【読書感想】なぜ人と組織は変われないのか ハーバード流自己変革の理論と実践 ロバート・キーガン
この本の概要
必要だとわかっていても85%の人が行動すら起こさない―?「免疫マップ」が本当の問題をあぶり出す!発達心理学と教育学の権威が編み出した、究極の変革アプローチ。
「BOOK」データベースより
「部下の話をきちんと聞けるようになりたい」
「感情的にならずに議論できるようになりたい」
「夫やこどもに優しく接したい」
など、仕事や家庭で改善したいと思う目標を立ててもうまくいかないということ、よくありますよね?
この本では、
なぜ人は、本気で変わりたいと思っているのに変われないのか?
なぜ企業では、みんなが組織風土を良くしたいと思っているのに変われないのか?
その理由と克服方法(免疫マップというツールの活用)について説明しています。
本にあるとおりに忠実に免疫マップをつくれば、たぶん人は本当に変われると思います。ただ時間と環境が整ってないとすごく難しい。
私も読みながら自分の免疫マップを書き出してみようと思ったけど、プライベート時間じゃ無理でしたわ…。子どもがいると思考が中断されて落ち着かないし、読書に浸れるまとまった時間もなかなかないし、じっくり考えることはまだできていません。
お母さんってこういう内省時間、ホントにとれないんだな、と改めて思ったわ…。業務時間外でこういう深い思考に入り込める時間って睡眠時間削らないとないよね。(そしてそこは削りたくない)
会社内で、個人向け・チーム向けワークショップをするようなかたちで活用できるのが最高なんだろうな、と思いました。集中できる就業時間内にやりたいし、これを使った研修作りたいなーとか思いながら読んでました。
成人発達理論
この本では大人の知性の発達についての説明しています。
30年前の常識では、脳の成長は20代までで完成し、それ以降は成長しないと言われていました。
しかし、その後の研究で、人の脳は生涯にわたって成長を続けると言うことがわかってきました。
この本では人の知性の成長段階を3段階で説明しています。
それぞれ簡単に説明します。
・環境順応型知性
周囲の価値観に従う。周囲からどのように見られ、どういう役割を期待されるかによって、自己が形成される。指示に従う。
・自己主導型知性
内的な判断基準(自分自身の価値観)を確立し、それに基づいて、まわりの期待について判断をし、選択をおこなう。自分のフィルター基準になりがち。
・自己変容型知性
あらゆるシステムや秩序が断片的、ないし不完全なものだと理解し、矛盾や反対を受け入れることができる。自分のフィルターの不完全さを理解し柔軟に自分を変えられる。
私は成人発達理論に詳しくないのですが、成人発達理論に詳しい知人によると、もっと細かい分類があるみたいです。
免疫マップ
「変わりたい」と思っても変えられないのは、私たちの心の免疫機能が「変化」に対してブレーキをかけているから。変化に伴う恐怖感や恐れを避けるために心が「変化」から身を守ってるというわけです。
ただ、それだと自己変容には進めません。
自分のなかにある恐怖感や無意識の固定観念を見つけ出し、それをみつめつつ、必要に応じて自分を修正していくことで、メタ認知が進み、自己変容型へと近づいていくことができます。で、その作業の際に活用できるのが免疫マップというツール。
免疫マップがどんななのかというと、具体的にはこんな感じ。
「改善目標」に対して、それを阻害している行動があるはずなのでそれを可視化するのが「疎外行動」枠。それらを見つけ出したうえで、その疎外行動をうんでいる「裏の目標」が何かをあぶりだし、なぜそういう「裏の目標」を持っているのか、裏目標の奥底にある「強力な固定観念」を見つけ出します。
そのうえでさらに、固定観念が本当なのかどうかひとつひとつ検証していくというステップを踏みます。
大切なのは、焦らずひとつひとつ味わっていくこと。答えを急がないこと。検証時にはシミュレーションをしっかりしたうえで取り組むこと。ステップに従って進み、ひとつひとつ時間をかけて検証していく過程で、自分自身を俯瞰しながら、少しずつ自分を変容させていくことができるようになるんだそうです。
