仏師と呼ばないで

この仕事をしていると、「仏師さん」と呼ばれる事があるが、私としては、出来れば、「仏像修復家」とか、「修復師」とかと呼んでもらいたい。

古い仏像は修復するけど、作ることはしない。
そして、あまり作りたいという製作意欲はない。作品で表現したいとか、作品を残したいということも全くない。

欠損した手とか、光背とかを彫刻して新補したとき、オリジナルの時代に馴染んだり、主張しないで、御像を引き立てたりした時の方が、喜びを感じる。

とにかく古い仏像や神像を次の世代に伝えるお手伝いをしたいと思っている。

加えて、自身が仏像・神像を伝えているんだという自負はあまりなく、伝えているのは、お寺や神社や地域の人々。修復しないで、壊れていたとしても大事にされていれば、御像は伝わる。その上で、次の世代に伝える際に、それまでの歴史を尊重して、良い部分を引き出して、いいかたちで送り出すのが仕事。次の100年を伝えていただくにあたっての大事な場面なので、しっかりした理念を持って、しっかり処置を行うべきではある。

この仕事していると、仏像を次の世代に残したいという、徳のある方々にだけお会いするので、いいかたとばかりに囲まれて仕事ができる。でも、過疎とか、地域振興とかの社会問題と対峙して、どうしようもない時もある。

このコロナ禍の先の経済縮小によって、この文化財修復とか保存とか地域文化保存とかって、どうなってしまうのか心配な部分がとても大きいですが、8月13日の工房の創立記念日(長男が生まれたと同時なので、16年)。今日も地道にやっております。


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