【読書感想】「分断を生むエジソン」 北野唯我

西の国と東の国、中部と南部「影響力の地図」を可視化する。職場の認識を歪める「分断を生むエジソン」とは何者なのか?
「BOOK」データベースより

この本の概要 

「天才を殺す凡人」の続編です。今回も小説で前回の世界からの続きのお話。
「天才を殺す凡人」では、天才社長アンナを尊敬している青野くんと秋田犬ケンの物語でしたが、今回は失意の天才社長アンナと一流コンサルタント黒岩さんがメイン。
二人のトーク中心で物語が進んでいきます。


哲学的…

率直な感想です。

むずかしーーーー。

話の流れはそんなにややこしくないけど、天才と戦略家の要素、ワタクシ全然もってないみたいで、二人のトークが難しかったーーー。

天才と戦略家がガチトークしたらこういう感じになるの?
抽象的&哲学的で、あまり理解できてない気がする…。
経営者とコンサルタントの方はこの会話はナチュラルに理解できるのかな?
おしえて、経営者の人&コンサルタントの人!

あと、ほんと個人的な好みの問題ですけど、黒岩さんの雰囲気とトークが村上春樹の小説にでてくる男子みたいでそれがなんかちょっと好きになれなかった…。

夜にバーでナッツ食べながらキレイな女性とビジネスについて哲学的に語ったり、アメリカ行ってセントラルパーク走ったり。
なんかもう春樹男子じゃん。
(村上春樹ファンの方、大変申し訳ありません。あの…、私が個人的に、本当に個人的にハマれないだけでとても良いという話は友人たちからも聞いて理解しております。まだ私が未熟で春樹を理解できる境地にたどり着けてないだけです。)

とはいえ、前回よりも小説要素が濃いめでそれはそれでおもしろかった。


4つの国

前回の「天才を殺す凡人」では、人を「天才」「秀才」「凡人」の3つにわけてそれぞれの思考や価値観のちがいによるわかりあえなさと、その分断の乗り越え方を語っていました。

今回は4つの国にわけて、国によって異なる価値観を説明しています。

国  :割合:好むもの
西の国:   1  :技術と進化
中部 :   2  :法律と公益(全体利益)
東の国:  10 :経営と雇用
南部 : 100:娯楽と生活

東の国の人は「経済」を軸にしてものごとを語るので「GDPをあげる」「生産性をあげる」ことを大事にしているけど、その他の国の人にはそうではないし、そもそもそんなことを気にしてるのは全体の10%しかいない。

西の国の人にとって重要なのは「個」であり、革新的なことをやり続けるための「好奇心」や「テクノロジー」だけど、これも全体の1%。

で、この地図を俯瞰して見れるようにするために大切なことは以下の2点。
・自分の世界が絶対でないことを理解する
・それは役割の違いでしかないと知る

自分の住む世界とその価値観以外にも別の考えの人はいて、自分の考え方が正しいわけでも絶対的なわけでもないときちんと知ることが大事なんだよってことですよね。

当たり前といえば、当たり前で、たぶんこれを聞いたとき言葉ですぐ理解できる人はすごく多いだろうとは思うけど、心から理解できる人は少ないだろうな、と思います。

思考や価値観が違うタイプの人にたいして「普通はこうなのになんなの、あの人!」って反発しちゃったり、「理解できない」という判断を下す人は多いと思うんですよね。
割と立派な大人だな、という人とか、仕事できる人だなー、っていう人でも、自分の世界観や役割の範囲で人を判断してしまってることってすごく多いんだなーって感じてます。

もちろん、私もできないこともあるんですけど、それでも私、けっこう地図を俯瞰して見れる能力は高いと思う。(←自我自賛)
40年くらい生きてるとなんとなくわかってくる部分もあって、
「あ、私、他の人よりだいぶ寛容なんだなー」
ってのは感じます。
けっこうさ、やさしいのよ、私。(←自我自賛)

