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七味五悦三会 ・・・2021年面白かったマンガ3冊

『週刊SPA!』で連載されていた鴻上尚史さんの「ドン・キホーテのピアス」。ほぼ毎回、楽しみに読んでいたので、今年5月で連載が終わり、悲しかった。

風物詩のごとく、鴻上さんが毎年12月になると取り上げていたのが、「七味五悦三会(ひちみ・ごえつ・さんえ)」のお話。

七味五悦三会」とは、「美味しかった七つの食べもの」「五つの楽しかったこと」「新しく出会った三人」という意味。

除夜の鐘を聞きながら、この一年、どんな「七味五悦三会」があったかを振り返り、このすべてが揃うと、「今年はいい年だったね」と喜びあう江戸の風習で、鴻上さんは杉浦日向子さんから教えてもらったそう。

今やほぼ、年末年始のご挨拶がメインになっているブログがあるのですが、そこでも何度か、鴻上さんから教わった「七味五悦三会」について書いたことがあります。

ほぼ開店休業状態になっている場所ながらも、12月になると、「七味五悦三会」というキーワードで検索して訪れてきてくださる人が何人も。面白いなぁと思っています。

明日は大晦日。今年出会って面白かったマンガを3冊、駆け込むようにご紹介します。

トリリオンゲーム 』
(稲垣理一郎作画、池上遼一作画、小学館、1月4日に3巻目が発売)

トリリオンとは1兆。はい、ミリオン、ビリオンの次ですね。資産1兆円を目指し起業した、若い二人組のお話。

稲垣さんは、アメフトをテーマにした『アイシールド21』(村田雄介作画、集英社)、現在連載中の科学冒険ものの『Dr.STONE』(Boichi作画、集英社)、そしてこの起業ものと、幅広い題材を手がけている方。

まったくジャンルの違う『Dr.STONE』と『トリリオンゲーム』が同時連載というのも、すごい。

エンタメ感あふれる原作をさらにパワーアップして魅せてくれるのが、77歳の池上先生(あえて先生と呼びたくなる)のエネルギッシュで艶やか絵。

プロフェッショナルなお二人の最強のタッグマッチ。堪能いたしました。

しあわせは食べて寝て待て』
(水凪トリ、秋田書店、現在2巻まで刊行)

膠原病と付き合っている麦巻さん(30代後半の女性)の、ゆるやかな団地暮らし。

膠原病という設定がまず珍しい。カジュアルな薬膳の話も出てきます。かといって、闘病ものというわけでなく、重々しさやお説教ぽさとも無縁。こういう題材も漫画にできるんだと、目から鱗でした。カバーも素敵です。

私も30代のとき、消化器の病気をわずらって、養生のため休職させてもらったり、時短で仕事させてもらったりしたことが。

一度ダメージを受けた機能というのは、休息すればもとに戻るとか、気合いで何とかなるものでない、ままならないものと実感。

がんばれない身体ゆえの緩やか優先の麦巻さんの日常、共感するところが。お知り合いに膠原病と付き合ってる方がいるので、その人のことも思い浮かんだりしました。

私のマンガコンシェルジュである夫が(今回の3冊、どれも夫経由)、PAPER WALL という、立川駅構内にある小さな本屋さんで見つけてきたもの。

発売当時、他の書店ではあまり見かけなかったけれど、今月発表された『このマンガがすごい!2022』にランクイン。近頃はそこココで平積みされているのを目撃するとか。

本屋さんにもいろんなタイプ・需要があって、専門書から一般書までそろう在庫豊富な大型店も魅力だけど、PAPER WALL の話を聞いていると、本屋さんはセレクトショップなのだと改めて感じます。

年に一度訪れる、大好きな本屋さんの一つ、長野の富士見町にある今井書店ふじみ店でも、このマンガを見かけました(マンガコーナーではないところに)。もちろん、『このマンガがすごい!2022」が出る前のこと。

やっぱり本屋さんは選書が味噌。

ひらやすみ
(真造圭伍、小学館、現在2巻まで刊行)

舞台は阿佐ヶ谷。たまたま通りかかった平屋をステキだなぁとスマホで写真を撮っていたら、住人のおばあちゃんに見つかった。これがきっかけで、週2で晩御飯をご馳走になる間柄になった、29歳フリーターのヒロト。

のちにこの平屋をおばあちゃんから託され、美大進学のため山形から上京してきたイトコのなつみとの共同生活が始まる。

凝ったコマ割りは一切なし。一見、シンプル。その中に、流れるように、日常の情景・季節感が描かれていて、豊かな世界があって、私は漫画家ではないけれど、お手本にしたいと思いました。

1巻目の序盤に描かれている、おばあちゃんのある表情と、白いアジサイの話は、とりわけ何度読んでもグッときます。

3冊とも現在刊行中。追いつきやすい2巻刊行となっております。よろしかったら、どうぞ〜。

ようこそ。読んでくださって、ありがとうございます。