなってきて、
むしろ新しい。

松坂桃李さんと井浦新さんをはじめ、キャストさんの可愛いさが楽しい、愛がたっぷりのドラマでした。

売れっ子漫画家の巴(ともえ・麻生久美子)と、たまたま飛行機の隣席に座っていた田中まさお(井浦新)は飛行機の墜落事故にまきこまれ、
目が覚めたときには入れ替わってしまっていた。
ただの入れ替わりではないのは、
巴が死んでしまい、肉体はもう火葬されてしまったこと。
巴が元の姿に戻ることはないのです。

巴といい仲になりつつあった、主人公の桃地(松坂桃李)は、
見た目がおじさんになってしまった巴をどう受け入れるか悩みます。

巴の元夫で、離婚をどこか心の隅で後悔していた、担当編集者の高見沢(三浦翔平)は、おじさんになってしまっても、死んでしまった巴が帰ってきたことを喜び、
おじさんの巴と復縁することを望みます。
器は違っていても、
魂を愛せることができるのは、巴との過去がたくさんあるから。

でも出会ったばかりで、恋愛経験の乏しい桃地には、おじさんの巴を受け入れるのに時間がかかる、、、
無理もないですね。

巴が事故で亡くなる前、まだ女性の姿であったころ、二人はデートします。
いい感じのところで、桃地は恋愛経験の乏しさから、巴からのキスを拒んでしまいました。

あぁ、こんなことなら
あのときキスしておけば、、、と思う桃地。

巴の漫画家としての情熱や、
奔放のようで包容力のある懐の深さ、
積極的であるけれど、
桃地の気持ちも大切にできる
大人の女性の気心に触れるたび、
桃地はどんどん巴に惹かれるのだけど、
姿はやっぱりおじさん。

キスを迫るおじさんの巴、
好きだけど、見た目はおじさん。

やっぱり思ってしまう、
あぁ、あのときキスしておけば、と。

全てここに辿り着く。
この題名、秀逸すぎ。

見所は井浦新さんの完璧な憑依っぷりの
すごさ。

麻生久美子さんの可愛い大人の女であることが魅力の巴、
井浦新さんの巴とのリンクが完璧すぎて、
もはやどっちだかわからなくなる。

というか、
もうどっちでも良くなる。どっちも巴。


元夫、高見沢を演じる三浦翔平さんも面白い。
ツーブロックにホワイトジーンズが似合う爽やかイケメンって、
私には関係ない遠い存在だと思っていたけれど、
巴を振り向かせるためにひたむきにアピールし、奮闘する、様子のおかしいイケメンは面白ろ可笑しくて、これを機に好きな俳優さんになりました。

主人公の冴えないスーパー店員の桃地、奥手でポンコツ、巴に振り回されるけど、芯が強く優しいイメージは松坂桃李さんがぴったりです。

いつも不思議なプリントのパーカーを着てる。どこで買ってるの?桃地。


「セイカの空」という超人気漫画を連載執筆してた巴は、
出版社が作者の死亡を発表してしまったけれど、
おじさんの姿のまま漫画を描き、
連載を続けようとします。

漫画への情熱や、世の中へ作品を送り出していることの責任を全しようとするのは、巴の本能のようなものでしょう。

巴の魂だけが生き残れたのは、巴のクリエイターとしての執念なのかもしれない。

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桃地とちゃんと恋人にはなれたけど、鏡を見ればやっぱりおじさん。。。

自分の姿がおじさんになってしまったけど、それほど悲観的でない巴。
漫画を描けること、大好きな桃地といられること、やっぱり生きてることは素晴らしいと思えるのは、一度死んでしまったからだなぁと、
巴を通して我が身の日々の愛おしさを感じます。

身体を借りてしまったことを、田中まさおの家族に謝り、漫画の印税で家族を支えると家族に約束する巴、カッコいい。

6話の最後、
おじさんの巴をようやく完全に受け入れ、
キスしようとする桃地に
巴のはずのおじさんが言います。
「誰だ、お前?」

桃地と一緒にびっくりとしましたよ。
田中まさお、復活。
あーそうだ、元は男だったんだ、、
こんな声だった?
そうか、今まで頭の中で女の巴の声に勝手に変換されていたのか。

巴の魂が田中の身体をかりていられるのは、どうやらずっとではないみたいです。

コメディでたくさん笑えるけれど、
あのときキスしておけば、と桃地が後悔する結末を予測させる、桃地と巴はおそらく結ばれない物語。

魂とか、性別とか、過去とか、経験とか、創ることとか、ひとつひとつをちゃんと掘り下げている丁寧なストーリーで、あのドラマすごく良かったなぁと後になっても思い出せる作品が一つ増えました。


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