見出し画像

World Day to Combat Desertification and Drought

今日、6月17日は、「砂漠化および干ばつと闘う世界デー(World Day to Combat Desertification and Drought)」です。

1994年6月17日に、「国連砂漠化対処条約」が採択されたことから定められました。
砂漠化を防止し、旱魃と貧困から人々を救うことを主な目的としています。

環境問題で、温暖化や大気・海洋の汚染などと並んでよく取り上げられるテーマなのですが、最近は他の話題に隠れがち。
今日、この日を迎えて、改めて砂漠化について考えてみたいと思います。

1、砂漠とは

まず、砂漠とは何か。その定義について考えてみます。
砂漠というと、多くの方のイメージは

こんな感じですね。
砂漠とは、降水量が極端に少なく、植生がほとんど存在しない、極度に乾燥した地域のこと。
降雨量より蒸発量の方が多い、という定義も存在します。
年降水量としてはおおむね250㎜未満の地域がこれにあたります。

日本では、サハラ砂漠の周辺部(エジプトなど)の砂漠や鳥取砂丘(鳥取砂丘は砂漠ではないのですが)のイメージが強いので、「砂」の砂漠が最初にイメージとして湧きますが、実は地球上に存在する砂漠の80%は「岩石砂漠」と呼ばれるものです。

つまり、実際にはこんな感じの砂漠の方が多いのです。
砂だらけの砂漠は、その見た目の通り「砂砂漠」といいます。

ちなみに、「降水量が少ない…」という定義で考えると、極地域は非常に降水量が少ないため、砂漠の定義に当てはまってしまいます。
実は、世界10大砂漠とよばれるもののトップ2は「南極」そして「北極」です。
実際、降水量が少ないうえに極寒で乾燥が進むことから、南極大陸の内陸部の気候は世界で最も過酷なものの一つです。
「極地砂漠」とも呼ばれます。

ただ、この辺りはちょっとマニアックな話になること、そして世間一般の「砂漠」のイメージから離れてしまうことから、一般的には「世界最大の砂漠」というと3番手のサハラ砂漠を指すことが多いですね。

砂漠の成因としては、

・熱帯砂漠(海岸砂漠)
寒流(水温が低い海流)沿いの、大陸の海岸線に見られる。
緯度10〜20°の大陸西岸に分布し、砂漠としては小さいが、大気が安定しているため降雨が非常に少なく、極度に乾燥していることが多い。
アタカマ砂漠、ナミブ砂漠など。
・亜熱帯砂漠(中緯度砂漠)
大気大循環の中で常に下降気流の影響下にあり、高気圧に覆われている(亜熱帯高圧帯)地域で見られる。
緯度20~30度の範囲に見られ、大規模なものが多い。
サハラ砂漠、カラハリ砂漠、オーストラリアの砂漠など。
・雨陰砂漠
山地の風下で、常に乾燥した風が吹きつける地域に見られる。
パタゴニアなど。
・内陸砂漠
海から遠く、水蒸気の供給量が少ないため生じる砂漠。
ゴビ砂漠、タクラマカン砂漠など。

があります。


2、砂漠化とは

砂漠化は、

乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域における気候上の変動や人間活動を含むさまざまな要素に起因する土地の劣化

と定義されています。

劣化が起きる原因として

・自然(気候)的要因
温暖化など、地球規模の気候変化による降水量の減少。
・人為的要因
人口増や商業化、貧困などによる過放牧や過耕作、薪炭材の過剰採取など、生態系の許容限度を超えて行われた人間活動によるもの。

が挙げられます。

これらの要因による土地の劣化は、特に生態系が脆弱な乾燥地に多く起こりがちです。
乾燥地が地表面積に占める割合は約4割。
そして、そこで暮らす人々は世界人口の3割近く。多くはアフリカやアジアの発展途上国に属します。

乾燥地の生態系は、一度壊れると回復は困難。
結果として、その地域の農業生産性が低下したり、水の確保が困難になる。
そのためさらに過耕作・過放牧が進み、土地は更に劣化する…という悪循環に陥ります。


その問題に国際的に取り組むために締結されたのが、
「深刻な干ばつ又は砂漠化に直面する国(特にアフリカの国)における砂漠化に対処するための国際連合条約」(通称:砂漠化対処条約)
です。

特にアフリカ諸国を中心とした開発途上国において、深刻化する砂漠化問題に対し、国際社会がその解決に向けて協力することを目的としています。

砂漠化に対する取り組みとして重視されるのが、「ボトムアップ・アプローチ」
これは、砂漠化に対する対策に、住民参加を取り入れる取り組みのことです。
なぜなら、砂漠化は人為的要因も大きく、その根本には貧困が存在するからです。
根本的な原因である貧困を撲滅することが砂漠化を抑制するために必要なのですが、単に「援助」を行えば良いということになりません。
これは、援助活動全般に言える話ですが、最終的には地域の「自立・自律的かつ持続的な活動」にたどり着くことが大切です。

NGOの中には、その目的を達成するため、

・緑化による生態系の回復
・生態系に負担が少ない農業
・薪炭材の効率的な利用

などを現地に普及させ、最終的には貧困を撲滅していく取り組みを行っている団体もあります。


なお、先進国でも見られる「土壌流出」や「塩性化」も砂漠化の一種です。

・土壌流出

は、過耕作や、傾斜地などで大規模な農業開発を行った結果、植生が失われ、風や降水により表土が侵食される現象。

・塩性化(塩類集積)

は、土壌中における塩類濃度が上昇し、植物が生育できなくなること。
乾燥地における大規模灌漑で、地表面に塩類がたまってしまうと、表面がコンクリートのようになってしまうため農業は困難である。

これらも、土地の劣化に該当するため、砂漠化の一種と分類されます。

これは、砂漠化のリスクを地図化したもの。
赤い場所がリスクが高い場所なのですが、現在の砂漠地帯の周辺部以外に、アメリカ合衆国西部にも赤いところが目立ちます。
これは、大規模農業の弊害といえるものです。


3、おまけ

実は、日本でも砂漠は存在します。
その場所は何と東京都。
伊豆大島に、「裏砂漠」と呼ばれる場所があります。

三原山の火山噴火により堆積した噴出物が堆積し、火山ガスの影響で植生がほとんどない場所(となると、厳密には「砂漠」とはまた違うのですが)。

黒々とした荒涼とした大地は、同じ地球上とは思えない異世界感がすごいです。
伊豆大島のメジャーな観光スポットですので是非!


というわけで、今日は「砂漠化および干ばつと闘う世界デー」にちなんで、砂漠と砂漠化について取り上げてみました。
環境問題の一つ、砂漠化について、再考するきっかけになれば幸いです。

サポートは、資料収集や取材など、より良い記事を書くために大切に使わせていただきます。 また、スキやフォロー、コメントという形の応援もとても嬉しく、励みになります。ありがとうございます。