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木星堂エッセイ〜引越しご飯の巻〜

こんにちは、木星堂・海です。
普段は文学フリマで売り子をしている私ですが、
今回はエッセイに挑戦してみようと思います。

上手くかけたものを集めて、note創作大賞に応募してみようかとも
考えています。

それでは、はじまり、はじまり~~。


去年(2023年)の晩夏に、私・海は
それまで一人暮らしをしていたアパートから退去した。
退去を決めてから実際に退去をするまでの約1ヶ月間、私がひとつ決めていたことがある。
それは「食べたいものを、自分に遠慮せず食べる」だ。

私には食費を削る癖がある。いや、あった。
どうせ食べるなら安いものでいいや、と100円のレトルトを食べることがしばしば。
炭水化物って安くてお腹にたまるよね。
以前、炊飯器で炊き込みご飯を3合炊いて、あまりにおいしすぎて一回で食べ尽くしたことがあります。

三合炊いて一回で一切無くす基礎代謝なら平均の倍。(椎名林檎とのっち『初KO勝ち』より)


退去の手続きや引越し作業は、私にとって心身をとてもとてもすり減らすものである。
いわばミッションインポッシブル。
くたくたになった時に、妥協したメニューで食事を済ませたくない!
節約飯より食費はかかるが、それも退去までの約1ヶ月のこと!
結局くたくたになって引っ越しできないよりマシや! と、
1ヶ月間「食べたいものを食べる」ことにした。
その時の記録です。

ちなみに私は味音痴だが、本来食べることが大好きである。
出されたものはなんでも美味しく食べる。
お酒も大好きでよく飲む。
そんな人間です。


深夜のフライドポテト

ミニストップのフライドポテトは、ごくたまにキャンペーンで1.5倍に増量する。
そのキャンペーンの時期が、引っ越しの時期と重なった(気がする)。
深夜にお酒を飲みながらもくもくと引越し作業をしていたときに、ふと「なんかお腹がすいた」と空腹を覚えた。

そのころ住んでいたアパートの近くには、ミニストップがあった。
24時間営業で、いつ行っても灯りが煌々とついていて、いつもお客さんがいた。

初めての一人暮らしの時、大人に
「24時間営業のコンビニが近くにある物件を選べ」
(何があってもすぐに駆け込めるから)
とアドバイスされたことをずっと覚えていて、
私は一人暮らしをするたびにコンビニの近くに住む。

家を出て歩き、ミニストップに入って、追加のお酒をガラガラとカゴに入れ、レジでフライドポテトを注文する。
店員さんがその場で揚げてくれるシステムのようだ。
しばらくレジ横で待っていると、美味しそうな油の匂いが漂ってきた。
店員さんが揚げたてのフライドポテトを紙袋に入れる。
温かい紙袋を、あたかもパリの道端を歩くオシャレなリセエンヌのように片手で抱え(すっぴんだが)、帰路に着いた。

その時気づいたのだが、揚げたてのフライドポテトの入った紙袋を持つのはとても幸福だ。
まず、とてもいい香りがすること。
フライドポテトの油を吸った紙袋から、とても香ばしい匂いがする。
次に、いい感じに温かいこと。
揚げたてのフライドポテトが入った紙袋はじんわりと温かく、持っているとほっとする。
実家の猫を思い出す温もりである。

10分ほどの帰路だが、なんだかとても幸せな気分になったことを覚えている。
揚げたてのポテトは人を幸せにするのだ。

その後、帰ってフライドポテトをつまみにお酒を飲んだ。
塩が効いていて、ぐいぐいお酒が進む。
調子がのって、引越し準備は朝まで続いたとさ。

ちなみに、私は増量フライドポテトをふたつ買い求めた。
1.5×2=3
つまり3倍!
3倍のフライドポテトをもぐもぐ食べたのである。


冷凍エビフライ

冷凍エビフライってご存知だろうか。
スーパーの冷凍食品コーナーで見たことがある人もいるかもしれない。
エビたちが(複数形?)、粉や卵やパン粉がすでにまぶされた状態で冷凍されており、
油で揚げるだけでエビフライができる! という優れた賜物なのである。

スーパーで見かけてからというもの、ずっと食べてみたかった一品だ。
私は揚げ物をするのが好きである。
揚げ物がしゅわしゅわ揚がってゆくのをみながらビール缶を傾けるのも好きだ。

そのため、下準備無しで揚げ物ができる冷凍エビフライはとても魅力的であり、ずっと購入の機会を伺っていた。
その機会がやっと訪れたのである!

