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[report]『川崎市市制100周年記念 斎藤文夫コレクション名品展(前期)』(川崎浮世絵ギャラリー)


開催情報

『川崎市市制100周年記念 斎藤文夫コレクション 名品展』
場所:川崎浮世絵ギャラリー(神奈川県川崎市)
開催日:前期 6.29.sat-7.28 / 後期 8.3.sat-9.8.sun
入館料:500円(一般)

内容:川崎市市制100周年を記念して、長年浮世絵の収集で知られる斎藤文夫氏が代表理事を務める、公益社団法人川崎・砂子の里資料館所蔵の名品を一堂に公開。

※ 展示室内撮影不可

出品作品情報

この美術展、公式サイトに出品作品の情報が少なく、チラシが置いてある場所も少ないので、チラシと作品リストからざっくりご紹介。
たぶん前期後期で総掛け替え。

美術展チラシ(中面)

【前期】76点
葛飾北斎《富嶽三十六景 凱風快晴》
歌川豊国《六郷渡舟図》
歌川広重《東海道五拾三次之内 川崎 六郷渡船》
歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
歌川広重《名所江戸百景 亀戸梅屋舗》
歌川広重《月に松上の木菟》
歌川広重《名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣》
歌川国貞(三代豊国)・歌川広重《双筆五十三次 江尻》
歌川国貞(三代豊国)《東海道五十三次之内 宮 景清》
歌川国芳《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》
東洲斎写楽《二代目市川門之助の伊達与作》
月岡芳年《芳涼閣両雄動》
月岡芳年《月百姿 五條橋の月》
豊原国周《けいせい敷島 沢村田之助》
小林清親《古代模様 紫式部》《古代模様 清少納言》
…他

【後期】
葛飾北斎《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
鈴木晴信《風流やつし七小町》(揃い)
喜多川歌麿《当時全盛美人揃 玉屋内 小紫》
鳥文斎栄之《八朔花魁図》
歌川広重《名所江戸百景 深川洲崎十万坪》
歌川国芳《相馬の古内裏》
三代歌川広重《六郷蒸気車往返之全図》
歌川国貞(三代豊国)・歌川貞秀《岩亀楼并二異客之図》
落合芳幾《東海道中栗毛弥次馬 池鯉鮒》
月岡芳年《新形三十六怪撰 布引滝悪源太義平霊討難波次郎》
月岡芳年《藤原保昌月下弄笛図》
…他

公式Xでも、出品作がいくつか紹介されている。

主な登場人物

  • 鈴木春信(1725-1770)

  • 一筆斎文調(?)
    役者似顔絵の創始に貢献

  • 勝川春章(1726-1792)
    役者似顔絵の創始に貢献

  • 礒田いそだ湖龍斎こりゅうさい(1735-?)

  • 鳥居清長(1752-1815)
    鳥居清満の門人。鳥居派四代目当主。

  • 喜多川歌麿(1753?-1806)

  • 葛飾北斎(1760-1809)

  • 北尾政演まさのぶ(1761-1816)
    劇作者としての名前は「山東京伝」。のちに紙煙草店を開き、繁盛させる。

  • 歌川豊国(1769-1825)
    歌川豊春の門人。歌川派の基礎を築く。

  • 東洲斎写楽(?)

  • 歌川国貞(三代豊国)(1786-1869)

  • 歌川国芳(1797-1861)

  • 豊原国周(1835-1900)

  • 楊洲周延ちかのぶ(1838-1912)

  • 月岡芳年(1839-1892)

  • 小林清親(1847-1915)

  • 斎藤文夫(1928-)
    政治家。浮世絵コレクター。私立美術館「川崎・砂子の里資料館」を開館、2016年閉館。このコレクションを無償貸与し展示しているのが「川崎浮世絵ギャラリー」。

章構成覚書

第1章 斎藤文夫コレクションの名品 錦絵の誕生から浮世絵の黄金期まで
 葛飾北斎《富嶽三十六景》10点…《凱風快晴》摺違いで2点
 鈴木春信 5点
 勝川春章 3点
 鳥居清長 3点
 喜多川歌麿《青楼十二時 続》丑ノ刻、未ノ刻、《おたきと仁王の枕引き》他
 歌川豊国 2点
 などなど 計36点

第2章 幕末・明治期の名品
 歌川広重《名所江戸百景》5点、《月に松上の木兎》他
 葛飾北斎《諸国名橋奇覧》2点、《詩哥写真鏡》2点、他
 歌川国貞(三代豊国)・歌川広重《双筆五十三次》4点
 歌川国貞(三代豊国)《東海道五十三次》3点、他
 豊原国周 2点
 歌川国芳《里すゞめねぐらの仮宿》《讃岐院眷属をして為朝をすくふ図》他
 月岡芳年《月百姿》4点、《新形三十六怪撰》4点、《芳涼閣両雄動》他
 揚州周延 2点
 小林清親《古代模様》2点
 などなど 計40点

