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[report]『川崎市市制100周年記念 斎藤文夫コレクション名品展(後期)』(川崎浮世絵ギャラリー)

※ タイトル画像:ギャラリー通路の壁。ここに写っている作品はすべて後期で展示。


開催情報

『川崎市市制100周年記念 斎藤文夫コレクション 名品展』
場所:川崎浮世絵ギャラリー(神奈川県川崎市)
開催日:前期 6.29.sat-7.28 / 後期 8.3.sat-9.8.sun(前期後期で総掛け替え)
入館料:500円(一般)

内容:川崎市市制100周年を記念して、長年浮世絵の収集で知られる斎藤文夫氏が代表理事を務める、公益社団法人川崎・砂子の里資料館所蔵の名品を一堂に公開。

※ 展示室内撮影不可

主な登場人物

  • 斎藤文夫(1928-)
    政治家。浮世絵コレクター。私立美術館「川崎・砂子の里資料館」を開館(2016年に閉館)。このコレクションを無償貸与し展示しているのが「川崎浮世絵ギャラリー」。

単語

  • 【浮絵】透視画法(遠近法)を用いた浮世絵。1739年奥村政信(1686-1764)が創始。1771年歌川豊春も用いた。

  • 【異時同図法】異なる時間の場面を一つの図に描く。

  • 【光線画】西洋の表現を取り込み、主版(輪郭線)を使わず、色の面で光や影を捉えた風景版画。小林清親(1847-1915)が創始。

  • 【やつし】古典的な画題を当世の風俗で描くこと。

章構成覚書

第1章 斎藤文夫コレクションの名品 錦絵の誕生から浮世絵の黄金期まで
 葛飾北斎《富嶽三十六景》8点…《神奈川沖浪裏》
 鈴木晴信《風流やつし七小町》(揃い)
 鳥文斎栄之《八朔花魁図》
 喜多川歌麿《青楼十二時 続》午ノ刻、酉ノ刻、《柿もぎ》、他2点
 鳥居清長《女湯》他2点
 などなど計39点

第2章 幕末・明治期の名品
 歌川広重《名所江戸百景》6点
 葛飾北斎《諸国名橋奇覧》2点、《諸国瀧廻り》2点、《詩哥写真鏡》2点、《琉球八景》4点
 歌川国貞(三代豊国)・歌川貞秀《岩亀楼并二異客之図》、他1点
 歌川国芳《相馬の古内裏》他1点
 落合芳幾《東海道中栗毛弥次馬 池鯉鮒》(豆腐小僧)、他2点
 月岡芳年《月百姿》4点、《新形三十六怪撰》4点、他1点
 小林清親《武蔵百景之内 両国花火》、他1点
 楊洲周延《真美人 十四》他1点
などなど計37点

合計76点


感想

「斎藤文夫コレクション」ダイジェスト展の後期。前期からは総掛け替え。
前期が《富嶽三十六景 凱風快晴》なら、後期は《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》といった具合に、様々なシリーズから数点ずつ、前期後期でバランス良く展示されている。

後期で最も印象に残ったのは、鳥居清長《女湯》。
おおらかに湯浴みする女たちの既視感あるリアルさと、背景が細かく描かれていて「へぇ〜、こんなだったんだ〜」という驚き。
左奥の湯汲番(女湯をのぞき中?)と中央奥の柘榴口(湯が冷めるのを防ぐため、上の方だけ板戸で仕切っている)から下半身だけ見えている女のトリミングにギョッとする。
いろいろと非常に面白い。
現存が確認されているのは、こことボストン美術館の2点だけらしい。
展示室内撮影不可なので、リンクを貼れる画像を探していたら、ボストン美術館所蔵のものは手拭いで前を隠す修正が入っている。
未修正版が観られる貴重な機会なので、興味がある方はぜひ!

その他…
歌麿《柿もぎ》…黒い着物の花魁を中央に、左右でワイワイ柿もぎする様子が楽しい。


北斎《諸国名橋奇覧》と《琉球八景》は、北斎が想像で描いている部分が多く、ファンタジーの世界のよう。

↓ 《くものかけはし》ホントはそこまで高くないらしい。だいぶ盛ってる。

↓ リアル天高橋

↓ 《飛越の境つりはし》は、ほぼフィクションらしい。…こんな橋渡れん!

琉球に行ったことのない北斎が描いた《琉球八景》…雪が降ったり、あるはずのない富士山風の山があったり、バナナ種の樹木が描かれたトロピカル浮世絵だったりで楽しい。
沖縄の浦添市美術館が8枚そろいで所蔵。


この他にも7点そろいで展示の鈴木春信《風流やつし七小町》、広重《名所江戸百景》から6点、夏の定番・国芳《相馬の古内裏》、落合芳幾《百鬼夜行》も楽しい。芳年《月百姿》から4点、新形三十六怪撰》から4点、浴衣美人の後ろ姿が印象的な小林清親《両国花火》、こうもり傘がおしゃれなハイカラ女学生・揚州周延《真美人 十四》などなど、コンパクトな展示室に76点展示。

↓ …浮世絵ガールズコレクション



名刺サイズカレンダープレゼント、後期は下記の5種。
 月岡芳年「新形三十六怪撰 布引滝ぬのびきのたき悪源太あくげんだ義平よしひらのれい討難波次郎なんばじろうをうつ
 落合芳幾よしいく「東海道中栗毛弥次馬 池鯉鮒」(豆腐小僧)
 楊洲周延ちかのぶ「真美人 十四」
 葛飾北斎「諸国瀧廻り 美濃ノ国 養老の滝」
 葛飾北斎「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

月岡芳年「新形三十六怪撰 布引滝悪源太義平霊討難波次郎」を選択


次回予告(川崎浮世絵ギャラリー)

「光と影の絵師 小林清親展」ー「光線画」の傑作 ここに集結
前期:9.14.sat-10.14.mon
後期:10.19.sat-11.17.sun
内容:清親の風景版画を中心に、肖像画、歴史画、美人画、戯画、動物画など、多彩な画業も紹介。清親の弟子 井上安治、小倉柳村の作品もあわせて展示。

チラシの裏

…これも観たいなあ…

次々回は 11.23.sat-12.22.sun 「歌舞伎展」予定。



↓前期のレポート


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