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降誕

えー、学園祭って青春ですね。いいですね。

お祭りやフェスもいいですよね。

非日常がいいんでしょうね。


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学園祭で賑わう中、我がクラブはなんとか割り当ててもらった教室の半分(後ろ側)で『魔王降誕会』を行おうとしていた。クラブと言っても部長と僕だけなのだが……

教室には一筋の光も入らないよう暗幕や黒くしたダンボールを窓に貼り付け、教室の半分を仕切るパーテションも上手く配置した。
教室の前側が『校内スタンプラリー商品引換所』になっているので騒がしいのが少し気になる。

蝋燭を使う許可が降りず、雰囲気のあるロウソク風の電気で教室の中はぼんやりと明るく、床には部長の大作である魔法陣が敷かれている。
一応廊下に『魔王降誕会』と看板を挙げてるが、ギャラリーは1人もいないし、来そうにもない。

「時間だな。始めるか」
今まで何も喋らずいた部長が動いた。気合いの入りまくった部長は、黒いマントをなびかせ魔法陣の前に立ち両手を広げ、何やら呪文を呟き出した。


魔法陣に視線をむけながら、僕はなんでこんなクラブに参加したんだろう……
隣の部屋からもれ聞こえる声を聞いて、3組が盛り上がっているのを知った。


何分くらいたっただろう、床の朱色で描かれた魔法陣は青白く光出し、魔法陣の真ん中から1人の黒い服の男が現れた。

「召喚ありがとうございます。申し訳ないですが、魔王のサタンは予約がいっぱいで、出て来れるのは早くてあさってくらいになりますが、チェンジされます?」「サタンはウチのNo.1なんでね。どうします?」

部長はしばらく考えて「ベルゼブブは?」と言った。

黒服は手帳を見ながら「ベルゼも人気なんでねぇ。明日になりますけど」
黒服は周りを見渡し「降誕会なんて銘打っちゃてますもんね、今行けそうなこ何人か呼んできましょうか?」なんて軽く部長に問いかける。


部長は「いや、今日はすいませんけど、やめときます」と頭を下げた。

黒服は「じゃ、またよろしくお願いします。前もって予約して頂いてたら間違いないと思うんで」とチラシを部長に手渡すと魔法陣の中に消えて行った。

部長は食い入るようにチラシを見ていた。

僕はそーっと教室を抜け出し、3組の『メイド喫茶&うどん』へ急いで行った。


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