3.生活へ教育を

幼稚園をどこそこに作るというのも、 つまり、そうした子供たちの溜り場をどこかへ作ることに外ならないことでありましょう。
すなわち 特に教育の場所である前に、子供自身の場所であるのが幼稚園ではないでしょうか。しからば、どういう風にその溜り場を作ってやるか、それには子供自身が自分の生活を充実する工夫を自ら持ってい ることを信用して、それを発揮出来るようにこしらえておいてやりたいのです。

すなわち、こちらの 目的を子供におしつけるに都合のいいように仕組むのではなくして、子供が来て、ラクに、自分たちのものと感ずるようにしておいてやりたいのです。

喜ぶように、うれしがるように、あるいはことさら嬉 くも楽しくも思わないほど、子供が自然な満足を感ずるように、そういうように、心をつくして置いてやりたいのです。

ちょうどそれは心ある主人が家に客を迎えるのと同じです。
客を何よりも先ず心安くさせてあげたい。御馳走も御馳走だが、食いもの屋へ案内するのではなし、それはまあゆっく 後からのことにして、先ずアットホームにさせたいのが第一でしょう。

幼稚園も同じことです。 子供が来ない前から先生自身としてはしっかりした目的を持っておられますが、いきなり、その目的をふりかざして構えているのではアットホームでないでしょう。 先ず、 十分自然な子供の生活形態をつくらせておいて、そのうちに十分の自己充実ができるように仕してやるのが、客を迎える第一でしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?