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各国紹介(ヨーロッパ) サンマリノ

地理に関心がある皆さんへ。
各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。

本日の一国は「サンマリノ」。
イタリア半島の東部に位置し、海を眺望する事ができる小さな内陸国。世界最古の共和国です。
では、参りましょう。

位置
国旗
国章

サンマリノ共和国は、イタリア半島中部の東岸、海岸まで23㎞の内陸部に位置します。
国土の周囲はすべてイタリアに囲まれており、面積は61㎢。この面積は東京都の大田区や八丈島と同じ位です。
面積で言えば下から5番目(最も小さいのはバチカン市国)。
人口はおよそ3万4千人です。

歴史的に見るとリヒテンシュタインやモナコ、アンドラなどのマイクロステートと同様、かつての領邦や小国が周囲の強力な近代国家に取り込まれず、主権を維持したタイプの国と言えます。

ただ、バチカンなどとは異なり、実際には9つの自治体に分かれ、サンマリノ市が「首都」にあたります。
そのため、サンマリノは「都市国家」ではない、という意見もあります。

行政区分

国名はキリスト教カトリックの聖人、聖マリヌスから来ています。

聖マリヌス

彼はサンマリノ建国の父とも呼べる伝説を持つ人物。
石工だった彼は4世紀、ローマ帝国による迫害を逃れ、現在のクロアチア沖にある島からアドリア海を超えてイタリア半島に逃れました。
そして301年、現在の同国があるティターノ山に逃れ、山頂に礼拝堂などを築き、仲間たちと共にキリスト教徒の共同体を作り上げました。
ちなみに、ティターノ山はイタリア半島を南北に貫く新期造山帯、アペニン山脈の一部にあたります。

アペニン山脈
ティターノ山

ローマ教皇領の飛び地となっていた1631年、教皇クレメンス8世の時代に独立を認められました。それ以降、独立を守り続けていることから、同国は共和制を持つ国としては世界最古の現存する国家であるとされます。
国を囲むイタリアとは1862年に善隣友好条約を結び、それ以降極めて密接で友好的な関係を維持しています。
ちなみに、第一次世界大戦、第二次世界大戦では中立を保ちました。

また、サンマリノの人々は、険しい山麓に巨大な城壁を築きました。国の象徴の一つ、グアイタ城砦です。

サンマリノの兵士はクロスボウ(弩)で武装していました。
クロスボウは長弓と違って扱いやすく、発射速度は遅いものの狙撃しやすく高威力。
多数の兵が城砦に立てこもり、高所からクロスボウを撃ちおろしてくるとなれば、攻め落とすのはかなり困難だったと思われます。現在でもクロスボウの大会が行われるなど、この武器はサンマリノの象徴的なものです。

サンマリノは、国土の多くが山岳地帯になっています。
最高峰ティターノ山は標高749m。国土の最低点は50mほど。

有力な湖沼はありませんが、いくつかの河川が走っており、国土の2割ほどの耕作可能な場所があります。牧草地を合わせると国土の4割近くが農地となっています。
気候は夏は高温、冬は湿潤となります。
夏の方が降水量は少ないものの、やや少雨という程度。標高500mを超えたエリアでは降雪が見られ、大雪になることもあります。

比較的降水量は多く、この地域に典型的なCs(地中海性気候)ではなくCfa(温暖湿潤気候)に属するとする意見もあります。
サンマリノ市の1月平均気温は6℃、7月は28℃、年降水量は1,300㎜ほど。
ちなみに8月の降水量が40mm、11月が100㎜ほどと、夏はそれほど厳しい乾燥に見舞われていません。

経済はイタリアと密接に関わっており、かつては通貨もイタリアの通貨(リラ)のサンマリノアレンジ版(サンマリノ・リラ)が流通。
現在はユーロが流通しています(EUのメンバーではない)。
主要産業は観光業ですが、それ以外に金融業の他、繊維、食品加工業、窯業,
切手やコインの発行なども見られます。

観光業は、歴史的建築物の魅力などはもちろん、税率の低さから買い物天国としての魅力もあります(アンドラでも同じような話がありました)。
ちなみに、かつてはF1の「サンマリノGP」が行われていましたが、これは隣国イタリア、イモラ市のサーキットで行われていたもので、正確にはサンマリノで行われていません。

経済の中心は、サンマリノ市ではなく、人口6,000人ほどの山麓の街ボルゴ・マッジョーレ。サンマリノ市とはロープウェイで結ばれています。

ボルゴ・マッジョーレ

総人口はおよそ3.4万人ですので、ボルゴ・マッジョーレには人口の2割ほどが住んでいることになります。
国民一人当たりGNIはおよそ41,000ドルと比較的富裕な国です。

民族はサンマリノ人が8割、イタリア人2割。
公用語はイタリア語ですが、サンマリノ語(イタリア語の方言という主張と、別言語という主張がある)が日常的には用いられます。
宗教はやはりキリスト教カトリックが大半(9割)です。

というわけで、イタリア半島のマイクロステート、サンマリノ。
小さな国土ですが、歴史的建造物も多く、見所が大変多い国です。
ゲームで言えば、ドラゴンクエストでも取り上げられたことがあるそうで、その独特の地形と歴史は多くの人を魅了し続けています。
イタリアに出かけた際には、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。今日はこれくらいで。

地理に関する動画を投稿しています。
各国紹介、一問一答、世界の奇妙な国境線、地図の歴史、国当てクイズ(ショート)などのシリーズを進めています。
また、地理系の偉人の業績についても取り上げていく予定です。
是非ご覧ください。

https://www.youtube.com/channel/UC5Oz3Y6qHQShwt4eOdW1jRw


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