【読書感想】したたかな寄生 脳と体を乗っ取り巧みに操る生物たち

この本の概要

ゴキブリを奴隷のように仕えさせる宝石バチや、泳げないカマキリを入水自殺させるハリガネムシ、化学物質を放出してアリの脳を支配し時期が来ると菌にとって最適な場へ誘って殺すキノコなど、恐るべき支配力を持つ寄生者を紹介。一見小さく弱い彼らが数倍から数千倍大の宿主を操り、時に死に至らしめる。地球の片隅で密やかに繰り広げられる生存戦略を報告。
「BOOK」データベースより

子どもがいるので、図鑑も何冊か持っております。

最近の図鑑はDVDがついてたり、スマホのARで立体的に見ることができたりするんですけど、「小学館の図鑑NEO 昆虫」についてきたDVDが、すごくおもしろいので、うちの子どもら、何回もみてます。

そのDVDのなかでも、私は寄生する昆虫類の紹介がすごく好き。(あと17年ゼミも好き。)

なんでしょうね。
寄生とか危険生物とか粘菌とか、おぞましいものというか、未知のものというか、そういうのにちょっと心惹かれる自分がいるんですわ。(触ったりはできないけど)

そんな理由で購入した本です。

めっちゃ面白かった。特に前半が。
前半は寄生昆虫の話で、後半はウィルスとか人間の腸内菌とか、ちょっと人間寄りの寄生生物が多め。人間のほうももちろん良かったけど、おぞましさとか気持ち悪さとかはやはり昆虫系が抜群だね。

利己的な遺伝子

利己的な遺伝子と言う理論は、リチャード・ドーキンスの1976年に出版された本で広く浸透したそうです。
この利己的な遺伝子と言うのは、私たち個体は自分を構成する遺伝子に操られているのではないかと言う考え方。

個体が主か、遺伝子が主か。

この本を読むと、我々生物はすべて遺伝子に操られている説が真なんじゃないか、と思えてきます。

しかも、どこまでが自分のオリジナルの遺伝子で、どこからが寄生している生物の遺伝子なのか、わからなくなってきます。

この本を読んでると、寄生した生物が宿主の行動を操ったりマインドコントロールする事例がたくさん出てくるので、たとえば自分のなかの「嬉しい」「楽しい」「ムカつく」「イライラする」などの感情も実は私に寄生してる細菌が、私の感情を操っているからなのかもしれない、と思えてきちゃうんです。

「うそーん」って思うかもしれないけど、我ら人間だってただの生き物ですし、人間の中身のことだってまだまだわからんことだらけなんですよ。あり得ると思うの、そういうことも。

でも、私個人的にはそれも全然いやじゃなくて…。
なんというかアンコントロールなところもあるのが人間や生き物のおもしろみだと思うので、だからこそ知りたいと思う気持ちにつながるのかなーと。

「自分の意思と思ってるけど、実は私に寄生してるなにかの仕業」って考えると、人間の頼りなさとかはかなさとかがリアルに感じられて、その所在なさが怖くもあり、心地よくもあり。

なんのこっちゃって感じですかね(笑)

腸は第二の脳

「腸は第二の脳」ってのは聞いたことがあったんですけど、詳しいことまではわかんなかったので、この本を読んでその詳細が分かりました。

様々なニューロンやグリア細胞などで構成される腸管神経系は、昨日と同程度である約40種類の神経伝達物質を合成しており、体内のセロトニンの95%は常に腸管神経系で作られ、ドーパミンは昨日と同じ程度合成しています。つまり、脳の働きを操作する神経伝達物質の多くが能ではなく腸で合成され、そこに存在しているのです。

腸、超すごいじゃん。(ダジャレか)

腸内環境を整えて善玉菌を増やしたら、ストレス耐性あがったとか、自閉症傾向のマウスに効果があったとか、腸を整えるってほんと大事なんだね。

この本によると、腸内環境は人によってもかなり違うし、同じ人でもどんどん変化していくとありました。

だからAさんに効く食生活や健康食品がBさんに効くとは限らないし、同じAさんでもまた変わっていくとのこと。

脳も大事だけど腸も大事。
日々の生活に忙しすぎて自分の脳とか体との対話を怠ってしまうと、どんどん良くない状態になっていってしまうけど、やはりもっと己の体の状態にはセンシティブになるべきだなーと思いました。

「あ、なんか今日はお腹の調子がイマイチだぞ」って気付いたらちゃんとお腹を整えるとか、当たり前だけどそういう体と向き合う感覚、もうちょい大切にしたい。若くないし。

気になった寄生生物たち

さて。
昆虫に心惹かれたっつってたのに、ずっと人間の腹のなかの話ばっかりしちゃいました。
虫が苦手な人、ガチの寄生生物は苦手な方はどうかここで読むのをストップしてください。