退去前に、使い慣れたキッチンで最後の揚げ物でもして思い出を作るか! と思いつき
せっかくだから冷凍エビフライを使ってみようという発想になった。

スーパーで、お酒と冷凍エビフライを買って帰る。
冷凍コーナーには冷凍イカフライというものもあった。
その調子でどんどんバリエーションを増やして欲しいものだ。
私は冷凍ホタテフライも欲しいなあ。

アパートの、なかなか温まらないIHを使って油を熱し、冷凍エビフライを揚げてゆく。
この電気コンロには苦労させられた。
なんていったって、全然お湯が沸騰しないのだ。
内見の時に不動産屋に「IHですよ!」と言われてときめいたが、蓋を開けてみれば年代物だった。
そんなこともあるさ。

ビールを片手にエビフライを揚げてゆく。
揚げ物といえば私は「ハムカツ黙示録」という曲が好きだ。

「ハムカツ食う」と「はぁ、ムカつく」をかけた言葉遊びの歌なのだが、とても上手い(ふたつの意味で)曲だと思う。
聴くたびにハムカツが食べたくなる。


さて、揚がったエビフライをキッチンペーパーの上に乗せて冷ます。
行儀が悪いが、キッチンで一口味見をする。うん、おいしい。ビールに合う。
エビがちゃんと大きく、自身の存在を主張している。
揚げたての揚げ物ってなんでも美味しいよな、うん。

こうやって、アパート最後の揚げ物は幕を閉じたのであった。


修行ピザ


退去前日の午前中、無事に荷物の搬出が済んだ。
何も無くなり伽藍堂となった部屋の真ん中に座り、ふむ、と一考する。
本もテレビも全てトラックが持っていってしまった。
カーテンすらない。部屋は外から丸見えである。布団もない。
娯楽といえば手元にある一冊の本とスマホのみである。

……酒盛り、するしかなくない???

伽藍堂の部屋にテンションがぶち上がった私は、いそいそと酒盛りの準備を始めた。
どうせ布団がないから今夜は雑魚寝なんだ、
酒を飲んで寝るしかないぜ。うへへ。

最後の晩餐は何にしようかなとスマホをぽちぽちしていると
アパートの比較的近所に、ピザ屋があることに気がついた。
ピザ屋。
今まで気がつかなかった!
これまでピザといえばデリバリーだったからな。
ピザ屋がどこにあるかを意識していなかった。

ピザ屋あるあるで、自ら店舗に赴きピザを持ち帰ると値段が割引される、というシステムがある。
近所のピザ屋もそのシステムを導入しているようで、
それなら最初で最後のピザ屋に行くか!
という心持ちになった。
最後の晩餐はピザで決まりである。

食べることは好きだが、そこまで大食いというわけではないので、一番小さいサイズをスマホから予約する。
エビの乗ったピザを頼んだ。
私はエビが好きなのだ。

大学の学部生時代、1人なのに調子に乗ってピザを頼みすぎて
配達されている途中で恥ずかしくなり、
配達されたピザを受け取る時に
あたかも「これから友達とパーティーです」というように振る舞ったことがある。
部屋の中に向かって「ピザ来たよー!」なんて言ってみたりして。
同じ経験をした人は多いのではないだろうか。

閑話休題。
ルンルンで家を出て、ピザを迎えに行く。
行きがけにスーパーにより、酒を大量に買うことも忘れない。
ピザ屋に行く前にすでに荷物が重い。
ピザ屋で出来たてのピザを受け取り、家に帰る。

フライドポテトの時も思ったが、温かい食べ物を抱えて歩くのって楽しい。
いい匂いと温もりに包まれて帰るのはハッピーである。
ピザが傾かないように気を配っていると、ふと好きな短歌を思い出した。

倒れないようにケーキを持ち運ぶとき 
人間はわずかに天使
(岡野大嗣)

ピザを持ち運ぶ時も人間は「わずかに天使」なのだろうか。
ケーキに比べたら天使度が減る気がする。
ギリ人間だろうか。だろうな。
そんなことを考えながら、ギリ人間は温かいピザを抱えて帰り道を歩いた。

(追記)
その後、何もない部屋の真ん中でピザをもくもくと食べ、お酒をごくごくと飲んだ。
何かの修行のようだ。

さらにスマホで音楽を鳴らし、
しみじみとしながらお酒を飲んだ。
シェリル・ノームの「ふなのり」は名曲である。

ちなみに次の日の朝、退去の立ち会いをしたのだが、見事に酔いが残っていた。
アルコールで脳が麻痺したまま退去確認をした。
何事もなくて何より。


まとめ

引越し期間のことを思い出しながら書いたこの文章なのだが、
まさかのフライドポテトからのエビフライからのピザ。
揚げ物が多すぎやしないか。
こんなところで私の胃の元気さを露呈させてしまった。

引っ越しを乗り切るためにはジャンキーな食べ物が必要だったのだ。
そう思うことにしよう。うむ。

食べ物については、まだまだ書きたいことがたくさんある。
シメに食べる松屋の牛丼の美味しさとか
マブダチとカキフライパーティーをした話とか
居酒屋で明らかにチゲ鍋じゃないチゲ鍋が出てきた話とか。

また食べ物のチョイスがジャンキーになった。
まだまだ私も若いな。

それでは、次回をお楽しみに。


木星堂・海


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