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妖精は再び舞う【戦闘妖精・雪風】

 去る2022年10月21日,Twitterのトレンドにて気になる文字列が浮上していました
 「戦闘妖精雪風」と「たすけて!メイヴちゃん」の2つです

 正直,目を疑いました.なぜいま?そのままトレンドの原因を探ると次のようなサイトにたどり着きます

 ようするに,なんか不意に20年ぐらい前の古いアニメが配信されるという話です
 ですが私にとってはそれ以上の意味がありました

そもそも…

 まず今回配信が発表された1つ目の作品『戦闘妖精雪風』は,神林長平による同名小説を原作とするアニメ作品です.(厳密には小説版は「戦闘妖精・雪風」で中点がある)
 2002~2005年にOVAの形式でGONZOが制作し公開されました.
 ちなみに主人公の声優は堺雅人さんが演じています(20年前の!)

 もう一方の『戦闘妖精少女 たすけて!メイヴちゃん』は,先の『戦闘妖精雪風』をベース(????)とした魔改造二次創作なアニメです.(マジでどうしてこんなのが生まれたのか謎)
 ちなみにとある場所には,原作者の神林長平氏直筆の「雪風」サインが施されているという(Wikipedia情報なので気になる方は調べていただいて....)

 あくまで前提として断っておくと,筆者自身はどちらの作品も視聴したことはありません
(YouTubeにアレな方法で公開された作品の一部を見たことがないとは言いませんが)
 ただし原作小説については何度も読んでいて,最新話を読むために隔月発行のS-Fマガジンを読む程度の自称ファンではあります

 ただ,今回配信が開始されたいずれのサービスも筆者は契約してないので,見るために契約するか,渋ってなかなか見れないかは神のみぞ知るということで...

なぜそんなに熱く?

  この作品との出会いは,筆者が「ハヤカワ文庫」を中心とした読書文化を形成されかけていたときにさかのぼります(もう10年ぐらい前かぁ)
 その頃はH.G.ウェルズやA.C.クラークのような海外SF作品を主に読んでいたので,そろそろ日本のSF作品も読んでみようかという気分になっていました
 そんな中ピッタリすぎる書籍を見つけました

 このシリーズは総勢50名の作家によって執筆された作品を1963年から2012年までの年ごとに収集したアンソロジーです.小松左京や筒井康隆といった大御所の作品から,伊藤計劃や小川一水といったゼロ年代SFを支える作品まで触れることができる.
 様々な作品が収録されているので,気になった作家さんや,続きが読みたいシリーズが見つかるかもしれないという思いで読み始めたのでした.

 このシリーズ読んでいて思い知ったのは「SF:サイエンスフィクション」というジャンルの節操がないまでの幅の広さと底知れない深みでした.たぶん.
 王道なSF作品もあれば,時代小説のような体裁のもの,終始混沌としていてつかみどころのないものまでさまざま

 そんな作品集の第2巻,1979年の代表としてそれはありました
 神林長平 著 「妖精が舞う」

 本屋さんに行けばとりあえずハヤカワ文庫の棚を見に行っていた筆者には見覚えのある「戦闘妖精・雪風<改>」の第1話です

 ちょうどそのころYS FLIGHTという個人製作のフライトシミュを遊んでいたのもあって,戦闘機が出てくる作品は比較的すんなりと受け入れることができた
 それに,主人公が斜に構えている感じなのも心惹かれたのかもしれません(ほら,誰しもそういう時期ってあるじゃん?ね?)

 先のアンソロジーを読み終わって少しして,次に読む本に飢えていた筆者は雪風の第1巻を購入し,気づけばそのままの勢いで当時発売されていた3巻まで突っ走っていました

どういう作品?

 ここまでもここからもネタバレは避けて語りたいので深くは語りませんが,読感はこんなかんじ:

 1巻は戦闘機によるカッコいい戦闘シーン楽しめます.2巻3巻と話が進むにつれて小説世界が複雑化して難解になります(だけどむしろその難解さがたまらなく楽しい)

 こんな感じ
 簡単なあらすじについてはアニメ配信についての記事にある部分を見ていただくということで
(あらすじを書くのは神経を使って筆が止まってしまいます)


 最後にもう一つ,筆者が思うこの作品のすごさについて,それは1980年代にして今の人工知能(AI)で重要とされる「説明可能なAI」に切り込んでいるといえる点です

 説明可能なAIとは,AIによって行われた意思決定がどのような価値基準や検討の過程のもとで行われたのかを人間に分かる形で表現できるような人工知能のことを指します
 人工知能は,人間にはできない処理能力を下支えに複雑な問題に回答を返すことができますが(写真に写っているものの認識とか)その結果が正しいかは究極的に人間には分かりません.説明可能なAIはこの問題を解決するための方針というわけです
 それにAIと言わずとも,ブラックボックス化されて仕組みの分からないシステム(検索エンジンとか)は世の中にいっぱいあるわけで,拡大解釈をすれば「人と情報システムの付き合い方」という汎用的な問題と言えそうです

 そしてこの作品では,偵察機である「雪風」や基地のコンピュータに搭載された知性体,また敵であるジャムは「人間には理解できない」意識を持った存在として描かれています
 また主人公は機械のように非情な性格の持ち主(≒人間と非人間の間にいる存在)であり,雪風と主人公の間で本来はできないはずの対話を通して物語は進みます

 つまり,ブラックボックスになっている存在と人類の関係性が作品の1つのテーマとしてあるのです.それが今から40年も前に描かれ始めたのです!

 実際のところ,同作者は「意識」や「自我」とその表層に現れる「言葉」を常にテーマにしているので,あくまでこの解釈はごく一部を切り取ったものであるにすぎません...語るだけの文章力がないのがつらい
 同著者の「言壺」に収録されているはずの円城塔氏の評論を参照することをおすすめしておきます

 作品の先見性を取り上げたところで今回はこの辺で.

 いつも以上の雑文失礼しました.ではまた!


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