ここからはディープな世界。

読みながら気になりすぎてついついYouTubeも調べてしまった寄生生物をいくつかご紹介。
注)YouTubeのリンクも貼ってます。ビジュアル的に「ひぇぇぇ」ってのもありますので大丈夫な方だけ読んでね❤️

・カタツムリに寄生するロイコクロリディウム
ロイコクロリディウムは、鳥の腸内で繁殖し、卵が糞として地面に落ちます。卵がカタツムリに食されると、カタツムリのなかで成長しますが、生殖活動は鳥の腹のなかでなければいけないので、なんとかしてカタツムリの体内から、また鳥の腹の中に戻りたい。なので、ロイコクロリディウムは、カタツムリを操ります。夜行性で日の当たる場所が嫌いなカタツムリを、日中に日の当たる草をウロウロさせ、しかも触覚を芋虫っぽくみせて、鳥に食べられやすく、見つかりやすく操るんです。

見た目が〜〜〜!やばい〜〜〜(u_u)

・ゴキブリを奴隷化するエメラルドゴキブリバチ
エメラルドゴキブリバチは、ゴキブリに麻酔を打ち込み、脳手術をほどこし、素早いあいつらをまともに動けなくします、で、意識朦朧となったゴキブリは、ハチの巣につれていかれ、エメラルドゴキブリバチの卵をうみつけられ、卵が孵化したら子どもらに内臓を食べられ、最後静かに死んでいきます。

ゴキ、大嫌いだし、マジ映像見るのも「うわっ」なんですけど、この操られっぷりはさすがに同情してしまう。。。なんて悲しい最期…。

・体を食い破られても護衛するコマユバチ
コマユバチは学研のDVDにもでてきたなー。
コマユバチは芋虫に自分の卵を産み付けます。芋虫のなかで育ったコマユバチの幼虫は、芋虫の体から養分をもらいすくすく育ったうえで、体を突き破って出てきます。
体を突き破られた芋虫は瀕死の状態なわけですが、まだ死んでいません。
だった逃げればいいんですが、逃げずにその場にとどまりつづけ、近くで蛹になっているコマユバチを全力で守る行動にでるんだそうです。
なぜ、護衛までするのか、その詳細はわかってないんだそうですが、護衛した末に死んだ芋虫を解剖してみると、外に脱出しなかったコマユバチの兄弟たちが何匹か見つかるんだそうです。
体内にとどまった兄弟たちがなんらかの方法で芋虫の行動を制御してるんじゃないか、と推測されています。

芋虫〜〜〜(T_T)なにその滅私奉公…。悲しすぎるわ。

・自分で働かず、他のアリの労働に頼るサムライアリ

宿主の体に寄生し直接栄養を得るのではなく、宿主がエサとして確保したものをエサとして得るなど、宿主の労働を搾取する形の行動をとることを「労働寄生」と呼びます。

これ、人間世界でもめちゃくちゃたくさんあるよね(笑)

サムライアリの女王は、一匹でクロヤマアリの巣に挑んでいき、クロヤマアリの女王をみつけると戦いを挑みます。サムライアリの顎は強いのでクロヤマアリの女王は殺されてしまうのですが、その後、サムライアリはクロヤマアリの女王の体液を舐めたり体に擦りつけたりしてクロヤマアリの女王になりすまし、そこで卵を産み、クロヤマアリの働きアリたちに自分の子の世話をさせます。メシも自分では食わず、クロヤマアリの働きアリに口移しで食べさせてもらい、サムライアリの卵が孵化したらその子どもらもクロヤマアリに世話させます。
サムライアリが増えるとクロヤマアリの働きありが減るので、そしたら奴隷狩りにでかけるんだそうで。

ひぃぃぃぃ!なんて鬼畜。でも人間にもいそう、こういうやつ。

映像がすごい。めちゃくちゃ見いっちゃった!!

ほかにもめっちゃたくさんでてくるので、こういうの好きな人にはたまらないんじゃないかと思います。

あと、寄生とか昆虫とか気持ち悪いけどちょっと気になるって人にはこのマンガもマジおすすめ。この本を読んでる時、なんども7seedsを思い出したよ。

これは、絵は少女マンガですけど、中身は全然少女マンガじゃないです。虫とか寄生とか人の愚かさとかめちゃくちゃでてきます。でもめちゃくちゃおもしろい。

なんか役にたつとかそういう本じゃないけど、個人的にはめっちゃ好奇心を掻き立てられる良き本だった。

最近タメになる本ばっかり読みがちだったのでこういうのもどんどん読んでいきたい。

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