4つの国の病

で、話はさらに続いていて、この4つの国にはそれぞれ、資本主義が生んだ病があるんだそうです。

西の病: 分断を生むエジソン

この4つの国がかかれた地図にはそれぞれ象徴的な人物がいて、西の国には「分断を生むエジソン」がいるそうです。
西の国の人は変化が好きで好奇心旺盛。
人々の生活を良くしようと変化と好奇心を加速させていくんだけども、結果、誰もその変化についてこれず、気付けば分断を生む存在になっている。

黒岩さんはアンナにこう語りかけていました。

「大事なのは地図の本質を理解することなのだ。西の国は全体の1%しか領土がない。ほとんどの人は変化など求めていない。1ミリもな。いいか、アンナ。西の民以外にとって変化とは、仕方なく訪れるものなのだ。」

わかるー。
あと、ついでにいうと、クライアント相手に、呼びすてがちょっと気になるー。


東の病: 魂なきバンカー

東の国は経済と雇用が重要な価値観。特徴として成長を追い求めるが、「成長」という手段が目的化して思想を失うと会社という幻想が実体以上の力を持ち人の心を殺し始めるようになります。

こちらも黒岩さんの説明。

「会社とは幻想だ。一方で、人は実体だ。だが、会社という幻想は、実体以上の力を持ち始めると、人の心を殺すことを始める。むしろ成長のためには、それが善にすらなりえる。自らの保守のために作られた実体を殺す成長は、絶望だ。つまり、資本主義における、絶望のキックオフは東の国からスタートするのだ。」

今の社会はこれだぁね。
「会社とは幻想だ」って、うちの社長が言ってるのと同じじゃん。
詳しくはコチラをどうぞ。

黒岩さんのセリフがなんかいい男風味で気になる…。
「絶望のキックオフ」とか、日常生きてても絶対に私から出てこない比喩表現ですもん。
かっこよさがすぎて…。


中部の病: 夢を忘れたピーターパン

最初は公のために戦うピーターパンのような存在だったはずだけど、それをやめちゃったのが「夢を忘れたピーターパン」。
なんで忘れてしまったかというと、信じてきた「正義」が変わってきたとき、過去の自分が信じてきた「正義」と、新しい「正義」の間の折り合いがつけらんなくて、過去の自分が否定されたような気持ちになっちゃった結果、仲間同士で殺しあったり蹴落としあったりするようになるそうです。
コチラも、黒岩さんのトークを載せておきましょう。

「一つの国の正義が、隣国の正義とぶつかる。こういうことはよくある。同じように、いまの正義は過去の正義とぶつかりうる。変化なき正義、変化なき公益など存在しない。つまりピーターパンを殺すのはかつてのピーターパンなんだ。時に起きる、政治家同士の足の引っ張り合い。国民を見ていない不毛な戦い。これを想像するとわかりやすいだろう。外界と触れることをやめた中部の人は、過去の自分、あるいは、仲間同士で殺しあうピーターパンと化するのだ。」

なんか、ワタシ的に、この説明はまだ咀嚼不足。
ちょっと消化しきれていない。
中部の国の人じゃなくて、東の国の人、南の国の人でも、「正義」が変質して自己否定されたような気分になりたくないから、仲間同士殺しあうことってある気がしていて…。
(西の国の人は、前しか見てないからそういうことはなさそう)
だから中部の国だけの病なのかなぁっていうのが気になる。
そこがなんかイマイチしっくり来てないから、この黒岩さんの説明もあんまりパッとしない感じ。
(ごめんね、頼んだら超お金かかるコンサルタントなのに…)

南の病: 才能を殺す巨大なスイミー

集団行動が得意で、群れで行動するがゆえに群れの外が見えず、思考停止に陥り、本来的ではないもの(=天才)を殺してしまう、というのが南の国の病だそうです。
スイミーは集団で大きな敵に立ち向かってるけど、
「このオレらの相手の大きな敵、ホントに敵なの?」
ってところは1匹1匹あんま考えないワケです。ばいきんまんのように、わかりやすく敵が敵だと名乗ることはあんまりないわけで、しらない間に誰かにのせられて「敵」と呼ばれた対象を攻撃しちゃうよ、と。

