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栽培植物のリスト 「アブラヤシ」の歴史

何とぎっくり腰になりまして、少々お休みをいただいておりました。
久々に腰をやってしまい、驚きました。腰をやってしまうと何もできませんね…。

さて、今回は油脂作物の中でも今、最も身近に出回っていると言える「アブラヤシ」についてです。
私達の身近では「パーム油」と呼ばれるものですね。食用、洗剤などなど、様々な用途に使われていて、原料表記に「植物性油脂」とあれば、アブラヤシである可能性がかなり高いです。


アブラヤシはどこから来たのか

アブラヤシの原産地は、西アフリカの熱帯雨林(ギニア湾岸)と言われています。
生育する適地が熱帯雨林であるため日本ではほぼ見られない植物ですが、その樹高は何と20m(7階建てのビルに相当)にも達します。
ただ、熱帯雨林の高層を構成する樹木は高さが50m(!)に達するため、熱帯雨林の中では中層を構成するそれほど高木とは言えない種類です。

ちなみに、アブラヤシの果実及び種子に含まれる油分は植物の中でも屈指で、重量のおよそ60%に及びます(果実に含まれるパーム油、種子内のパーム核油の平均値)。「アブラヤシ」と呼ばれるのも納得ですね。
また、多数の実が房状につくのも特徴で、一つの房の重さは最大で80kgほどにもなります。

Wikipediaより

西アフリカでは古くから採油が行われており、その有用性が認められていました。


アブラヤシ、地中海を渡り東南アジアへ

アブラヤシが採油用作物として広く認知されるようになったのは比較的最近、19世紀になってからのことです。
ヨーロッパには、熱帯の珍奇な植物として15世紀くらいに伝播したものの、18世紀くらいまでは温室で観賞用作物として栽培されていました。
19世紀に入り、その有用性に着目を始めたのがオランダでした。

アムステルダムの植物園などからジャワ島の植物園に苗木を送り(スマトラ島に送ったという説もあり)、試験栽培をスタート。同地の気候に適合し、その後オランダ植民地を中心に栽培が広がっていきます。
同じころ、シンガポールでも種から育てた苗木が成長し、マレー半島に広がっていったと言われています。

アブラヤシは、東南アジアにおける主要なプランテーション作物として現在も盛んに栽培されていますね。
アブラヤシの産地は現在でも上位はインドネシア、マレーシア、タイなど東南アジア、そしてナイジェリア、ガーナ、カメルーンなどギニア湾岸諸国が上位に見られます。

なお、現在栽培されているのは、西アフリカ出身の「ギニアアブラヤシ」ですが、中米出身の「アメリカアブラヤシ」という種類も存在します。
アブラヤシの栽培が盛んな地域に中南米が入っているのは、奴隷貿易の際に奴隷の食糧として持ち込まれたことがきっかけとされていますが、現在の中南米の栽培品種には両者の交配種が存在するのはそういった経緯からです。


パーム油の広い用途

果実から採れるパーム油は食用、種子から採れるパーム核油は食用と工業原料として用いられます。

パーム核油から作られるものとして、洗剤や石鹸などの他に乳脂肪分の代用としてアイスやホイップクリームなどにも用いられます。 そのため、食品、日用品はじめかなり身近な製品に使われているケースが多く、輸入が滞ることは生活に甚大な影響を及ぼすと言えそうです。

実は、今年に入って最大の生産国であるインドネシア発のニュースが世界に衝撃を与えました。
何と、パーム油の輸出禁止措置を打ち出したのです。
結局この措置は内外の反発を招き、後に撤回されましたが、近年の食糧争奪戦を象徴するような事件でした。



アブラヤシのプランテーションによる環境破壊

また、アブラヤシは環境問題(熱帯林破壊)の代表例として挙げられることもあります。
広大なアブラヤシのプランテーションを造るために熱帯の原生林が切りひらかれ、生物多様性が失われている、とかねてから指摘があります。
また、プランテーション農場の労働環境は決して良いとは言えないため、貧富の格差に関する問題が指摘されています。

身近にある油、パーム油。
その由来と現在を知ることで、近年の社会問題について考えるきっかけになればと思います。

今回は以上です。アブラヤシに関するお話、お役に立てば幸いです!













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