雑感
環境順応型の人が「周囲に合わせる」のと、自己変容型の自分の不完全さも受け入れたうえで「柔軟に自分を変えられる」というのは、本人の内部では明確に違いはあるでしょうけど、外からみたときって意外とわからなそうだな、と思ったりしました。
本人のなかでは自分の考えと他者の考えとを両方咀嚼し、他者の意図や思いを汲んでそのうえで自分を変化させ、そのときそのときにフィットするよう変化していたとしても、外野からみると「あの人はカメレオン」と思われるとか、ありそうな気がする。(特に自己主導型の人からみたら、その柔軟性が理解できなくて下にみちゃうとかありえる気がしている。)
ま、外からどう思われるかとかではなく、その人内部の思考がどうなってるかの話なのだと思うのでそれはそれでいいとしつつもね、外部と内部の認識の差は多少あるんだろうなーとか思いました。
あと、組織やチームでの自分のポジショニングや距離感によってもまた違うんじゃないのかな~とかも思いました。
たとえば、複数チームに所属しているとしたとき、自分のこれまでの経歴やスキルをそのままフルに活用できるチームAでは、「自己主導型」だったり「自己変容型」なふるまいもしやすいだろうけど、自分のこれまでのスキルや経験とは全く別のスキルが必要となるチームBに所属した場合、そこでは、ある意味「環境順応型」なふるまいで状況をみたり学んだりするということもあるんじゃなかろうか、と。
で、これを書いてて思ったけど、本人がそもそも到達している内面の成長段階と、状況に応じて使い分ける「ふるまい」的な部分が、まだ私のなかで整理できてない感じがあります。あと、各段階に対する私の理解もまだまだ浅くて腹落ちできてないところが多いと改めてわかりました。
わかってないし腹落ちもできてないのでまだうまく言語化できないところもおおいですが、でもたぶん、個人の内面的な部分での満足感とかホールネス感とか、そこらへんは成長段階によって全然違うんだろうな、とは思います。
イメージですけど、環境順応型はホールネス感少なめ気がするけど、発達に従ってハッピーが増す感じ?(ニュアンスしかない説明ですけど。)
自己変容型の人は1%
なんかこの本によると「自己変容型」って成人の1%くらいしかいないらしいんですよ。しかもリーダーとか組織のトップが多くて、そう滅多にいないっぽい感じで書かれておりまして…。
でもね、自分の周囲を見渡してみると、「え、もっとたくさんいるんじゃない?」と思えるんです。職場なんて半分くらいは自己変容型の人に思えるし、コーチング講座で出会った方々をみててもそうみえるし。
(職場もコーチングも、ヨソと比べると内省を促す場や時間が充実しているし、メタ認知し自己変容していくうえで、そういう内省時間は必要不可欠だと思うので、社内やコーチに自己変容型が多くても全然不思議ではないんだけども。)
「1%しかいないんなら、こんなにいるわけないし、じゃあ私の自己変容型に対する理解の方が違ってんのかな?」とか「リーダーって立場にならないと自己変容型にはいきつけないものなの?」とか、色々考えてるとよくわかんなくなったりもしちゃうね。
(個人的には、立場が与える成長は確かに大きくあると思うので、リーダーがいろんな経験を経て自己変容型になりやすいというのはわかる気はします。でも、感覚ですけど、家庭内での子育てとか外部のボランティアでの活動とか、自己変容のきっかけにできるモノはたぶん組織以外にもたくさんある気がするなぁ。)
いやーーーでも、めっちゃおもしろい。奥深いのよ、成人発達理論。
成人発達理論に詳しい同僚や友人がいますが、ハマるのわかる気がする。もっと関連書籍読みたくなるし、探求したくなります。私もまだまだ理解が浅いので引き続き知見を深めていこう。
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