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図書館に行くと「もう少し生きよう」と思える(古本屋も)

図書館に行くと「もう少し生きよう」と思える。
古本屋に行っても同じようなことを思う。

こんにちは。木星堂の海です。
普段は文学フリマで売り子をしたり、
文学フリマで売る本の広報をしたりしている私だが、
一念発起して、今回の創作大賞2024に応募してみようかと思う。
何にもならない話だけれど、お楽しみいただけたら幸いです。


私はいま、色々あって病気療養中だ。
親のすねをボリボリかじりながら生活している。
親のすねってね、酒のつまみにちょうどいいんですよ。
マヨネーズと七味をかけたらもう絶品!
親に読まれたら、酒瓶でフルスイングされそうなひとことである。

私は今、お金がないので細々と、でも毎日のんびりと生活をしている。
これがタイトルの「図書館」や「古本屋」につながってゆく。
(もちろん、本は定価で買うのがいいに決まっている。でも……。
詳しいことは後述する。)


話は変わるが、私は本が好きである。
特段読むスピードが速いわけでも、読んできた作品数が多いわけでもないが、
物語に一喜一憂することで生かされてきた身である。

そんな私であるが、療養前や、療養開始直後は
本を読む心の余裕がなかった。
本を読みたい気持ちだけが先走りして、
積読が年単位で増えてゆく始末。

だが、療養をはじめて十何か月目、ようやく少しずつ
本が読めるようになってきたのである!
わーいわーい!!
あまりに嬉しすぎて、どこにいくのにも本を持っていく始末である。


また話は変わるが、
私は、未来の楽しみな予定に向かって
それを楽しむまでは生きよう! と思う癖がある。
例えば、3か月先に好きな歌手のライブがあるとする。
すると「とりあえず3か月は生きよう!」と思うタイプ。

鼻っ面に人参をぶらさげ続けてもう2〇年。

未来の楽しみに生きる力をもらって、少しずつ少しずつ
厚かましい面で走り続けてきた馬の結果がコレだ。


この「本が読めるようになってきた」今の私の状態と
「未来の楽しみを糧にどうにか生き延びる」性質が
合わさった結果、
図書館や古本屋に行くと「もう少し生きよう」と思えるようになったのである。

なぜなら、図書館や古本屋には、私がまだ読んでいない物語が、無料やびっくりすような安価で、私の目の前にずらっと並んでいるからだ。

最初の方にサラッと書いたが、今の私はずばり、金欠だ。
貯金は、療養前の引っ越し代と学費に使ってしまった。
親のおかげで毎日暮らす分には困らないが
日々生活するにあたり、あまり羽振りのいい真似はできない。
書籍代についても同じことが言える。

もちろん、本は、本屋で定価で買うのが一番だとわかっている。
そうしないと作者さんに印税も入らない。
でもどうしてもそうはいかない事情があるとき、
人は図書館や古本屋を使うのである。
私も「ごめんなさい! 将来生活が安定したら定価で買いなおしますから!!」と心の中で叫びながら、図書館や古本屋を利用している。


療養をはじめて数か月経った時、ふと思い立って私は近所の古本屋に行った。
店内を眺めるうちに、私は、なぜだか自分の心に力がみなぎってくるのを感じていた。
なんでだろう? 本に囲まれているからかな?と思ったが
よくよく考えてみると、
これは
「療養中で将来も不安でお金もない、こんな私だけど、
ここには100円(税を入れると110円)で読める、まだ私の知らない物語がこんなにあるのだ……!」
という高揚であった。

なんというか、私にとって
「110円でも本が読める」のは、私にとって何よりものセーフティーネットのように思えた。
どんな状態になっても、本は私のそばにいてくれる!
という安心感がみなぎってきたのだ。


療養開始からさらに数か月が経った時、またふと思い立って、私は図書館に行った。
久しぶりの図書館は、古本屋と同じか、それ以上の驚きを私にもたらした。

どこを向いても、私が読んだことのない本があって
どの本も、私が手に取って借りることができる!
詩集も、小説も、手芸の本も、全部私が今すぐに読むことができる本なのだ。

自分の読書スピード的に、そんなに読めるはずもないのに、
その日、私は一抱えの本を借りて帰ってきてしまった。

どんな境遇の人にも、等しく本と図書館は門戸を開いている。
私は改めて本と、図書館というシステムに感謝をした。
私にとってのセーフティーネットがまた一つ増えた瞬間であった。


このようにして図書館や古本屋に行くと、私は、高揚の後に
「こんなに読みたい物語があって、それが実際に読めるのだったら、
もう少し生きてみてもいいかもな」

と思う。
未来の私がもしも貧乏でも、本が読めるなら、心だけはきっと裕福であるだろう。

未来の楽しみが一気にできた気分になり、
あと未来の自分の心の豊かさを保証された気がして、
厭世的になっている場合じゃねーー!! と思える。
まあ効用は一時的なのだが。わはは。

鼻っ面にぶらさげる人参が一気に何百本もやってきて
私という馬は困惑しているところである。
長期間にわたって長距離を爆走するしかない。


さて、次はどの本を読もうかなあ。
図書館の予約システムとやらも使ってみようか。
予約した本がいつ手元にくるか分からないから、
それまでは生きておかないといけない。

困っちゃうなあ、と思いながら
なんとか日々を走り抜けていくのである。


ビールとワインが冷蔵庫で冷えてる! 海

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