「だが、スイミーにはそれを判断する術がない。だから、敵じゃないものを殺すことがある。仲間を殺してしまう。自覚なくな。私は数多くの企業を見てきた。だからこそ、わかる。スイミーである一人一人、一匹一匹は善良な市民だ。ただ、彼らは群れであるがゆえに群れの外が見えない。まわりの人がどう動くか、どちらを向いているかで、自分の進む方向を決めてしまうのだ。彼らは孤独になるのが最も怖いからだ。」

これはわかりやすい。わかりやすいよ、黒岩さん。

国をつなぐ人たち

長いんですけど、まだ続きますw
この国と国の分断をつなぎ、調和をはかろうとする人も5人いるんだそうです。

公益を知るエリート(東と中部をつなぐ)
最も大きな経済基盤を使い、経済的な利益を挙げ、ルールを作る側に回る人。その際にできる範囲で全体の調和をとる。
私が勝手に想像した人物:経団連の人

健全に怒る起業家(西と中部をつなぐ)
現状のサスティナビリティに疑いが表れたときに、リスクテイカーとなり発信し、そこに才能や能力を投下する。
私が勝手に想像した人物:サイボウズの青野さん

パトロール騎士団長(中部と南部をつなぐ)
資本主義のルールでは守りきれない小さな安全や健康を守る人々。それを率いる地域のリーダー。
私が勝手に想像した人物:フローレンスの駒崎さんとか、NPOの代表

家族主義の教養人(東の国と南部をつなぐ)
外貨を稼いでそれを教育や、素養の充実に回し、国の民度や、経済の地場を安定させる。
私が勝手に想像した人物:該当者思い浮かばず…

トレンドを加速するインフルエンサー(西の国と南部をつなぐ)
新しいことが西の国から生まれたときに、一番最初に飛びつく人たち。それを広げる役割をもつ。
私が勝手に想像した人物:そこのあなた(かもしれない…)


って感じでまぁ色々話してくれてるんだけども、ここまで来て思うの。

「天才を殺す凡人」より要素が多い…(/ω\)

かみしめるのに時間かかるわ~~、私の凡庸な頭では…。

5人の法則

これ以外にも黒岩さんとアンナ社長は果てしない哲学散歩をしていくワケなんですけど、難しいので詳細は読んでみてください。

黒岩さんが言ってた話のなかで、ワタシ的に最もシンプルでわかりやすく、納得できる話だなーと思ったのがコレです。

これは実際に、経営をしている立場にいるとしばしばぶつかる問題である。たとえば、人が「うちの会社は」「会社って」と言うとき、そのほとんどのケースは、実際には「自分の周りの5人」に起きていることだけで話していることが実に多い。言い換えれば、ほとんどの人にとって、世界はその程度の大きさでしかないのだ。

これ、めっちゃそうだなーと思いました。
自分のまわりの5人がどういう感じなのかで私のその世界は決まるっていうのにすごく身に覚えがある。
どの部署にいるか、どういう人とふだん仕事をしてるかで、「うちの会社」像は簡単に変わりますね。
なので「うちの会社、古くてさー」ってのがあったとしても、そう言ってる人の周囲5人のうち誰かが(もしくは複数人が)、古いってことなんだよね。
「カイシャさんなんていない」だわ、ホント。

あんまり咀嚼できてないから、咀嚼しなおそうと思って色々読み返してメモしてたら結果、いつもより長くなってしまった気がする…。
そして、地味に黒岩さんを盛大にディスる感じになってもた(笑)。

たぶん、黒岩さんをディーンフジオカがやったらしっくりくる。
ディーンフジオカなら、キザでもいい。



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