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世界の地理 面白映像解説(No,02)

今回紹介する映像はこちら。

しかしこのエンジン、よく調べてみるとおかしなことがあります。
世界最大のエンジンである「Wärtsilä-Sulzer RTA96-C」シリーズの「14RT-flex96C」ですが、最初の「14」がシリンダ数を表しています。
そして、直列なので横一列にシリンダが並んでいるはずです。
しかし、これを見ると並んでいるのは7つだけ。この段階で、このエンジンは少なくとも世界最大のエンジン「Wärtsilä-Sulzer RTA96-C」シリーズの「14RT-flex96C」とは異なることになります。

ちなみに「14RT-flex96C」はこんな感じ。
2012年、韓国、斗山重工業の工場で作られた際の映像です。

「Wärtsilä-Sulzer RTA96-C」シリーズには、カスタマイズとして4~14シリンダまでのバリエーションがあることから、これはそのうちミドルサイズの7シリンダのエンジンである可能性があります(全く違うメーカーのエンジンの可能性も捨てきれませんが)。

ちなみに、1997年から始まったRTA96-Cの開発はフィンランド、バルチラ社の低速2ストロークエンジン部門(バルチラ・スイス)と、日本のディーゼルユナイテッド(IHIとと住友重機械工業のディーゼル部門が合併してつくられた会社)が共同で行い、ディーゼルユナイテッド相生工場で製作された、11シリンダバージョンの初号機を搭載した船は、エンジンと同じく日本で建造された(IHIが建造を担当)という経緯があるようです。

多くの情報源ではディーゼルユナイテッドや相生工場の話が端折られてしまっているのですが、よくよく調べると日本の造船を支えた企業と地名が出てくるのは嬉しくなりますね。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/technom/822/0/822_KJ00002099661/_pdf

2006年にはエンジンについてのプレスリリースも発表されています。

開発当初は12シリンダまででしたが、その後14シリンダまでサイズアップ。
14シリンダのエンジンは高さ 13.5 メートル、長さ 26.59 メートル、重量は 2,300 トン、およそ11万馬力というとてつもないパワーを誇ります。

ちなみ最近のコンテナ船は、このような14シリンダを搭載した十数年前の2倍以上のコンテナが積める(24000個積み)が主流になっているそうです。
コンテナ船、タンカーもそうですが、スケールメリットを考慮した結果、どんどん大型化していっています。
かつてはパナマ運河を通過できるサイズが事実上の標準(パナマックス)でしたが、近年はパナマ運河を通過できない大きさの船(ポスト・パナマックス船)が増加しています。
これらの船は岬を回らず、大陸は鉄道で対岸まで運んでいます。
なお、現在のパナマックスは、パナマ運河が2016年に拡張されたことに伴い、
全長:366m
全幅:49m
喫水:15.2m
最大高:57.91m
まで拡大されています。

MSC ロレート

話を戻しますが、船舶は大型化したにも関わらず、エンジンのサイズは同じか少し小さくなっています。
これは燃費向上のためで、パワーが船のサイズに比べて小さくなり、船速をすこし落とす事で燃費を良くしているとのこと。
これは燃料代の高騰や、環境意識の高まりが背景にあるものと考えられます。
省エネの波は、「速度は遅いが大量性・経済性に優れる」運搬手段と認知されている船舶にも押し寄せているようです。

というわけで、今回は「世界最大のエンジン」の検証と、近年の海運についても少し触れてみました。
情報提供をいただいたXの@tokugata1A様、DMで様々な情報をいただいた皆様、ありがとうございました。

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