 合計 76点

感想

「川崎浮世絵ギャラリー」は、JR川崎駅北口・川崎市立図書館のワンフロア下にある会議室風のギャラリー。
大きめの会議室くらいのコンパクトな展示室ながら、「川崎・砂子の里資料館」所蔵の約4000点の斎藤文夫コレクションから様々な切り口で展示してくれるのが楽しい。(※2024.8.8 追記:公式サイトには所蔵数約4000点とあるのですが、今期のチラシには約6000点と記載されています。…増えたのか?)
こちらのギャラリー、公式サイトの出品作品情報はピックアップ作品のみ。公式Xでいくつか紹介されているが、何が出品されているかは行ってのお楽しみ。
でも今回は「川崎市市制100周年記念 斎藤文夫コレクション名品展」…それ、絶対外れなしでしょ。

7月1日は川崎市市制記念日の無料開館で賑わっていたようだが、私が行った日は平日ということもあり、落ち着いていた。
見回すと、あちらもこちらも見覚えのある名作が並ぶ「斎藤文夫コレクション」ダイジェスト。コンパクトなお弁当箱に、おいしいものがちょっとずつ詰め込まれた松花堂弁当のような展示だった。

歌麿の中でも大好きな「青楼十二時 続 丑ノ刻」が出品されていて嬉しい驚き!
北斎《富嶽三十六景 凱風快晴》は、かなり印象の違う摺違いが2枚並んでいて面白かった。
同じ北斎《諸国名橋奇覧》は、この橋に行ってみたい見てみたいという気持ちが膨らむ。当時の人もこんな風にワクワクしながら見たのだろうか。
広重《浅草田圃酉の町詣》《月に松上の木兎》かわいらしい。

月岡芳年は、現代の映画やコミックに通じるようなカッコ良さを感じる。
お気に入りの「月百姿」「新形三十六怪撰」から出品があった。
「月百姿」は太田記念美術館の春の展示に行きそびれたので、4点とはいえここで観れて嬉しい。後期も数点展示されるよう。
「新形三十六怪撰」公式Xでは出品作の「地獄太夫悟道の図」「さぎむすめ」が紹介されている。
「蒲生貞秀臣土岐元貞甲州猪鼻山魔王投倒図」も出品。
…これ、インパクトすごい。土岐元貞が妖怪(?)と戦っている図だが、後ろの仏(の姿をした妖怪)の笑顔が怖い怖い。後ろから声援を送っているかのような骸骨がちょっぴりユーモラス。アクション映画やコミックを観ているよう。

↑「新形三十六怪撰」の虫食いを模した枠も良い。

鈴木春信は、今まで注目していなかったけれど、フォローしている わたなべ・えいいち さんが、鈴木春信の黒について熱く語っていらっしゃるのを拝見して、じっくり観てみたいと思ったのだが…

…やっぱり黒ベタ作品はなかった。
里帰り展などでないと、観るのは無理なのか。残念。
それでも貴重な機会ではあるので、後期の「風流やつし七小町」もチェックしたい。(今展の目玉のひとつみたいだし)

恒例:名刺サイズカレンダー

今展で、半年に一度の恒例の名刺サイズカレンダーも配布中。
お菓子のおまけやカードのようで、集めたくなる。

裏面は 2024.7月〜12月までの開館日カレンダー
歌川広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」をチョイス
一番人気らしい

前期と後期で柄が変わる。前期は下記の5種。
 葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
 三代歌川豊国(歌川国貞)・歌川広重「双筆五十三次 江尻」
 歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」
 歌川広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」
 歌川国芳「里すゞめねぐらの仮宿」

余談:堂本の『大師巻』…の中味

川崎といえば、神奈川銘菓 堂本のお煎餅『大師巻』も有名。
川崎浮世絵ギャラリーのある北口からは反対側になるが、アトレ川崎店1Fに堂本が入っている。(ギャラリーを出て階段降りてアトレ川崎1Fをずんずん歩いて行った先)
『大師巻』は朝から張り切って並ばないと購入できないが、これ以外はだいたい普通に購入できる。
『大師巻』は揚げた煎餅に海苔を巻いたものだが、海苔が巻けない形になってしまったアウトレット品煎餅が店舗限定で『中味』として販売されている。
根性無しの私はいつも、海苔なし『中味』を購入。
海苔がなくてもさくさくでおいしいよ。
…一度くらいは海苔付きの『大師巻』を食べてみたいけど…

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