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【読書感想】「サイコパス」中野信子

読了日:2017/4/14

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とんでもない犯罪を平然と遂行する。ウソがバレても、むしろ自分の方が被害者であるかのようにふるまう…。脳科学の急速な進歩により、そんなサイコパスの脳の謎が徐々に明らかになってきた。私たちの脳と人類の進化に隠されたミステリーに最新科学の目で迫る。
「BOOK」データベースより

この本の概要

どこか読者サイトでの書評を読んだら、面白そうだったので読んでみました。
幼児教育の経済学」や、「言ってはいけない
など、最近読んだ本と重なる部分がありました。
いろんなジャンルの本を読みたいと思うんだけど、どうしても系統が似通ってしまいがちです…。

サイコパスの特徴

サイコパスの基本的な特徴をいくつかあげます。
・他者に共感できない
・良心がない
・痛みや恐れの感覚が低め
・残酷なことも平気でする
・平気でウソをつく
・プレゼンがうまく、人を魅了するほど口が達者

作者が脳科学者なので、脳科学的な点でも特徴もいくつか書かれてました。 
・扁桃体(恐怖とか原始的な感覚を司る部分)と前頭前皮質(理性とか社会性を司るところ)の結び付きが弱め
・扁桃体の活動レベルも低め(恐れを知らない行動や判断ができる)
・心拍数が人より少ない
など。
他にもあるので詳しくは読んでみてください。

サイコパスの性質は、環境や親の教育の影響もゼロではないけど、それよりも脳の器質的なものや遺伝的要素が大きいということがわかってきています。
もともとそういう脳の器質がある人に、さらに親の虐待、よくない生育環境などマイナスの条件が重なることで、それがトリガーになりサイコパス傾向が顕著に表面化されることが多いそうです。
14歳くらいがひとつの目安とか。

14歳ってなにかとポイントになる年齢なんですね。スポーツで世界のトップを目指す人たちも14歳で意識の違いが顕著に出るし、エヴァンゲリオンのチルドレンも14歳。中2病も14歳。
なんなのかしら14歳。

いいサイコパス

サイコパスというと、猟奇殺人、というイメージがありますが、必ずしもそうとは限りません。

サイコパス傾向が強くても全員が犯罪に走るわけではなく、チャレンジングなことを果敢に進める敏腕経営者になったり、普通の人なら焦ったりしてしまう場所で冷静な判断が必要な仕事(爆弾処理らや外科医)で活躍したりする人も多くいます。
スティーブ・ジョブズや、織田信長もサイコパスだったんじゃないかと作者は言ってます。
たしかに、自分のまわりにも「この人、恐怖感とかないの?」という人はいます。ネジ1本ゆるんじゃってる?みたいな。
そういう人はいい意味でサイコパス傾向のある人なのかもしれません。

罰による制裁は無意味

面白かったのは、サイコパスに対して、罰による制裁で行動を抑制するってことは難しいという点。
彼らは脳の器質的に恐怖を感じにくく、そもそも罰を一般人のように怖がらない。罰より自分の利益や快の方に思考がいきます。
ですので、社会を厳罰化していってもサイコパスの行動抑制にはならず、庶民の生活がより窮屈になるだけなんだって。
彼らを犯罪方向に向かわせないようにするには、彼らの思考に寄せた、一般人とは違うアプローチのしかたが有効だそうです。
彼らにとって、犯罪しないことで得られるメリットの方を全面に出すということでしょうか。む、難しい…。

サイコパスの孤独

彼らは長期的に人と信頼関係を結び協調してやってくというのが苦手です。なので、信頼できる人が回りにいないことが多く、それによる孤独感は強くあるみたいです。

人に好かれる要素(共感、優しさら良心)がないので、周囲から見ると排除したくなる怖い存在になるのも仕方ないし自業自得。
とはいえ、脳の性質で本人で改善できないとなると、なんだかそれもつらい。脳の問題なら親の教育でどこまで抑止力になれるのかわかんない部分もあるし。

サイコパスな子の親を思う

猟奇殺人があったとき、それを親や環境のせいとして、いっしょくたにして論じてしまうことに私はすごく違和感があります。

親もその子に違和感をもち、矯正しようと頑張ってきたのかもしれません。それでも、どうにもできないことってたくさんあります。親と子は別の人間だから、親は完全にコントロールなんかできないんです。
そう考えるとなんともつらくやりきれない。
子供の教育で悩み、子供が犯罪を犯したらその罪も背負って生きていかなければならないんだもの…。地獄。
(自分の子がサイコパスにやられたら「彼らもつらいなぁ。」なんて言えないけど。)

サイコパス=悪 ではない

サイコパス傾向の脳は、うまく使えば革新的なイノベーションを起こす起業家として成功したり、危険を省みず新しいことをする社会の斬り込み隊長的な役割ももっています。ですので、一概に「サイコパス=悪」として切り捨てられるものではありません。長い人類の歴史の中でも淘汰されずに存在しているのは、必要な部分もあったから、と作者は言っています。

国の風土にあう、あわない、というのも大きく依存します。
日本はムラ社会で協調性が強いのでサイコパスには生きにくいけど、世界をみれば種族的にサイコパス傾向が強い種族もあるそうで、種族の成人男性半分は殺人経験ありでそんな荒くれ者がモテる、みたいな世界もあるらしい。
だからまぁその人の性質と社会のマッチングの問題も大きいのかもしれない。

人間の本質的な部分を考えさせてくれる面白い本でした。
部分を切り取ってるだけなので、ふわっとしか伝わらないですね(笑)
詳しくは読んでください。読みやすいです。

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